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突然蒼井から持ち掛けられた話に、蓮は目を丸くした。
「よく…意味が分からないんだけど…。先生の気持ちを確かめるってなに?私…もう先生にはっきり振られてるんだけど…。賭けるものが私っていうのも意味分かんないし」
怪訝な表情で疑問を口にすると、相変わらずの笑みを作っている蒼井へと視線を送る。
彼の顔からは真意がまるで読み取れない。
自分はこんなにも考えてる事を言い当てられるというのに、不公平ではないかと思えてくる。
「まぁ、聞けよ。俺はお前が宮藤なんかに泣かされてんの見るのも、いつまでもアイツの事引きずってんの見るのも嫌なんだよ。だからとっととケリをつけてもらいたいわけ」
「……どうして蒼井が嫌がるの…?」
「…鈍いのか?俺が勝負に勝ったら付き合ってほしいんだけど」
「付き合うって…、恋人ってこと…?蒼井…私のこと好きなの…?」
「そうだって言ったら、今すぐ付き合ってくれんのか?」
笑いながらそう口にする蒼井を見て、言葉の意味を理解しようと頭をフル回転させる。
蒼井が私を好き…?
嘘だ……。
「…私、まだ先生のこと好きだから…蒼井と付き合う気はないんだけど…」
「そうだろうな、だから勝負持ち掛けてるんだろ」
「えぇ〜…、なんなのその勝負って…」
「…宮藤の気持ちを確認する。宮藤がお前を選んだら、そっちの勝ち。選ばなかったら俺の勝ち。シンプルだろ?」
「待って待って!どうやって先生の気持ちを確認するの?私もう振られてるんだから、確認するまでもないよね?どう考えても蒼井の勝ちじゃん」
「さぁ、それはどうかな。人間追い詰められた時が一番本音を出しやすい。お前を振ったのが、教師だからって理由の可能性もあるだろ」
「……先生は、私に興味なんて最初からなかったよ」
言っていて自分で辛くなる。
気持ちを確認するまでもなく、自分に対する宮藤の気持ちなどはっきりしている。
落ち込んだように俯く蓮の姿に、蒼井は短く溜息を漏らした。
「…そんな顔すんなよ。少し強引な手を使う。これで無理なら、お前もきっぱり宮藤を諦められるだろ」
「…強引な手って…、先生に迷惑かかるような事はしないで」
「宮藤に迷惑はかけない」
「ほ、ほんとなの…?蒼井の言ってること、回りくどくてよく分かんない」
「わざと濁してるからな。で、どうする?試してみるか?」
「…何するか分からないのに、うんって言うと思う?」
「意外と賢いな」
「…ムカつくんですけど」
眉間に皺を寄せて膨れっ面で睨んでくる蓮を見て、蒼井は楽しそうに笑った。