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彼女の瞳に、俺はどう映っているのだろう。
ヒヤリ、背筋を冷たい汗が流れた。
今更躊躇などない。
目の前に少しずつ実る果実を、もぎ取らずにじっと耐えた。
我慢を貫いてきた、故の興奮。
“咲…元気ない…?”
馬鹿を言うな。
ずっとこの日を待ち望んでいた。
キミの笑顔を失う恐怖が、ほんの一瞬、脳裏を掠めただけのこと。
躊躇いなど、ない。
あるのは高揚。
破壊的な、高ぶる衝動。
ギシリと軋むベッドの音が、やけに耳に響いた。
すやすやと気持ち良さそうに眠る彼女の顔は、まだ幼さが残る。
『…乃愛、』
低く呟いた先に、返事などない。
ぷっくりと膨らんだ潤う唇に、そっと唇を重ねる。
味わうようにゆっくりと重なった唇に、吸い付くようなキスを数回繰り返す。
「…っ、」
不意に半開きの唇を割り、口内に舌を差し入れると、乃愛の眉間に皺が寄った。
それでもお構い無しに彼女の口内を犯すと、突如バチっと乃愛の目が見開き、鋭く見据える俺と視線が絡んだ。
「…んっ、っん〜…、っ」
逃げる舌を追い、絡みとる。
処理の仕方の分からない唾液は乃愛の口許をつたい落ちると、「んっ、んっ!」と苦しそうな声を上げ何かを訴えかける。
息継ぎさえも分からない、息を止めて酸素を求めてる姿は、俺の加虐心を煽るだけだった。
「っ〜、さ、くぅ…、」
パシパシと腕を叩かれ、俺はようやく彼女の唇を解放した。
「はっ…はぁ、っ…」
乃愛は思い切り酸素を吸い込むと、寝起きでぼやける思考のまま、とろりと垂れ下がった瞳を俺に向けた。
「なに?」とでも言いたげなその視線は、今も尚純真さを含ませる。
『乃愛、誕生日おめでとう。
キミの全てを、奪ってあげる』
俺の欲望を満たす。
その為だけに、キミは存在する。
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