ひみつ基地


15



「んっ…、っ…」

礼の柔らかな舌が澄の舌を絡めとり、ゆっくりと包み込むようになぞる。
抵抗する気も与えないほどの優しいキスに、澄の思考回路は止まったように唇に感じる熱だけに意識が集中していく。

息継ぎをするように離れては重なる唇がお互いの吐息を熱く混じり合わせ、二人の興奮を煽る。

「…舌出して」

キスの合間に囁かれた言葉に澄は言われるがままに従うと、ちゅうっと舌を吸われて背筋に甘い痺れが走った。

「ふっ…んんっ…」

塞がれた唇からくぐもった声が漏れ出し、澄は堪らず礼のシャツを掴んだ。
遠慮がちに礼の舌に合わせて舌を絡めると、どちらとも分からない唾液が唇の端をつたい落ちる。

「れ、い…」

時間も忘れて唇を重ねていた二人は、熱を持った澄の言葉を合図にそっと唇を離した。
名残惜しそうに二人を繋ぐ糸がぷつりと途絶え、荒い呼吸だけが静寂した室内に響き渡る。

澄は頬を紅潮させ、呼吸を乱しながら潤んだ瞳で礼を見つめた。

「……そんな顔するなよ、我慢できなくなる」

礼は口許に笑みを浮かべて自身の唇を舐めると、濡れた澄の唇を指で拭うようになぞる。
唇に触れる礼の指を澄は無意識に唇で挟み込み、吸い付くようにキスをした。

「…澄、もっとしたいの?」

その問い掛けに澄は我に返ったようにかぁっと頬を更に赤らめると、先程までの行為への羞恥心が全身を駆け抜けた。

礼とのキスは、何もかもどうでもよくなる程に気持ちがよかった。
キスの先をほんの僅かに期待した自分がいることに驚き、戸惑う。

「っ…私…、」

戸惑いを隠せず瞳を潤ませる澄を見て、礼は口角を上げた。

「残念…、俺はしたかったよ。邪魔さえなきゃ、ね」

含み笑いでそう言ったのと同時に、階下から純子の声が響いた。
呼ばれることに気付いていたかのように礼は躰を起こして立ち上がる。

「俺は着替えてから行くから、澄は先に下に行ってな」

肘付近まで捲り上げていたワイシャツの袖を元に戻しながら、礼は何事もなかったかのように澄へと声をかける。

澄は今だにはっきりとしない意識のまま躰を起こし、こくりと小さく頷いた。

「じゃあ…先に行ってるね」

「ああ、俺もすぐに行くよ」

胸元のボタンを外している礼を横目に、澄はそそくさと部屋を後にした。
礼の部屋のドアを閉めた途端に、躰の力が抜けたようにずるずるとしゃがみ込む。


心臓がうるさい。


キスの余韻が、まだ唇に残っている。
礼とのキスは優しく官能的で、すべて委ねてしまいたくなる。
熱に浮かされたみたいにくらくらとした眩暈が、思考を奪ってしまう。
あの瞬間確かに、躰全身が礼を求めていた。


「……どうしよう…」


蚊の鳴くような震える声で呟いた言葉は、自分自身への問い掛けだ。


“あの日”の熱を、躰が思い出した。


本当は分かっていた。
中二の夏、あの日。
お互いを求めあった時点で、礼と律は“兄弟”なんかじゃなくなった。


……ただの幼馴染だなんてとっくに思えなくなっていたことに、

今更になって気付いた。







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