空き地の場所を確認して、七六分室に向かった。
「この奥が広場のはずだな」
ビッグスが小声で呟く。
「ねぇ・・・警備が誰もいないんだけど」
警備室と思われる部屋には人気がなく、不気味に感じた。
「ひとまず、進もう」
クラウドが姿勢を低くして進む。
「ひぇっ!」
「ちょっ・・・ウェッジ静かに!って・・・え・・・」
侵入作戦中に悲鳴を上げるとは何事か、とウェッジを怒ろうとすると神羅兵が倒れている姿が目に入った。
「どうやら先客がいるらしい」
ビッグスが神妙な面持ちで言う。
「ジェシーじゃないッスよね、これ・・・」
「厄介なことになってなきゃいいが」
「・・・確かめよう」
クラウドのその言葉を合図に私達は進みはじめる。
「誰もいねぇ・・・どうなってやがる」
「あっちが広場、奥が倉庫ッス・・・ジェシーは裏から回ってるはずだけど・・・」
「ひとまずは様子見だ。今のうちに作戦を・・・」
「やるのは俺一人でいい」
クラウドがビッグスの言葉を遮り、腕組みをしながらそう言った。
「俺ら足手まといだってか?んなこと言うなよ」
「仲間ッスからね」
「そうだよクラウド。私たち来た意味なくなっちゃうじゃん」
「・・・面倒は見ないぞ」
クラウドは一度私に向けて笑みを浮かべてからそう言った。
「逆に私がクラウドの面倒見ちゃう」
「だから、子ども扱いはやめてくれ・・・」
「ごめんごめん、でもしっかり私達がクラウドを援護するから、一緒に行かせてよ」
「分かった・・・名前、怪我するなよ」
「名前のことばかりじゃなくって俺達のことも心配してほしいッス!」
「どうだろう」
「ひどいッス!」
クラウド、何か馴染んできてるなぁ。
笑うとクラウドに怒られそうなので心の中で思う存分にやけておいた。
「よし!じゃあ持ち場の確認しとくぞ。クラウドは広場の真ん中で派手に暴れてくれ」
「俺達は?」
「クラウドのフォローだ。まずは全体を見渡せる場所に登ってそこから援護をしていく。名前はできるだけ高い場所で援護射撃をしてやってくれ」
「了解」
スナイパーライフルに手をかけて最終確認をしようとすると視線の左上に照明弾が上がるのが見えた。
「ジェシーの合図だ!」
「上手く潜り込めたか」
「・・・行くぞ」
「よし」
私は気合いを入れなおして広場へと走り、一目見渡して一番の高台を見つける。
「・・・あそこだ」
さすがにここには神羅兵が沢山いる。
扉の前に目立つように立っているクラウドを見つけ銃を撃ち込んだ。
大剣でそれをガードし、隙を見て神羅兵に向かって走り出した。
・・・今かな。
私はスコープを覗きこみ神羅兵へと撃つ。
一番周りを見渡せる場所にいるから、できるだけクラウドの死角になりえそうな神羅兵を狙う。
どんどんと神羅兵が出てくるが、この流れで段々と蹴散らしていく。
最後の一人をクラウドが大剣で吹っ飛ばした。
一息ついていると、奥から大量に神羅兵が出てきた。
待って・・・何人いるの・・・。
クラウドがおそらくどう攻めようかと大剣を構えながら周りを見渡していると聞き覚えのある高らかな笑い声が聞こえてきた。
「う、嘘・・・。」
ローチェがバイクで扉を乗り越えて広場に入ってきた。
流石にまずい。
「ハデにやってるじゃないかマイフレンド!」
ローチェはバイクから降り、クラウドの方を向いた。
「約束しただろう?次は二人だけで勝負をしようと・・・君が点火したんだ。私のエンジンは今、駆け出す興奮に激しく震えている!・・・バイクを降りるのは何年ぶりかな。だが、私のスピードは・・・どこであろうと変わらない!さぁ正々堂々と勝負だ、マイフレンド!」
ローチェも剣を持ちクラウドに突撃していく。
広場にはただ二人の剣がぶつかり合う音だけが響く。
私がいることはまだ気付かれていないはず。
タイミングを見計らってクラウドを援護しないと。
二人が距離をとった瞬間、今だと思い引き金を引こうとした。
「レッドゾーンまで振り切ってみようか!」
だが、ローチェが大声で叫んだので引き金を引く指を一旦止める。
どう出るか分からない。
一旦様子見。
すると、素早クラウドに詰め寄ると一撃をくらわせる。
クラウドがひるんで一瞬動きが止まる。
ちょっとまずい。
ローチェの動きを止めないと・・・。
スコープを覗き込みローチェ目がけてスナイパーライフルを放つ。
カァン!
