輪 廻 











「ハァっ!」


がきん!!


「……ふ、

 ラルトの適合者といっても、

 所詮はその程度ですか?」


余裕ぶいた、笑み。


「…あんたが、強過ぎるだけだろうが……っ!!」

「そうでしょうか?

 ラルトの適合者の方が、

 私の様な一般人よりかは

 遙かに強い力を持っていると思いますがね」

「……あんた、

 自分が一般人≠セと言いきるつもりか?」

「………、」


ぴくり。

白蓮の肩が―――小さく揺れる。


「一般人¢且閧ネら

 俺は数秒で倒せる自信が……ある。

 だが、あんただけは違う。

 あんた一体………

 
 何者なんだ?」


「…………」


二人の間には、沈黙。

重苦しい沈黙。


「……貴方には、関係ありません」


ふわり。

空気が漆黒の少年、もとい

カインの髪を揺らす。


「……!!」


居ない。

目の前に居たはずの白蓮が、

居 な い 。




ぐちゃり……!!




……嫌な音が耳に届いたと同時に、

カインの背中には鋭い痛みが走った。


「っ………!!」

「…私はここですよ?」


がきんっ!!


再び振り下ろされた刀を

なんとか剣で受け止めたカインだが、

額には大量の汗、

床には大量の血。

それらは明らかに

背中に負った傷がとても深いという事を

物語っていた。


「その傷じゃあ益々私を倒す事は

 難しくなりましたね」


クスリ。

頬に返り血を付けた白蓮が

残酷にも―――甘美に笑う。


「っ………!!」


足元が、ふらつく。

手足が、痺れる。

視界が、ぼやける。


「…それでは私は

 千歳様を追いかけるとしますか。

 貴方は精々そこで

 大人しく寝ていてください。

 いずれ、

 何名かの腕利きの軍人が来るはずですから」

「……!

 お前、軍部と繋がりが……!!」

「……まあ、千歳様のお兄様が

 軍人ですからね。

 多少の繋がりならありますが」

「……っ………!」


カインは――

悔しそうに眉をひそめる。


白蓮は――

ニコリと、屈託のない笑みを浮かべる。


二人の表情はなんとも対称的だった。


(…まずい、

 このままあの男をアベル達の元へ

 行かせたら………!)


遠のき始める意識に逆らいながら、

カインは思考を無理矢理にも

働かせる。


(……くそ、なんでもいい。

 なんでもいいからこいつの足どめを

 俺がしないと………っ!!)


……カインは、

自らの主、兼養父である創造の神レイラに味方する

ラルトの適合者の中では、

最年長。

つまりはリーダー格であり、

他のラルトの適合者達の長兄なのだ。


そんな位置にいる彼が、

責任感が強くないはずはない。


ここで、足どめをしなければと思う感情は

誰よりも強く―――、





がしっ!!





………その気力だけで、

なんとか、白蓮の腕を掴む事ができた。



「………待てよ、お前………っ」

「……煩いですね、

 それとも私の手で直々に

 大人しくさせないといけませんかね――」







廻る









「………え?」

「―――っ!!!」


カインの耳には、幼い男の子の声。



ぐるぐる 廻る 廻る 廻る

廻るんだあ




「…この、声は………、」

「……っ

 黙ってください!

 今は貴方の出る幕じゃあありません!」



…え? なんでえ?

ボク 久しぶりのラルトの適合者に 会えて

凄く 嬉しい のに ……




「……まさか、」



そう、 その まさか

ボクはねえ この人のねえ、




「っっもう黙って―――」







専属の 『ラルトの宝石』 なんだよお







「―――っ『輪廻』!!」


白蓮が、珍しく――大声を出す。


「……まさかお前は、

 ラルトの宝石の第一石『輪廻』の適合者―――」




ぐちゃり………。





「―――が……ぁ………」


再度舞い上がる、大量の血。


「……『輪廻』、

 貴方のせいで私の正体が

 ばれちゃったじゃないですか」



別に いい じゃん

どうせ 今回=@も

レイラの敵に 廻るんで しょう ?

なら

早いとこ 今回の=@ラルトの適合者に

挨拶して おいた方が よかったんじゃ なあい ?




