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学校の下駄箱で友人と合流した律と別れると、澄は自分の教室へと向かった。
素っ気ないながらも学校に着くまで澄との会話に付き合っていた律は、クラスメイトと思われる男子生徒に絡まれると親し気な笑みを浮かべていた。
昔から無愛想ながらに友人が多いのが律だった。
律と一緒に登校した時点でなんとなく澄は女子生徒からの視線を感じていたが、気にしないことにした。
「澄〜!おはよ!」
教室に入って自分の席に着くなり、華恋が笑顔で話しかけてきた。
今日は軽く巻いたふわふわの髪を低い位置で二つに縛っている。
「おはよう、華恋」
「ねぇ澄聞いて!今日は朝から先輩見ちゃったの!朝練終わった後だったみたいでタオルで汗拭いてた〜かっこよかったぁ〜」
華恋の嬉しそうな言葉に、澄の心臓はドキリと跳ねた。
彼女の言う先輩は、間違いなく礼のことだからだ。
弓道部に所属している礼は、毎朝自主的に朝練をしているらしい。
その情報を澄に教えてくれたのも華恋だった。
「…あのね、華恋。私…実は華恋に聞いてほしいことがあるの」
躊躇いがちにそう言う澄を見て、華恋は目を瞬かせた。
「なに?急に…。もしかして嫌な話…?」
「…うん、大事な話。お昼とか、時間のある時に聞いてほしいの」
「え〜なになに、気になりすぎて待てないかも」
「ごめんね…、ゆっくり話したいから。お昼まで待っててくれる…?」
両手を顔の前で合わせて申し訳なさそうにこちらを見つめる澄の姿に、華恋は苦笑した。
澄のただならぬ雰囲気に、聞くのがなんだか怖くなってくる。
「分かった!じゃあ後でゆっくり話そうじゃない!」
気になる気持ちをグッと抑えて笑顔を向けると、澄は安堵したように微笑んだ。