14
澄って…こんなに小さかったっけ…。
泣いている澄の躰を抱き締めながら、礼はぼんやりとそんなことを思った。
十四歳の彼女は、律との身長差もまだあまりなかったように感じる。
律の身長は、あの夏で一気に伸びていたけれど。
自身の腕の中で震える澄を見つめて考え込んでいると、自宅の方から嫌な気配を感じて礼は顔を上げた。
「澄…!!てめぇ…、今の話は聞いてねーぞ!」
そう怒鳴りながら唐突に姿を現した律に、礼は顔を顰めた。
きょとんとして顔を上げる澄の頭を無意識にそっと撫で、律の方へと顔を向ける。
「律…、お前さては盗み聞きしてたな」
「してねぇよ!たまたま聞こえただけだ!」
「…じゃあなんで外にいたんだよ」
呆れたように言葉を返すが、礼のことなど見向きもせずに律はずんずんと澄へと詰め寄った。
「澄…お前、俺にはほんの一部しか話してなかったじゃねぇかよ!なんだよ生理って…、ふざけんなよ」
律の責めるような口調に、澄は驚いて目を丸くする。
「だ、だって…律、怒ってたじゃない。話をするのも嫌そうだったし、あの状況じゃ言えないよ」
「はぁ?帰る時とか話す時間はあっただろーが」
「む、無理だよ…」
困ったように眉根を下げる澄を、律は不満気に睨みつける。
そんな二人の話を聞いていた礼は、深い溜息を漏らした。
「…律、どう考えてもお前が悪い。すぐカッとなる癖を直せよ」
「うるせーな。つーか礼、お前はいつまで澄にくっついてるつもりなんだよ」
律にそう指摘され、今もまだ腕に抱いている澄と思わず顔を見合わせる。
「いや、久しぶりに澄に触ったものだから、躰が離れるのを拒否してる」
しれっと言い放ち、澄の頭に頬を付けて彼女の腰を引き寄せる。
「お前…、よくもぬけぬけと」
澄を離そうとしない礼の様子に、律はうんざりして眉間に深い皺を刻んだ。
久しぶりに見た兄弟のやり取りに、澄は安心したようにほっと胸をなで下ろす。
昔からこの兄弟はなんだかんだで仲が良いのだ。
「あの…、私、また昔みたいに二人と一緒にいられるかな…?」
遠慮がちに囁かれた澄の言葉に、二人の兄弟はピタリと動きを止めた。