「あのっ…ご、ごめん…」

ハァッと溜め息を付く雄史に、かける言葉と言えば謝罪以外に思い浮かばない。


『あー…いいよ、俺のチェック不足だし…』

そう言ってポリポリと頭を掻く雄史を見上げ、柚那の眉根はへの時に下がる。

しかしこればかりは、どうしようもない事だ。

“嘘”を付いていた事への罪悪感が、フツフツと柚那の中に沸き上がる。

これ以上彼に隠し事をするのは、精神的に無理がある。


「あ、あの…実はね…」

『なんだ、断んの?勿体ねーな』





覚悟を決め真実を話そうとした柚那の言葉は、聞き慣れた男の声により遮られた。

オフィス内には、もう柚那と雄史しか残っていない筈だった。
開けっ放しの給湯室のドアの方へ目を向けると、そこに立つ人物に二人は目を丸くした。


『うわっ…!上条さん!』

『どーも、遅くまでご苦労さん』


驚いて慌てる雄史に、特に表情を変える事なく男はそう言った。
『やばい』といった表情をする雄史だが、それも無理はない。

上条冬真(カミジョウ トウマ)
彼は二人の直属の上司にあたる。

32歳という若さに、柔らかな甘いマスク。
長身でスタイルも良く、スーツが良く似合う。
仕事の出来る彼は女性のみならず、男性社員からも憧れの的だ。


そんな彼にまさか社内での不純行為を見られるとは、予想もしていなかった。



『武藤、お前ほんとにそれでいいの?』


口許に不適な笑みを浮かべ、上条は柚那へと視線を向けた。





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