紳士なあの人、再来









-平和な二日目-






―――嗚呼、また今日もか。

早朝から鳴りだす携帯電話。

そこに送られてくるのは沢山のメールと着信。

そのどの内容も、皆皆同じ。



『青の学園≠ネんて不良学校は危ない』

『すぐにこっちの学校に帰ってきて』



どれも同じ。同じ。同じ。同じ。


自分が他の人から好かれているのは嬉しい。

自分の身を心配してくれているのも嬉しい。

だけども、

分かってない。

ううん、

彼らは知らないんだ。


私が何故青の学園に転校したのか。

確かに親の転勤という理由もあるが、

本当は自分自信にもっと別な理由があるのを。

彼らは知らない。

だから、くれるのだ。

情を、心配を、友情を、その全てを。


「『ごめんなさい。

  そっちの学校には帰れません。

  案外青の学園もいい所なんです。

  心配してくれるだけ嬉しいです』っと……」


送信のボタンを押すと、

風花はパタンと携帯を閉じる。


(普通だったら、

転校なんてしたらすぐに縁切れちゃうのに……)


皆の気持ちは嬉しい。

だけども、嬉しいだけなのだ。


(…私が青の学園に転校した理由、

それは……決して普通の人には言えない訳がある、から、)


だから、私は、










「おっはよー!」


そう元気に言えば、

クラスメイトは皆笑顔で返事をしてくれる。

不良学校なんて周りから言われてるけど、

蓋を開けてみれば中身はそうでもない。

ただ皆

戦う事が他の人よりもちょっぴり好きで、

それでいて戦う事がちょっぴり得意なだけ。

本当は転校なんてしてきた私を

周りは快く思ってくれないかもしれない。

だから、

転校してくる前はイジメ≠ノあう事さえ

覚悟していた。

だけども、皆優しい。

二日目にして、皆と友達になれた。

その中でも特別仲良くなれそうな友達も見つけた。

イジメなんて無い。

至って普通な学校だ。


風花は皆に元気よく挨拶をしながら自分の席につく。

そこで、

ふと一つの空いた席に目がいく。

そう、その席は、

生徒会長から謹慎をくらっているセナの席だった。




―――その刹那、

脳裏に思い出される惨劇。

赤い紅い血に染まった図書室。

生臭い、戦場の匂い。


「っ…………」


くらりと、足元がぐらつく。

ああ、これは少しやばい……

そう思った瞬間には、

もう勢いよく額を地面にぶつけていて。


すぐ隣からはか細い悲鳴が上がり、

視線は一気に私へと注がれる。


それらを全部感じとりながらも、

私は、

ゆっくりと気を失っていった。









「……何事ですか?」


キャーキャーと悲鳴の聞こえる教室を覗けば、

そこには意識を失った一人の少女が

額から血を流して倒れていた。


「……!あの子は………」


確か昨日図書室に居た……、


「ラッ、ライ生徒副会長!」

「ちょっとどいてくださいね」


人混みをかきわけて少女の元へ向かうライ。

ライは少女の元へたどり着くと、

やがてそっと手首を掴んだ。


「…脈は正常ですね。でも出血が酷い……」


ハンカチで額を押さえると、

ライは勢いよく少女の事を抱えた。

所謂――『お姫様抱っこ』の状態だ。


その様子に、

周りに居た他の少女たちが一斉に黄色い声を零したのは

言うまでもなく、

ライはきんきんとする耳を塞ぎたい衝動にかられた。


しかし、

今は少女の事を保険室に運ぶのが先決。

そう判断したライは、

少女を抱えてそのまま廊下を歩いて行った。


野次馬が益々増える、増える。

そんな様子をたまたま廊下に居あわせたとある二人組は、

こっそりと悪戯な笑みを零した。


そしてそんなライをからかうべく、

こっそりライの後ろを付いていったのだった。














 ▼後書きのコーナー

 最後の二人は勿論あの人達ですw

 さて、初期の設定では青の学園は
 もう本当に柄の悪い人達ばかり集めた学校に
 しようと思っていたんですけども、

 あえての、
 あえてのその逆はどうだという発想に
 何故か辿りついて、
 こうなった訳です!
 何故こうなったww

 しかしライが非常に紳士ですね。
 紳士キャラ……
 個人的には凄く大好きです!!(本音出ちゃいましたw)





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