2015-1-4 Sun 21:18
「怖いか......千鶴。」
「いいえ、土方さんと一緒なら。」
彼の顔は、私のほうを向いていない。だけど、わかる。
彼なら、私を必ず守ってくれると。
小さく彼の体が動いた。この状況を、切り抜ける?
そんなのは知らない。だけど、怖くない。
ついに私たちは、その一歩を踏み出した。
その刹那、目の前が反転する。
私と彼の体は、思いっきり地面に着地した。
「ちょっとおおおおカットオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
監督の声が響き渡る。照明が慌てて切り替えられた。
「ちょっと土方さん!!!!聞いてませんよ、右足からだすなんて!!!左足から踏み出すって打ち合わせしたじゃないですかあああああ!!!」
「うるせぇ、どっちでもいいだろ!というかなんでズッコケるんだよ!!」
「それは土方さんが台本通りにしなかったからですうううううう!!!」
今は劇場版の収録真っ最中、第一部のラストを飾るシーンの撮影が行われていた。
大勢の敵に二人肩を寄せ合わせて飛び込むシーン、そのタイミングが合わなかったせいで盛大にコケたのだ。
「さっきの風間さんとの戦いといい、土方さん少しアドリブきかせすぎです。ここはタイミングが大事なんですから!!しっかり左足からだしてくださいよ!?」
「左も右も関係ねぇだろ!少しは合わせやがれ!」
「何言ってるんですかああああああ!ここはヒロインに合わせるべきですうううううう!!!」