本当に?












「……千歳様が帰ってこられない」


ぽつり。

そう小さく呟くのは、

少女の従者である白蓮という少年。


「……まさかどこかの輩に

 喧嘩でもふっかけられているのだろうか?」


しかし、

それはそれで

その輩は少女の手によって

早々に返り討ちにされているはずだ。


その考えをいち早く切り捨てた白蓮。

しかし、

その考えはあながち間違ってもなく、

現に少女は少し前に、

とある軍人によって喧嘩をふっかけられていた。


「……本当に、遅い」


少女は強い。

しかし―――少女は『青龍家』の血を引く者。

多くの刺客に、

常に狙われているのだ。


「…やはり私がからかったのが

 悪かったのでしょうか」


ぽつりと呟く白蓮。


「………でもそれはやはり

 千歳様があんなにも可愛らしいのが

 悪いですし」


悪魔でも自分は悪くないと、

言い聞かせる白蓮。


実際に、

少女はとても可愛らしかった。

少女の兄と姉が容姿端麗なのだ。

当然、

その二人の妹が容姿端麗じゃない訳が――

ないはずが、ない。


「……でも、

 本当に帰ってこられるのが遅い」


白蓮は心配性だった。

しかし、


「……嫌な予感がする」


白蓮には『訳』があり、

普通の者とは格段に多くの年を今まで重ねてきた。


「……………」


白蓮の瞳は、もう揺らいでいなかった。


「………千歳様を、探そう」


腰に差していある脇差と刀をゆらりと撫でる。

嫌な予感は益々膨らむ。

血の様に赤い夕焼けが、

自分の脳裏に嫌な予感を次々と繰り広げさせる。


「…………」


駆け出す。

何処に?

街に。

何故?

主を、少女を探しに。



ただ、ただ、走る。








「……!あれは………、」


足が、止まる。


「……これは千歳様の簪……」


とある立派な木の下、

それは、無造作に落とされていた。


「……………」


嫌な予感が、現実になる。


「………っ!!」


再び、駆け出す。

息が乱れる。足が悲鳴を上げる。


しかし、

そんなものは無視し、とにかく走り続けた。








何のために?

主を、少女を見つけるために。

何故?

自分は少女の忠実なる従者だから。



本当に? 本当に。

本当に? 本当に。

本当に? ………本当に。

本当に? ……本当は、










『自らの主へと抱く、この≠フ為に
、』











ただただ夕焼けで紅に染まる街を、

走り続けた。
















 ▼後書き

 白蓮が切なすぎる件について←
 
 もう白蓮、
 お前本当健気すぎだろ……っ!!
 書いてて本当
 切なかったです←





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