ライトブラウンの四人掛けダイニングテーブルに並べられた食事は、炊き立ての白米に味噌汁、焼き魚に卵焼きと、朝はどちらかと言えばご飯派の凌に合わせた献立だ。

毎朝凌より1時間は早く起きて朝食を作ることを日課にしている匠は、ついでとばかりに二人分のお弁当も作るようにしている。
元々早起きの匠にとっては然程大変なことでもないのだが、「匠と結婚できる男は幸せだろうな」などと、しみじみと凌に言われてしまうのだから複雑だ。
いくらでも喜んでできてしまうのは、相手が凌だからだというのに。


「しのくん、私今日バイトだから。夜ご飯は適当に済ませてね」

スーツに着替えた凌と向かい合って朝食を食べながら、匠はそう言った。
部活動をしていない匠は週に3回程、学校が終わったあとに喫茶店でアルバイトをしている。
高校1年生の時から続けているが、人と接するのが苦手な割にはよくここまで続けてこれたなと思う。

「今日も帰り遅いの?」

「うん、21時くらいかな」

「そっか。迎えに行くから終わったら連絡して。帰り一人じゃ危ないから」

「今日は紫郎とシフトが一緒だから大丈夫だよ。送ってもらう」

「あー、そっか。それなら大丈夫か。紫郎によろしく言っといて」

凌は安心したように言うなり、味噌汁を啜った。
匠のクラスメイトであり友人の紫郎は、唯一凌の不在時に眞中家に足を踏み入れることが許されている男である。
中学生の時に紫郎を紹介して以来、二人は思いのほか仲良くなり、凌はすっかり彼を信頼しているのだ。

はじめてできた匠の「友達」を、一緒に大事にしてくれる凌の優しさが嬉しかった。

「そういえば、バイトはいつまで続けるの?受験生なんだし、そろそろ忙しいだろ」

「うーん、そうだね。ちょっとマスターに相談してみようかな」

「そうしなよ。お金が必要な時は言ってくれれば渡すから。大事な時期だし、勉強に専念した方がいいよ」

「しのくん、私がとっても頭の良い子だって知ってる?」

悪戯に笑って凌を見れば、咀嚼していたご飯を飲み込んで凌は苦笑した。

「存じていますよ。とっても優秀な自慢の姪ですから。でもそれ、自分で言っちゃうの?」

「んふふ、自分で言えちゃうぐらい私はできる子なのですよ」

「まあ、確かに」と肯定して頷く凌と顔を見合わせて笑い合うと、いつもと変わらない穏やかな空気に匠はほっと胸を撫で下ろした。

昨夜のことも今朝のことも、何もなかったかのように普段通り凌と接することができている自分に安堵する。

姪である自分の気持ちを知られて、凌と今まで通りに生活できなくなることが一番怖い。

気持ちを伝えたい反面、この関係が崩れてしまったらと思うと不安で仕方ないのだ。


07

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