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ふわりと頭を撫でられる感触に、柚那はうっすらと目を開いた。
朝日が部屋に差し込み明るくなった室内で、真っ白な天井を見つめて瞬きを繰り返す。
『あ、起きた?』
穏やかな声と共にひょいと柚那の顔を覗き込んだのは、上条だった。
髪を撫でる大きな手が、優しく柚那を包み込む。
「上条…さん、あれ…私…?」
『お前イッた後気失ったんだよ、覚えてる?』
「っ…ぁ…」
昨夜の出来事に目を丸くし、柚那の顔はカァッと真っ赤に染まった。
仕事の後同僚の雄史と共に上条に連れられ、ホテルで二人の男に攻められたのだ。
忘れられる筈がない。
「っ…ゆ、雄史…は…?」
『藤井?昨日のうちに帰らせたけど』
「あ…そ、そうなんですか…」
混乱する頭をなんとか働かせ、柚那はゆっくりと体を起こした。
彼氏である男に、他の男とのセックスを強要された。
相手を好きであればある程に、その行為への悲しみがじわり、心に染み渡る。
「…か、上条さんはっ…私の事なんて…やっぱり好きじゃなかったんですよねっ…」
消え入りそうな声でそう呟くと、自ら口にした言葉に涙腺が緩んでいく。
「告白だって…私がしたしっ…、すき…なんて…一度も言われた事ないしっ…」
「他の人と…私がえっちしても…全然平気なんですよねっ…」
ポロポロと溢れ出した涙が、柚那の頬を流れていく。
そんな彼女を上条はじっと見つめると、柚那の頬をつたう涙を拭った。
『…そうだな、お前とは興味本意で付き合って、昨日もそれなりに楽しんだのは事実だよ』
「っ…、」
『昨日お前が寝た後、お前と別れろって藤井に言われたしな』
笑いを含んだ上条の言葉に、柚那の表情はみるみる悲し気に歪んでいく。
『まぁ…でも、お前は俺の。他の誰にも渡したくない』
『俺がこんな事思ったの、柚那が初めてなんだけど』
そう言って上条が苦笑すると、柚那は拍子抜けしたように目をぱちくりと瞬かせた。
『…もう他の男に触らせない。
つーか3Pって、女二人に男一人の方がいいよな』
「っ…だ、だめっ…!上条さんは私のですっ…!」
『……お前って、ほんと俺の事好きだよね』
ニヤニヤと笑う上条の策略にまんまとハマると、柚那は真っ赤な顔で上条を睨んだ。
「すき…ですよ。
昨日の事は、許してあげなくもないです」
END
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