15:柴犬

次の日。

「炭を町に売りにいく?」
「はい、山を降りた先にある町まで」
「炭治郎君と、竹雄くんと花子ちゃんの3人で?」

今日は雪が積もってないから、荷車で炭を売りに行くのだと戸口に立つ3人と、見送る家族。子供だけで売りに行くのかと驚けば、いつもの事だよ、と不思議そうに返された。
そういえば私があの町にいた時も、炭治郎君は一人で炭を売りにきていたんだっけ。と思い出す。

(え、えらすぎる……)

まだ小中学生ぐらいの子供なのに(花子ちゃんはどちらかというと、町に出掛けたい気持ちの方が強そうだけど)。
お父さんが最近亡くなったという話は聞いていたけど…。そうだよね……、生活費は自分達で稼ぐしかないもんね。


「じゃあ、私も着いてく。町で仕事も探し始めたいし。少しでも出来ることお手伝いするよ!」
「だめです!まだ、嵯峨山じいさんから、許可が出ていません」
「大丈夫だよ。昨日も普通に動けたし、傷ももう痛くないよ」


お願い役に立ちたいの!とお願しても、炭治郎君はむん!として、頭を縦にはふらず。かなり渋ってみたけど、命の恩人である炭治郎君には、特に嫌われたくないので大人しく見送ることにした。


「気を付けて…。崖とか岩崩に気を付けてね」
「大丈夫です、この山は知り尽くしているので」
「ちり紙もった?」
「持ちましたよ」
「夕飯までには帰って来る?」
「夕方には戻ります」
「やっぱり一緒にいk」
「いかないです」

しょんぼり顔で炭治郎君と話していると、後ろの方でこそこそと話声が聞こえてきた。

「桜さんが幼子みたいに見える…」
「どっちが年上なんだかな…」
「なんだろう、花子あの光景見たことある…!」
「あれだよ!飼い主が出かけるときの柴犬だ!」
「に、似てる!柴犬の悲しそうな顔と桜おねえちゃんがかぶる!」
「あれ?今クゥーンって聞こえてきた気がする…」

……禰豆子ちゃん、竹雄くん、花子ちゃん、茂くん、ばっちり聞こえてるからね?人って自分の話されてると、聴力が二倍になる生き物なんだからね?

「ねぇねぇ」
「ん?」

くいっ、と袖をひっぱられ下を見ると六太くんが私を見上げていた。
しゃがみ、目線を合わせると両手に握りしめていたモノを、私の手の中に落とす。

「ぼくのどんぐりあげるから、げんきだちて?」

それは、すごく大きいどんぐりだった。ライチ程の大きさがあって、綺麗にみがかれつやりと輝いている。昨日、六太君が紹介してくれた宝物入れ(炭治郎君手製)に入っていたのを見た気がする。

「……あ、ありがとう?」

子供の考えの読めない突飛な行動と、幼子扱いれされてる空気を感じとり言葉が少しつまってしまう。けど、まぁいいかと笑いながら、どんぐりを受けとる。子供が自分の宝物をくれるって事は、相当好かれている証拠だと思うので。
……そうだよね?そーゆうことでいいんだよね?六太くん…?



お礼を言いながら六太くんを抱きあげ、皆で炭治郎君達を見送った。見えなくなるまで手を振り、いってっらしゃーいと見送る。この光景が理想の家族像そのままで、ここに居場所を与えられた幸せをかみしめながら、手を振り続けた。



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