私達は広場に入る大きい扉の影に隠れて本家アバランチの戦況を伺っていた。


「なんだ、あれは」


事情をあまり知らないクラウドがビッグスに問いかける。


「先客・・・あれも一応アバランチだ。守旧派というか、本流というか・・・まぁ今の俺達にとっては目の上のたんこぶ、ケツのできもの・・・失礼」

「ここで何をしているんだ?」

「さぁね、俺達を危険分子扱いして追放したくせに・・・自分達だって結構な装備だったよな?噂じゃあろうことかウータイと手を組んでミッドガル中のマテリアを持ち去るつもりなんだとか・・・何の意味があるんだ、それ?」

「さぁ」

「戦争が終わったと思ってるのはこっち側だけなのかもな」


ビッグスが話を終わらせたその瞬間、照明弾が上がったのが見えた。


「よし、作戦終了だ!ひとまず空き地まで戻るぞ」


私達は神羅兵の監視をかいくぐり空地へと急いだ。


「ウェッジを待たなくていいのか」


・・・意外なクラウドの言葉。

私達アバランチのことを仲間と思い始めてくれてるのかな。


「待ったり探したりしたら、あいつ怒るぞ」

「分からないな」

「ソルジャーには分かんねぇか」

「ビッグス、クラウドももう少しで分かるようになると思うな」


私は少しニヤニヤしながらクラウドの方を見た。


「・・・どういうことだ」

「良い方向に向かってるってこと」

「・・・よく分からない」

「だから、もう少ししたら分かるよ。ね、ビッグス」

「俺もそんな気がする!まぁ、あんたが気にしてたことは伝えておく。それに関しちゃあ喜ぶと思うね」


空き地に付くと、ジェシーがこっちを向いて手招きをしているのが見えた。

声をかけようとしたが、神羅の増援部隊が見えたので物陰に隠れて様子を伺いながら小声で話を始めるジェシー。


「ちょっと派手にやりすぎじゃない?ま、おかげでこっちも、無事・・・あれ、ウェッジは?」

すると、少し先に倒れ込むウェッジが見えた。

それを見つけたジェシーはウェッジの元に走りだそうとする。

神羅のトラックがウェッジのすぐそばを走り抜ける。


「あっ・・・ぶない!」

「俺達が行く」


クラウドとビッグスがウェッジの元に駆け寄った。

ビッグスに抱えられてウェッジがこちらへ向かってくる。

目立つ怪我はないみたい・・・良かった。


「めんぼくないッス・・・でも動いて腹ペコッス」


ウェッジのその言葉にクラウドがふっと笑った。


「いい顔!」


ジェシーが見ましたよ今の顔と言わんばかりに人差し指を立てた。


「ね、さっき私言ったこと大当たりでしょ、ビッグス」


私はビッグスにニヤニヤを抑えきれずに言う。


「名前の言う通りだったな」


腕組みをしながら、うんうんと頷くビッグス。

クラウドの笑顔を見て私も笑顔になってしまった。

いつのまにかクラウドの笑顔が大好きになってしまってたみたいだ、私。


「行くぞ・・・帰るんだろ?」


ジェシーに詰め寄られバツが悪くなったクラウドはそう言って一人先に進んでいく。

私達四人は顔を見合わせてもちろん!と笑い、クラウドの後に続いた。

狭い隙間と警備の目をすり抜けていく。

街の住民は混乱で神羅兵に詰め寄っている。

心の中でごめんなさい、と呟きジェシーが案内する先にある扉を開けた。


「ほら、こっちこっち!ここまでくれば安心」

「どこに向かってるッスか?」

「着いてからのお楽しみ」


ジェシーについて下に下に向かっていく。


「たぶん、ここに・・・」


そう言いながらジェシーは辺りを見渡した後、大きいサイズのキャリーケースのようなものを開く。


「あった!パパから聞いた時は半信半疑だったけど本当にあって良かった」

「・・・パラシュートか!」

「半信半疑に賭けたんスか?」

「五割ならかけるでしょ、ふつー」


そう言うジェシーについ笑みが零れた。


「ジェシーらしいね」

「名前は優しいし大人だね〜!楽しみ〜!」


パラシュートは二つだったので、クラウドとウェッジ、ビッグスとジェシーと私に分かれることになった。

そして今、足を踏み外したら落ちてしまうような所に立っている。

早く飛んで楽になってしまいたいと思っている私をよそにジェシーが話を始める。


「みんな、御苦労様。付き合ってくれてありがとう。それから明日の作戦終了までバレットとティファには内緒でお願い。余計な心配かけたくないから」


私達は無言でうんうんと頷く。


「おーし飛ぶぞ!」

「わくわく!」

「ねぇ何でビッグスとジェシーはそんなに楽しそうなの・・・普通に怖いよ・・・」

「絶対飛んだら気持ちいいよ!名前!騙されたと思って信じて!」

「どっちなの!?」


ジェシーは楽しそうに笑っている。

あぁもう死にそう。


「クラウド!ウェッジを送ってやってくれ」

「ああ」


クラウドが頷いた瞬間、私達の身体が中に舞った。


「きゃー!!!」


