翌日、相変わらずの暑さの中勉強していた、昼下がりのこと。
がらりと玄関の戸が開く音がして、こんにちはー、と声がした。

「……いらっしゃい」

出てみるとなぜか勇介が立っていて、こちらに手に持っていた袋を差し出してくる。

「スイカのお返し。じいちゃんとばあちゃんは?」

「ありがとう。今、二人とも畑行ってる」

受け取って中を見ると、とうもろこしが入っていた。
今日もまた日射しが強かったのだろう、勇介は邪魔そうに汗で張り付いた前髪をよける。

「入って。暑かったでしょ」

「あー……どうも」

とりあえず勇介を中に入れて、台所にとうもろこしを持って行く。

どうしよう。
家に上げちゃったけど、久しぶりに会ったこともあって妙に緊張するというか、雰囲気がぎこちないというか。
何をしゃべればいいんだと思いながら、麦茶を入れて居間へ戻ると、勇介は私の参考書を見ていた。

「おまえ、こんなん勉強してるん?」

麦茶を置くと、嫌そうな顔をして私を見上げる。

「受験生だもん。そっちもしてるでしょ」

「さぁ。知らん」

知らんって。勉強してないというのは本当なのか、と呆れながら私は腰を下ろした。

「みんな、元気?」

麦茶を一口飲んで、私は口を開く。

「元気やな。おまえんとこの友は?」

「元気だよ。毎日部活してる」

友とは弟のことだ。
勇介とは男の子同士で仲が良かった。

ぽつぽつと話をしているうちに、なんとなく以前のような空気が思い出されてきた。
十五年間一緒にいたのだ。
二年半離れてたって、一緒にいた期間のほうが断然長い。

勇介が、おじいちゃんの団扇を手にとってぱたぱたと顔を扇ぐ。
どこからかやってきた猫が、庭の塀の上でにゃあ、と声を上げた。
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