今日は作戦の日。

昨日の疲れがまだ残っているけど、身体を起こして準備をする。


「・・・よし」


軽く気合いを入れて部屋の扉を開けセブンスヘブンへ向かう。

店の前にはジェシーの姿があった。


「名前!昨日はしっかり眠れた?」

「え・・・」


ジェシーの言葉で昨日のクラウドとのやりとりを思い出して表情が固まる。


「・・・名前?」

「あ、うん!ちゃんと眠れた眠れた」

「・・・なんっか怪しい。話して」


ジェシーは腰に手を当てながら私に詰め寄る。


「さ、作戦前だから!今日帰ってきたら話す!ね!」

「う〜ん。約束だからね!」

「おう!名前!ジェシー!」


バレットの大きな声で私とジェシーが振り返る。

隣にティファの姿もあった。


「みんなおはよう。全員揃ったね」

「じゃあ向かうぜ!」


歩きだそうとすると背中を何かが通り過ぎる気配を感じて振り返る。


「なに・・・これ」


死神のような幽霊のようなものが一体だけじゃなく、二、三・・・と数えているうちに数え切れない数になっていた。


「ちっ・・・何だぁこいつらは!俺達の邪魔するんじゃねぇ!」


バレットは自らの腕から銃を放った。


「効いてんのかぁ!?」


ひるむこともなくその物体は浮遊し移動し続ける。


「バレット、どうする!?」


ジェシーがバレットに指示を仰ぐ。

でもこれは蹴散らさないと・・・数が多すぎて先に進めない。


「全員倒す!」


バレットが当たり前だ、と言わんばかりにそう言う。


「私、クラウド呼んでくる!流石にこの数は・・・」


ティファがバレットに提案を出す。

バレットは一瞬考えた様子だったけど、反対はせず何も言わない。

ティファはそれを肯定にとったのか天望荘へと走り出した。


「ごめん、みんな!クラウド呼んでくるまで持ちこたえて!」

「ティファ!気をつけてね!」


ティファを案じて声をかけると、私の目の前を幽霊のように通りすぎて行く、その物体。

私は急いで距離をとり腰のハンドガンに手をかけた。


「通用するのか分からないけど・・・やるしかないか」


私達は一心不乱に銃を撃ち続ける。

ある程度ダメージをうけたら消えていくということが分かったが、余りにも数が多すぎる。

クラウド、早く・・・!


「おわぁ!」


敵がバレットの身体をすり抜けていくと同時に後ろに引っ張られたようにバレットが倒れ込んだ。


「バレット!」

「キリがねえ!」

「バレット!名前!ジェシー!」


声のした方を振り返るとティファとクラウドの姿。

私は一瞬ほっと一息つき、また引き金を引いた。


「遅えぞ!」

「ひっきりなしに来る!もう、限界!」


ジェシーはそう言いながらも引き金を引き続ける。


「今、行く!」

「ティファ気をつけて!」

ティファのような超近距離型では危ない、そう感じ走り出すティファに声をかけた瞬間、目の前から敵が現れティファを連れ去っていく。


「ティファ!」


クラウドがそう叫び、何とか体制を立て直したティファも叫ぶ。


「クラウド!」

「すぐ行く」


体制を立て直したティファだったが、敵がティファの周りをぐるぐる回り身動きが取れないまま。

クラウドが大剣で引き裂くようにして振り払った。


「ティファ、大丈夫か?」

「大丈夫。・・・ありがとうクラウド」


私はそれをじっと眺める。

やっぱり・・・。


「って・・・こんな時に何考えてるんだろ、私」


私はハンドガンに弾を込めて周りを一度見渡すと、黒や灰色をした物体の中に一体、紫の色をもった敵がいることを見つけ、咄嗟に指を指しながら叫んだ。


「みんな!あれを攻撃してみて!」


全員の視線が私の指の先に集まる。

確証はないけど、キリがないし、賭けてみるしかない。

全員で集中して攻撃をくらわせるが、さっきまでの敵と比べるとなかなか消えてなくならない。

すると、敵がジェシーに近づき、持っていた銃を弾き飛ばす。


「やばっ・・・!」


敵はそのままジェシーの身体をすり抜け、ジェシーがバランスを崩し階段から転げ落ちる。


「ジェシー!」

「ちくしょう!」


そのまま敵は数体でジェシーの周りを取り囲む。


「きゃあぁっ!」


ジェシーの叫び声が聞こえる。

どうしたら、どうしたら・・・!