私はらしくない叫び声を上げながら落ちていった。

気が遠くなりかけた瞬間、パラシュートが開いた。


「名前!見て!夜景綺麗!ねぇ!」

「うっ・・・」


私は呻き声を上げながら顔を上げると想像以上に綺麗な夜景が広がっていた。


「き、れい・・・」

「ね!ね!」

「女って本当こういうの好きだよな、綺麗なのは分かるけど、そんなに感動するもんかねぇ」

「無粋なこと言わないでよ!」


こんな夜景が見れるのなんてもう一生ないのかも・・・連れ出してくれたジェシーに感謝。


「そう言えば、気になってたんだけど・・・クラウドはティファなの?名前なの?」


突然のジェシーの言葉に吹き出しそうになる。


「なっいきなり何!?どういう意味!?」

「名前、何でそんなに焦ってるの〜?私、どっちと付き合ってるのとか誰が誰を好きとか、そんなこと聞いてないのにな〜?」

「ジェシー・・・カマかけたね」

「怒らないでっ!だって気になるんだもん。クラウド格好良いけど女を知らないっていうか・・・からかうの楽しいんだよね」


さすが大女優・・・からかってたのね・・・てっきりクラウドのこと良いって思ってるんだなって思ってた。


「俺もそれ気になる」


ビッグスも口を挟む。


「ビッグスまで・・・はぁ・・・私とクラウドは何もないよ。だって私、四つも年上なんだし、いいとこ気の許せるお姉ちゃんでしょ」

「そうかなぁ・・・だってあのバイク野郎に名前とられた時めっちゃ怒ってたし焦ってたもん」

「まぁ付き合いは無駄に長いですから・・・クラウドにはティファの方がどう考えたってお似合いでしょ」

「クラウドには名前みたいなタイプいいと思うんだけどなぁ」

「はいはい!もういいよこの話は終わり!」

「だって名前、いつもろくでもない男に引っかかるんだもん・・・そろそろ幸せになってほしいしあれぐらい固い方が丁度いいんじゃない?」

「なんだその話!俺聞いてねぇ!」

「ジェシー!これは女同士の話だから!」

「と言うわけでビッグス、これ以上はこの話なしで」


ジェシーがビッグスに両手で顔の前に両手を合わせた。

くだらない話で騒ぎながら、パラシュートは無事ガレキ通りに着地。

二人と別れて私は天望荘へと向かい、階段を上がると私の前に腕組みをしながら立っている人影が一人。


「名前」

「クラウド、無事帰って来たんだ、良かった」

「名前もな」

「うん。立ち話もなんだし、ティファに見つかっちゃダメだから、私の部屋どうぞ」

「でも、この前」

「この前、何?」

「こんな夜中に女性の部屋に・・・て言ってたろ、だから」


クラウドは私から目線を反らして言う。

前、言ったこと気にしてるのかな。

なんかクラウドに再会してから沢山かわいいところ見つけちゃってる気がする。


「私がどうぞって言ってるんだからいいの!ほら入って」

「・・・お邪魔します」


クラウドはなんだか申し訳なさそうに私の部屋に入ってきた。


「クラウド、今回はごめんね。ローチェと戦ってる時、足手まといになっちゃって」

「別に、気にしてない・・・。それ以上に助けてもらったからな。後、あいつの話はするな」

「え、何で」

「何でもだ」


ふと、ジェシーが言ってた言葉を思い出す。


「もしかして、私がローチェにとられた時、怒った?焦った?」

「だからもうやめてくれ」


クラウドをからかうのが楽しくなってきて、私も冗談が口からスラスラと出てきてしまう。


「もしかして嫉妬した?クラウドかわっ!?」


かわいい、と言おうとした瞬間、クラウドが掌で私の口を覆った。


「もう、やめてくれ、頼む・・・」


どうしたらいいか分からないままクラウドを見ると顔はそっぽを向いているけど、耳が真赤。

その光景に私の頭の処理速度が追い付かなくなる。


「・・・」

「・・・なんで黙る」


クラウドが掌で覆ってるからだよ、と言いたくても言えないので人差し指でその掌を指した。


「あ・・・すまない」


そう言ってクラウドは掌を私の口から離した。


「い・・・いや私こそごめんね、冗談だから、気にしないで」


私、今、顔赤くなってないだろうか、きちんと喋れているだろうか。


「いや、気にしてない」


冗談、私がそう言った時、少し顔色が曇ったクラウド。

だけどそんなことを気にする余裕も今の私にはなくて、自然と言葉が早口になる。


「じゃ、じゃあ、私そろそろ寝なくちゃ明日頑張るねおやすみなさい!」

「ああ、・・・おやすみ名前」


クラウドは静かに扉を閉めて自分の部屋に戻っていった。

シャワーを浴びながら、今日のジェシーの言葉とクラウドの行動が頭の中で延々とループして寝れないんじゃないかと不安になっていたけれど、思った以上に疲れていたみたいで、自分の中の答えがでないまま眠ってしまった。

09


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