しかし、ローチェの剣によって私の弾は弾かれてしまう。
「誰かな・・・正々堂々とした勝負を邪魔するのは!」
ローチェはそう言いながらバイクに乗り込み、エンジンをかける。
「・・・何をする気だ」
クラウドは体制を立て直し、鋭い目をローチェに向けている。
「邪魔するレディがいるならさらってしまおうと思ってね」
「っ!名前!逃げろ!」
クラウドの声が聞こえてやばいと思った瞬間、バイクに乗ったローチェの目線が私の目線と同じ高さになった。
「レディ!マイフレンドだけじゃなくて私ともランデブーしてくれないかい?」
誰があんたと、と言おうとした瞬間、ローチェの片腕で身体を持ちあげられ、バイクに座らされる。
やばい、落ちる!
私はとっさにローチェに抱きつくようにしがみついた。
そんな私にローチェはニヤリと笑って私に話しかける。
「おや・・・もしかして私に惚れてしまったかな!」
「んなわけないでしょ!降ろして!」
「聞こえないなぁ!」
そのまま地面に着地して、バイクはそのまま走りだす。
「これじゃ簡単に攻撃できないだろう!」
「ちょっともういいでしょ?降ろしてよ!」
「マイフレンドとの勝負に水を差したんだ。罰としてもう少しランデブーしようじゃないか!」
「おい・・・名前を早く降ろせ」
クラウドがいつもより怒気を含んだ声で言う。
「おやおや・・・嫉妬は醜いよマイフレンド」
「いいから名前から離れろ」
「そんなに大事にしているなら・・・もっと返したくなくなってしまうなぁ」
・・・このままじゃ足手まといになってしまう。
腰のハンドガンに手をかけようにも、ローチェが猛スピードでバイクを走り回るからローチェにしがみついているしかできない。
「・・・名前!俺に向かって飛べ!」
え、飛ぶって・・・この猛スピードのバイクから、だよね?
流石に怖くてクラウドの言葉にためらっていると、更にクラウドが叫ぶ。
「俺が受け止めるから、飛べ!」
・・・やるしかない。
私は意を決して身体を浮かせバイクの椅子に両足を揃えて立ち上がり思い切り蹴り上げてクラウドのもとへ飛んだ。
その瞬間クラウドが私のもとに走り、片腕でかつぎあげるように抱きとめ・・・その瞬間ローチェにファイアを放った。
「ぐあっ・・・!」
ローチェはバイクから転がり落ち、倒れ込んだ。
「クラウド、ありがとう・・・。飛んだ瞬間死ぬかと思ったけど」
「俺が受け止めてやると言っただろう」
「頼もしいなぁ」
ローチェは膝をついていたが立ちあがり、バイクの元へと向かう。
「楽しい時間はあっという間だね・・・。まだまだ目指せる高みがありそうだ」
と、突然警報音が鳴り響き神羅の兵器がぞくぞくと出てくる。
「ソルジャーを倒すほどの相手だ!全力でかかれ!」
今まで静観していた神羅兵が声を上げた。
「もう・・・どんだけ出てくるの!?」
するとローチェが笑いながら神羅の兵器をバイクで蹴散らしていく。
そして、私達にこう言った。
「私達はまた必ず会う!その時まで生きていてくれよ・・・マイフレンド!」
ローチェは猛スピードで去って行った。
「・・・嵐みたい」
私はぼそっと呟いた。
・・・できればもう二度と会いたくない。
ガシャン!
まだ残っていた神羅の兵器がウェッジに向かって鎖を放った。
「ウェッジ!」
ウェッジは鎖に縛られ動きをとれずに縛り付けられている。
「クラウドさん!今のうちに・・・」
ウェッジを助けるために動き出そうとすると、どこからか聞こえてきた銃声が神羅の兵器を攻撃する。
神羅の兵器は音をたて壊れ、ウェッジも解放された。
「ウェッジ!大丈夫!?」
「大丈夫ッス!へへ・・・」
誰、と思い振り返るとそこには本家アバランチの姿。
「武器を降ろせ!敵じゃない!・・・分派が何をしている?」
「そっちこそ」
本家アバランチの隊員は治療をするのかウェッジに肩を貸し壁際へと向かっていく。
「クラウド!名前!来い!」
ビッグスは私とクラウドを本家アバランチから遠ざけ、広場を後にした。
私はウェッジを横目で心配しながらも何か危害を加えられることはないだろうとビッグスに付いて走った。