次の一手を考えていると、敵はどこか遠くへ飛び去って行った。

驚いたが、すぐにジェシーの元へ向かう。

身体を支えて抱き起こすと、ティファも声をかける。


「ケガは!?」

「えへへ・・・ドジっちゃった」


ジェシーが立ちあがろうとするが、そのまま座り込んでしまう

気がつけば騒ぎを聞きつけ集まった街の人達が数人、私達を取り囲んでいた。


「見せもんじゃねぇぞ!」


バレットがそう叫ぶと、街人達は散らばっていく。


「ったく・・・何だったんだ、あのウジャウジャはよ!?ま、この掃きだめじゃ、どんな突然変異がいても、不思議じゃねぇ・・・ったく魔晄炉ってのは・・・」


バレットはぶつぶつと話し始めるが、クラウドはジャシーの前に膝をつき話し始める。


「大丈夫か?」

「平気って言いたいところだけど・・・」


ジェシーは少し笑って下を向く。

そんなジェシーをクラウドは何も言わずにお姫様だっこする。


「本当嫌になる・・・クラウドに迷惑かけっぱなし」

「気にするな」


クラウドは仲間に優しい。

だから昨日の夜、私を守ってくれたのもそれと同じ。

昨日、クラウドの態度がおかしかったのはからかわれて動揺しただけ。

寝る前に完結できなかった自分の答えを出して、ジェシーの手当てをするため店の中に入った。


「どうしたんすか、その足!大丈夫ッスか!?」


地下のアジトから上がってきたウェッジがジェシーの足を見て驚きを隠せない様子でそう言った。


「騒ぎすぎ!全然へーき」

「でもしばらくは安静にした方が」


ティファはジェシーを心配そうな目で見る。


「ダメ!」


そう言うと同時にジェシーは立ちあがるが、よろけてしまいウェッジとティファが支える。


「無理すんな!ジェシーは留守番だ」

「作戦はどうするの!?ビッグスはもう潜入しちゃってる!今更中止にはできないでしょ!」

「・・・俺が!頑張りゃいい」

「余計心配!」


バレットとジェシーはヒートアップしてしまっている。

作戦にジェシーの力は必要だけど、あの足で無理させるわけには・・・。

二人の言い分どちらにも共感してしまう私は何も言えずに口を閉じていた。


「俺がジェシーの分まで頑張るッス!」


ウェッジは割って入るように胸を拳で叩くが、勢いが良すぎて咳き込んでしまう。

ダメだこりゃ・・・。

すると、バレットは諦めたようにクラウドの元に向かう。


「お前・・・今から出られるよな?」

「報酬は割増だ」

「おう任せとけ!・・・よーし、クラウドを入れて作戦再会だ!」

「私の分まで、掻き回して」


ジェシーがクラウドに向かって右手の拳を握りしめる。

クラウドは腕を組んだまま無言で優しく頷いた。


「ウェッジ、お前はジェシーとマリンを頼む」

「えぇっ!?俺は元気ッスよ!?」

「二人を任せられるのはお前だけだ」


そう言われたウェッジは諦めたのかクラウドに向かって親指をビッと立てる。

クラウドはまた腕を組んだまま優しく頷いた。


「よーし、仕切り直しだ!ターゲットは伍番魔晄炉・・・各自、準備を整えて駅に集合!・・・頼むぜ、ソルジャーさんよ」


バレットはクラウドにそう告げ、準備を整えるため店を出て行った。

私はさっき消費してしまった弾やポーションを補充しなおし、駅へと向かった。

そんなに時間はかからなかったので、一番かなと思っていたら、もう既にみんなが待っているのが見えた。


「ごめんね、お待たせ」


私の言葉にティファが首を横に振る。


「大丈夫だよ。・・・ビッグス、もう始めてるのかな?」


ティファが少し天を仰ぎ話し始める。


「早いとこ巻き返さねぇとな」

「・・・どうしても今日なのか?」


クラウドが呟く。


「動き出したら止められねぇんだよ!・・・大勢の同志が動いてくれたんだ。爆破の予告もしちまってる・・・『魔晄炉止めないと今日もやる』ってな・・・悪いのは神羅だ」


バレットはそう言い捨て、到着した列車に乗り込む。

列車から出てくる神羅兵とすれ違いながら私達も後に続いて列車に乗り込んだ。

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