そのあとが大変だった。
クラスメイト達がわらわらと寄って来て、蓮と蒼井の周りを取り囲んで矢継ぎ早に質問を浴びせた。

「返事はどうするの?」

「付き合うの?」

「二人、仲良いって思ってた」

「いつから好きなの?」などなど。

次々と飛んでくる質問に混乱する蓮を他所に、蒼井は飄々とした態度で軽くかわしている。
蓮がパニックを起こしかけたところに授業始まりのチャイムと共に教室内に担当教科の教師が入って来たことで、生徒達は蜘蛛の子を散らすように自席へと去って行った。

その場ではなんとか助かったものの、教室内で盛り上がった話はあっという間に二学年全体に広まった。

騒ぎが大きくなった理由は明白だ。

告白をした人物が、財閥のお坊ちゃんだからである。蓮の通う学校からそう遠くない距離に、長く続く塀に囲まれた大きな屋敷がある。
まさにそこが蒼井の住む家なわけだが、この学校に通う生徒ならば、そのどこまでも続く塀の長さから蒼井財閥の凄さを思い知っている。

「蓮ちゃん、もう返事した?」

放課後にクラスで文化祭の準備をしている最中、ここぞとばかりに女子生徒達が集まってきた。
和風喫茶に決まった蓮のクラスは、料理担当、接客担当、補充などの裏方に別れて作業を行うことになったのだが、料理のできない蓮は接客を担当することになり、今は数人で看板作りなどに着手している。

「えっと…、もう断ってるよ」

看板に絵具で色を塗りながら、蓮は困ったように微笑んだ。

「えー!断っちゃったの!?もったいない!なんでなんで」

「なんでって…、別に、蒼井のこと好きとかじゃないし…」

「付き合ってみればいいのに。蒼井くんすっごいお金持ちだよね。蓮ちゃん彼氏いるんだっけ?」

「か、彼氏は…いない…けど…」

教師の宮藤と付き合っているなど、当然言えるわけもない。
みんなの前で告白するなんて一体どういうつもりなのだろうかと、蓮は恨めし気に男子生徒と楽しそうに会話をしている蒼井を睨んだ。
散々宮藤に告白しまくっていた自分のことを考えれば告白するなとは言えないが、時と場所を考えてほしかった。

「やっぱり告白されると気になっちゃう?」

別の女子生徒が蓮の視線の先を見て、にんまりとからかうような笑みを浮かべた。
どうやら文化祭前の浮足立った生徒達には、他人の恋愛話というものが楽しくて仕方ないらしい。悪気はないのだろうが、困ったものだ。

「ぜんっぜん気になってない!それに、私…好きな人…他にいるし…」

「え?好きな人いるの?だれだれ?」

「ほんとに蒼井くん失恋ってこと?」

止まらない質問攻めに蓮はぶんぶんと首を横に振った。

「もう…!内緒…!みんなで私のことからかって楽しんでるでしょ!」

羞恥に顔を赤くしてぷりぷりと怒りだした蓮を見て、友人の女子生徒達が「ごめんごめん」と謝りながら宥めるように頭を撫でた。
そうして宥められつつもちらりと蒼井に視線を向けると、憎たらしくも蓮を見て口角を上げている。

むっかつく…!!




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