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乃愛を抱いた日から、気付けば一週間が経過していた。

あの日は丸一日彼女の部屋で過ごし、睡眠、食事、排泄以外の時はひたすら性行為を繰り返していた。
もう無理だと彼女が泣いて訴えても、治まらない熱を吐き出し続けた。


あの日から一週間。
俺は一度も乃愛の部屋に行っていない。
毎日のように通っていた彼女の部屋に行かなくなったのは、単に仕事と雑務に忙殺されているから。

……だけではない。


俺は腕に付けた時計に視線を落とし時刻を確認すると、深く溜め息を漏らした。
23時過ぎ。乃愛はとっくに寝ている時間だ。

足早に歩いて自室に戻ると、スーツの上着をベッドに無造作に脱ぎ捨てネクタイを緩める。
この一週間、嫌なことが続いている。
煩わしい“あの”打ち合わせが、俺の神経をすり減らしている。

俺は着替えることすら面倒になり、ベッドに深く腰掛けた。

…乃愛に会いたい。

喉元までせり上がったその言葉を、自分の中に留めて飲み込む。

情けないことに、彼女の部屋に行けないのは忙しいからだけではない。
それをはっきりと自覚したのはつい昨日のことだ。

俺は彼女に自分が恐れられることを恐れている。

あのきらきらとした綺麗な瞳に、恐怖の色が滲むのを見たくない。

あんなに散々欲望を押し付け撒き散らしておきながら、乃愛に嫌われることを恐れているなんて、なんて滑稽なんだ。笑えてくる。

8年間ずっと彼女を犯す日を夢見ていた筈なのに。
結局、俺の求めていたものはなんだったんだ。


自分で自分が分からない。


考え込むように俺は躰をそのままベッドに横たえると、目を閉じる。
乃愛の姿をそっと思い描いて、また、会いたくなる。

『…シャワーでも浴びるか』

このまま寝てしまいたい気持ちを抑えて躰を起こすと、不意に自室のドアをノックする音が響き俺は警戒した。
この屋敷において、俺の心が休まる場所はたったひとつしかない。

……こんな時間に誰だ。

誰であれ、碌なことにはならない。
嫌な気持ちになりながらドアの方へと向かうと、取っ手を掴んで低く声を絞り出す。

『…誰だ』

使用人の加賀美(カガミ)であれば、ノックの時点で声がかかる。
自室を訪れる訪問者を警戒しなければいけないだなんて、本当につくづくクソみたいな屋敷だ。





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