日が傾いてくると、蝉が活動を再開し始める。
日射しも少しは弱まって、そろそろ出かけてもいい頃かと、私は日傘を持って外に出た。

この村でできることといったら散歩くらいだ。
娯楽施設なんてあるわけないし、そもそも私はそういう場所が好きじゃない。
神社にでも行ってみようと歩いていると、勇介の家の前で、彼の母親に声を掛けられた。

「どこ行くん、美緒ちゃん」

「勉強飽きちゃったんで、散歩でもしようかと思って」

「ああ、そう。勇介もさっき買い物に出たで」

そう言われて、私もアイスでも買いに寄ろうかと店へ向かうことにした。

この村には商店が一件。
商店といってもスーパーのように何でもあるし、村には町に仕事に出ている人も多いのでそれで事足りている。

店に入ると、中には店のおばさんと勇介がいた。
おばさんはあらまぁと声を上げ、勇介は何でいるんだという顔をした。

「おまえ、勉強しにきたんとちゃうん?」

「息抜きよ」

アイスを買って外に出て、散歩だというと勇介も一緒に歩き出す。
早速アイスを食べながら山に向かっていると、早くも気温でぽたぽたと溶け出した。

「相変わらず食うの下手やな」

「うるさいな、二年くらいで上手くなるわけないでしょ」

「背も伸びとらんしな」

「嫌味ですか」

私が睨むと、勇介はしらっとした顔でコーラに口をつける。

そういえば、東京に行く前に身長を伸ばしてくる、なんて言ったような気がする。
こいつ、よくそんなちっちゃいこと覚えてたな。
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