「……でもだからと言って

 千歳様を救いださなければいけない時に、

 こういう事をされては

 困ります」



…… ごめん 白蓮

でも 久しぶりの ラルトの適合者 だった から

嬉しくって ……




「……次からは、気をつけてくださいね」



はー い !




ちゃきり。

刀を鞘に納める――音。


「…待、て…………」

「……貴方もだいぶしつこいですね」


不機嫌そうに眉をひそめ、

床に這いつくばるカインを

悪魔でも、見下す。


「あ…んた…が……

 ラルトの適合者の……中でも……大罪人の……、」

「…………だったら

 なんだって言うんですか?」


その瞳は―――酷く冷めていて、

それこそがまさしく

創造の神、レイラに反旗を翻している

ラルトの第一石の適合者だという事を

残酷にも象徴づけていた。



どたどたどた!



こちらに向かってくる――いくつもの足音。


「……来ましたか」


白蓮がそうつぶやいたとほぼ同時に、

扉は強引にも開かれ

そこには数人の軍人を引き連れた、

軍服を着こなしている一人の少年が居た。


「……白蓮、

 千歳を連れ去ろうとした輩は

 こいつで間違いねェな?」

「えぇ。

 わざわざ来てくださって

 申し訳ありません」

「嫌、

 ニホンの治安を守るのも俺ら軍人の役目だ。

 お前のおかげで不法侵入者を

 捕まえる事ができて、

 俺としちゃァ一石二鳥だ」

「…そうですか。

 ならお言葉に甘えて、

 私は引き続きもう一人の不法侵入者と

 連れ去られた千歳様を探しに行きます」

「あァ、頼んだ」

「…あぁそれと、

 そこに転がっている不法侵入者ですが、

 どうやらラルトの適合者みたいなので、

 一応は注意してください」

「……こいつも=A

 ラルトの適合者…………」
 

茶髪をなびかせる少年は、

白蓮と同じく冷めた目つきで

カインの事を――見下す。


「……お前ら、

 こいつを直ちに捕えて

 軍部の地下に連れて行くぞ」

「「「はっ!!」」」


カインが倒れ込んでいる地面には――

紫色の魔法陣が、浮かぶ。


「…では私は行ってきます、



 空海@l――…………」




「………な……!!」


微かに意識のあるカインが――反応する。


「軍部の…空海って…言ったら……!

 元、青龍家の……!」

「……なんだ。

 お前、俺の事ァ知ってるのか」


少年は――にやりと笑って見せる。


「俺ァ元、青龍家の嫡子。

 今は青龍家とは縁を切ってるがな。

 だから名字はない。今はただの――空海。

 だけど………な、」


少年、もとい空海の顔には――

暗い影が落ちる。


「……名字は無くなっても、

 名字はあいつと違くなっても、

 それでも、

 俺はあいつの、『千歳』の、」


ダンっ………!


…いつ懐から取り出したのか、

空海の手に握られている銃からは

鉛玉が一つ、

カインの頬をかすめていた。


「……たった一人の兄≠ネんだよ……!」


その顔は、切なそうに歪められていた。







「……行くぞ、お前ら」

「「「はっ」」」


空海は、踵を返す。

彼らの足元には、滴る血の華を、

点々と咲かせていた。



「…幾つか前に

 成人式を終わらせられた空海様ですが、

 やはり、

 私から見たらまだまだ子供=v


珍しく感情的になっていた

先ほどの空海の様子を脳裏に浮かべながら――

白蓮は、

窓に足をかける。


「……さて、

 いい加減私の主も探しにいかなくては。

 もう一人の不法侵入者に

 何をされているか

 分かりませんからね」



刹那、


白蓮の姿は、もうそこには無かった。


そこに残されたのは、

点々と咲く赤い華と

戦いの跡だけだった。



 







 ▼後書き

 今度はカインのターンのつもりで
 書いたはずな、の、に………。

 …いつの間にか白蓮のターンに←
 しかもまさかの新キャラ登場で
 なんか影が思ったよりも
 薄くなっちゃったし。笑
 しかもカインの扱いが相当酷い………。

 …カイン、本当は強いんですよ。
 ただ白蓮が強過ぎただけなんです!





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