ひみつ基地




「ちょっと澄、どこ行ってたの。あんな格好で外に出るのはやめなさい」

白の長袖ワイシャツに紺のストライプネクタイ。淡いグレーの生地に白と紺のラインが入ったプリーツスカート。
学校指定の制服に身を包んだ澄は、朝食の用意されたダイニングテーブルの椅子に腰を下ろした。

「うん、気を付ける。実はね、礼に会ってたの」

「え、やだ、礼と仲直りしたの?」

澄の言葉を聞くなりキッチンで後片付けをしていた母の清美は、いそいそとテーブルまでやって来た。
澄の幼馴染である礼と律のことは、清美にとっては息子のように可愛い存在だ。
二人の母である純子(ジュンコ)とは家族ぐるみで仲が良く、どちらかの家でお酒を飲みかわすことは日常茶飯事なのだ。

「別に最初から喧嘩なんてしてないよ」

「え〜、だって中学の時から急に一緒にいるのやめちゃって。純ちゃんと二人でずっとアンタ達のこと心配してたのよ」

「よく言うよ。私たちの話をお酒の肴にしてたんでしょ」

「やだ、可愛くないこと言う」

大袈裟に反応する清美の言葉を無視して黙々と澄は朝食を食べ始めた。
清美と純子が昔から自分の子供たちを話題にして楽しんでいることは知っている。
明るく豪快な母達の姿に礼と律がいつも振り回されていたことを思い出し、くすりと笑みが溢れた。

「…ところで澄は礼と律、結局どっちと結婚するの?」

にっこり微笑んで唐突な質問をぶつける母の姿に、澄は思わず口に含んだ味噌汁を吹き出しそうになる。

「ちょっと、大丈夫?」

なんとか味噌汁を飲み込んで噎せる娘に、清美は心配そうな顔を向ける。

「もう!急に変なこと言わないでよ!しないよ、結婚なんて!」

「あら、しないの?礼も律もその気だと思ってたのに」

清美の言葉に澄はかぁっと頬を赤く染めた。

「二人とも小さい頃から澄をくれってうるさかったんだけどな」

「いつの話をしてるの!もう私行くから!」

まだ話したそうにしている清美を残し、澄は逃げるように自宅を出た。






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