67:1(+2)→3(+3)

「あ!しのぶちゃん!蜜璃ちゃん!」

約束の場所である中央広場に二人の姿が見え、嬉しさを抑えきれず駆け足で近づく。

「桜さんお久しぶりです」
「会いたかったわ〜」

相も変わらず美しさと可愛らしさを放つ二人は、前回までの学ランのような服装ではなく、私服…着物姿だった。しのぶちゃんはすみれ色のシンプルな生地で昔からあるthe日本の着物!と言った雰囲気。蜜璃ちゃんは桃色と白色の可愛らしい生地で、海外の影響を受け始めた日本ならではの大正レトロな雰囲気。タイプは違うけれど、二人にとてもよく似合っていた。

「今日は着物なんだね?しのぶちゃんは純和風がすごく似合ってるし、蜜璃ちゃんはレトロで可愛いね」
「レトロ…?」

ついうっかり口から出た言葉に、蜜璃ちゃんが首を傾げる。私からしたら昔風でも、彼女達からしたら流行の最先端だ。

「あ、気にしないで。可愛いって意味だから」
「桜さん。先ほど走ってくるときに見えましたけど、その脚絆、新しく買われたのですか?」

しのぶちゃんに答えるように、着物を捲り上げ脚絆を見せる。

「これ、可愛いでしょ〜?葵枝さんが私に作ってくれた物なんだ」
「手作りでしたか……素敵ですね」
「でしょでしょ」

やっぱり同世代の友達っていいなと幸せをかみしめていると、しのぶちゃんが、ふいに私の後ろを覗いた。

「あら、桜さん、この子もしかして…」

しのぶちゃんの言葉に振り返ると、炭治郎君がぽつんと立っていたので、「そうそう!この子があの竈門家長男の」と言いながら、両手で炭治郎君を見せつけるようにポーズを取り、気合いを込めて紹介しよう

「初めまして竈門炭治郎です。お二人の事は桜さんから伺っています」

としたら、炭治郎君は自分でしてました。少年らしさを残しつつ礼儀正しく頭を下げ挨拶する姿はとても好感が持てます。

「(きゅん。子供なのにしかっりしてて、えらいわ〜)私は甘露寺蜜璃。よろしくね〜」
「胡蝶しのぶと申します。こちらも竈門君のお話は桜さんから沢山聞いてますよ」
「え、どんな風にですか」

かぶり気味に質問をする炭治郎君。行き場をなくした両手をぶらぶらさせながら、三人のやり取りを黙って眺める事にした。

「年下なのにとても頼りになる、家族思いの優しい子だと」
「お話の中で炭治郎君の事が一番出てきたの。いい子だよ〜って笑う桜ちゃんはとっても炭治郎君の事大好きなのねって分かってきゅんきんしたわ」
「そ、そうなんですか……」

美少女二人に囲まれた炭治郎君は、恥ずかしいのか少し頬を赤らめた。思春期だね〜。

「あら」
「きゅん」






その後は東の町にある、洋食中心のおしゃれなカフェに入ってお食事とお話を楽しむことにした。
炭治郎君は持ち前の人懐っこさと人を惹きつける明るさと優しさで、出会ったばかりの二人にすぐに馴染み、好感を得ていた。さすが炭治郎様です。
私の事については、《私が未来から来た事》《花を咲かす能力の事》は話さずに、《炭治郎君と竈門家の皆が命の恩人なのは、家がなく放浪していた時にけがをして動けず、行き倒れている所を助けてもらった。それから居候している》と表現を変えて話していたので、その件には直節触れないようにした。しのぶちゃんも蜜璃ちゃんも信頼に足る人物というのは、短い付き合いの中でも十分に分かったのだけれど、事情が特殊なだけに、あまり言いふらすものではないと判断したためだ。少しの後ろめたさを感じつつも、四人での会話はとても楽しく、あっという間に時間は過ぎていった。



「桜さん、この間甘露寺さんからお聞きしました…。甘露寺さんと出会った時の事」

食事後のお茶を飲んでいる最中、しのぶちゃんが迷った末に切り出しましたといった、苦しそうな表情で言った。

「あ〜…うん」

この話題になると過剰反応&プチ説教してくる炭治郎君を横目で気にしつつ、曖昧な相槌をうつ。その反応にしのぶちゃんは何を勘違いしたのか、より眉を寄せ申しわけなさそうにする。

「薬屋で別れた後だったんですね…。すみません。私があの時見送りの者を付けていれば」
「え!何言ってるの?!しのぶちゃんのせいじゃないよ!?」
「ですが…」
「変態おじさんが全部悪いんだから!それに、蜜璃ちゃんが助けてくれたし!ねっ!」

蜜璃ちゃんを見れば、蜜璃ちゃんは力こぶを作る仕草をして、桜ちゃんのピンチには何度だって駆けつけるわ〜!とニコリと笑った。頼もしい限りだ。

「それに、蜜璃ちゃんに出会えたからある意味良かったかも…?」

しのぶちゃんがこれ以上責任を感じないよう気を使った発言が、炭治郎君の怒りポイントに触れたのか瞬時に鋭い反応を返してくる。

「良くない。それとこれとは別です」
「…はい」
「すぐに一人で隣町に出かけようとするし、今回も一人で来ようとしていたし…。もっと危機感を持ってください」

炭治郎君の心配半分、説教半分の言葉に、しのぶちゃんが小さく拍手をした。

「竈門君素晴らしいです。そのまましっかり見張っていてください」
「はい!任せてください」
「私も全力で力添えします。もし桜さんに何かあれば、相手に毒を食らわせた後、尋問そして拷問して二度と帰って来れない僻地へと放り投げますので安心してください」
「冗談でも心つよ……って嘘の匂いがしない!!!」

「桜ちゃん愛されてるのね〜」
「これは愛されているというより、子供扱いのような…?」








膨れたお腹をさすりながら、お店の外に出れば時刻は昼過ぎというより夕刻一歩手前といった空模様だった。

「炭治郎君初めての洋食どうだった?」
「味つけがしっかりしていて、おいしかったです」
「良かった。あ、さっきお店の人にレシピ聞いたから、明日食材買って皆に作ってあげようか」
「いいですね。手伝います」
「ふふ、お土産のパンケーキといちごジャムもつけちゃおう」
「竹雄と茂には食べすぎないように注意しないとな」
「あはは、だね」

「桜さんと竈門君はこれから花と炭を売りに行かれるのですよね?」

炭治郎君と話しながら、お店の中に持って入れなかった、花と炭が沢山入った籠や荷物を背負う準備をしていると、しのぶちゃんが話しかけてきた。

「うん。来たままだったから、宿に他の荷物を置いてから行こうかなって」
「なら、私達もお手伝いするわ」

蜜璃ちゃんの提案に、しのぶちゃんも頷いて同意を示す。私は炭治郎君と顔を見合わせた。

「そんないいですよ。俺たちだけで大丈夫です」
「そうそう、結構な量もあるし」
「この後は仕事も用事もありませんから、手伝わせて下さい。それに稼ぎたいと言ってましたよね」
「四人でやればきっとあっという間よ」

再度炭治郎君と顔を合わせて、目線でだけでやり取りをし、優しさに甘えさせてもらう事となった。美少女の売り子が二人加わったおかげで、いつもの半分の時間で完売する事が出来たし、その後も一緒に夕飯を食べ、平和で楽しい一日が終了した。





※大正コソコソ噂話※
タイプの違う美少女三人に囲まれるショタ治郎さんの回でした。


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