18:君に届け

「だからね、オレオレ!なんて電話がかかってきたら、それは絶対に詐欺だからね!」
「はぁ。うちに電話なんて高価なものはないけどな」
「だから家族で合言葉をあらかじめ決めておくの!なにがいい?」
「なんでもいいよ…」
「真剣にきいて!全ては竹雄くんにかかっているから!」

心底面倒くさいって感情を隠しはせずとも、私の特殊詐欺講座を聞いてくれる竹雄くんはとてもいい子である。けれど、これはとても重要なことなのだ。いい人すぎる竈門家が今後同情系特殊詐欺に騙されないように、事前教育が必要と判断。今こそ未来での知識が真に役立つ時である。


「あのさー…、なんで俺なの?」

唇の先を尖らせながらそっぽを向く竹雄くんの顔はほんのり赤く染まっている。

「なんでって、炭治郎君はしっかりしてるけど、意外に天然な所あるでしょ?だから家族に悲劇が!って言われたら、すぐ信じちゃいそうだし、犯人がお涙頂戴ものの身の上話でもしたら、犯人さえに同情しちゃいそうな程優しい子じゃない?」

葵枝さんも天然な所あるし、禰豆子ちゃんもしっかりしているけど、やっぱりここは男の子である竹雄くんに頼みたい。その意味を込めて熱意のこもった視線を送るが、

「また兄ちゃんかよ…」

と、一気に機嫌が急降下したように、ふてくされた表情になってしまった。あれ、何か地雷踏んじゃった?怒らせた?と焦り、余計に口を滑らせる。

「そ、それにツンデレ属性は、簡単には騙されなさそうだから!」
「ツンデレ?」
「あ、いや、別に…」

ここでツンデレを説明をしたら、余計に機嫌が悪くなりそうなので言葉を濁しておく。


「まぁいいけどさー…。じゃぁ、合言葉は、朴念仁桜ねーちゃんな!」
「えっ…それってどういう意味??」
「そのまんまの意味だよ!!」

そう叫んだ竹雄くんは真っ赤な顔のまま走り去っていった。

「まって竹雄くん!……いっちゃった」

昔の言葉なのか、朴念仁って言葉は知らないから、どんな意味か教えて欲しかっただけなんだけど。そう思いながら、炭治郎君のお手伝いにでも行こうと後ろを振り向くと

「……!!!」

障子の隙間から、葵枝さんが家政婦は見た状態でのぞいていた。びっくりしすぎて固まっていると、葵枝さんは、ふふっと笑って何も言わず去っていく。その後、禰豆子ちゃんに話をすれば、葵枝さんと同じ様にふふっと笑い去っていった。

誰か朴念仁の意味を教えてください…。



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