「あ」


今日もウチの作戦室は汚い。
まあ不潔なのは無理だけど散らかってる程度なら全然許容範囲だし、なんならおれも散らかしてるし、ウチの作戦室が汚いのなんていつもの事だから全然気になんねーんだけど。
でも今日はなんか、この床に投げてあるダン箱が気に食わなくて。通行の邪魔だなって、そんな気持ちになって。でも片付けんのもめんどくせぇし足で蹴ったら予想以上に重かった。えっなんか入ってんの?柚宇さんゲームとかだったらどうしよ。


「みかんじゃん!」


箱の中身はなんでしょな。正解はダン箱いっぱいに詰め込まれた大好物のみかんだった。
みかん大量でめちゃくちゃ嬉しいしゲームじゃなくて安心だし。なんかすっげーいい気分。


「あ、それ食っていーぞー」
「これ太刀川さんの?」
「なんかゴミ捨て場の掃除してたら近所のばあちゃんがくれた」
「太刀川さん偉いね〜。わたしもちょーだい」
「おー。もっと俺を褒め讃えろ」


近所のおばあちゃんにも柚宇さんにも褒められて太刀川さんはご機嫌だ。ちなみにおれも結構ご機嫌。なんか今日はいいことが続いていい気分。

うん、いい気分は誰かに分けてやらねぇとな。


「太刀川さんおれちょっと出てくる」
「おー。みかん持ってどこ行くの」
「いっぱいあるから名字にあげる、なんか追試頑張ったんだって」


みかんを両手に一個ずつ掴んで、ついでに柚宇さんから預かった食いかけのチョコもポケットに突っ込んで。向かう先はB級フロア。多分名字は荒船隊の作戦室にいるはずだ。
扉が閉まる直前、太刀川さんと柚宇さんが『あいつ名字のこと大好きだな』『わたしも好きだよ〜』なんて話してる声が聞こえた。うん、おれ名字のこと大好き。だってあいつ頑張り屋さんじゃん。


「おれらもう行くけど名字は?」
「半崎くんと合流して荒船隊入る!」


血の気のない顔。指先なんか音が鳴りそうなくらい震えてて、あー怖いんだ、可哀想って思った。
名字ってトリオン多いんだよな。そりゃあ怖いよな、気持ちわかるよ。おれも4年前めっちゃ狙われたし。まあ今は全く怖くねぇけど。


「了解りょーかい。健闘を祈るわ〜」


おいこら槍バカ。こういう時に声かけてやんのお前の得意分野だろ。何健闘を祈ってんだよ。いや勿論おれも祈るけど、あぁもう仕方ねぇな、なんて声掛けたらいいんだろ。頑張れ?大丈夫?あーもうわかんねぇ


「そっちこそ!」


なにこいつ。顔真っ青なくせに、指先震えるくせに、怖いくせに。やるじゃん。
槍バカがニヤって笑ってんのが見えた。なんだよお前、名字がこういうやつって知ってんなら先に言っとけよ。


「弾バカちゃん名字のこと心配?」
「別に。あいつ強いじゃん」
「A級1位様の嫌味かしら?」
「そー聞こえたなら歯医者行って頭治してもらってこいよ」
「なんて?」
「お前はバカってことだよ」


アホだし口悪いし見た目はヤンキーみたいだけど。真っ直ぐで、負けん気強くて、一生懸命でかっこいい。おれはそういう奴が好き。


『ーーB級フリーの名字なまえです!新型のデータ、数値化完了しました!!』


ほらな、やっぱり強いじゃん


一生懸命がよく似合う


マエ モドル ツギ

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