彼女の世界の全ては、俺だった。




「ねぇ咲…、今日はなんだか元気ない…?」

俺の顔を覗き込むようにして、乃愛は心配そうにそう言った。
時刻は23時。
彼女が寝付くまで傍にいるのが、俺の日課だ。


『んー?元気だよ。まぁ、仕事で少し疲れてるけどね』

「ほんと…?大丈夫?」

『大丈夫だよ、乃愛の顔見たら元気になったし』

そうして笑顔を見せると、まだ彼女は不安そうな表情だ。
下がった眉が、心底俺を心配している事を表している。

『はは、本当に大丈夫だから。乃愛はもう寝な』

「……うん」

乃愛は不服そうな顔で頷くと、もぞもぞとベッドに入り込む。
首元まで布団を掛け、優しく頭を撫でる。

「…今日ね、窓から鳥が見えたの」

『へぇ、どんな?』

「小さいやつ。緑色の」

『緑?何だろうな』

「あ、明日図鑑で調べてみる!分かったら咲にも教えてあげるね」

『おー、楽しみだな』


いつも通りの会話。
彼女の1日に起こる事など、高が知れている。

小さな箱の中。
それが彼女の世界なのだから。




「ねぇ咲ー…明日はお休み…?」

『休みだよ』

「じゃあ、ずっと一緒…?」

『そうだなぁ、明日は予定もないし、ずっと乃愛の傍にいるよ』

「やったー!約束だよ!」


満面の笑みを見せる彼女の額に、キスを落とす。




『約束するよ』










キミが嫌だと言う程、傍にいる。








6 / 22


←前へ  次へ→



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -