14:優しい日々

竈門家で目を覚ましてから、ちょうど十日目の今日。医者の嵯峨山さんに、激しい動きさえしなければ日常生活は大丈夫でしょう。と許可をもらい、早速恩返しするぞ!と、気合十分に料理のお手伝いに取りかかった。

まあ、全然役に立たなかったけどね!!だって、未来と何かもが違うんだもん…。未来では、料理に火を使わないし(久しぶりに生の火を見た)、タッチ1つで全ての工程が終わっちゃうから、ごはん一食分作るのに、準備含めて2時間近くかかるなんて思いもしなかった。昔の人は料理1つにこんなに手間暇かけて作っていたんだなー…、と感心もしつつ、頑張って仕事を覚えます!とやる気に満ち溢れた新入社員のように、意気込み

……を、一緒に縁側で休憩しながらおにぎりを食べる炭治郎君に語りかけていた。

「未来と違って料理ってすごく大変だけど、食べることへのありがたみが増したというか、色々考えさせられたよ。いつかは、炭治郎君の作る美味しいおにぎりを超えれるように頑張るね!てか、本当に美味しいね?!」
「炭焼小屋の長男なので火加減なら任してください!」
「さすが長男です!」
キラーンと効果音がつくキメ顔の炭治郎君を冗談風におだてる。
楽しく会話を続けていると、「お兄ちゃん〜!」と、炭治郎君を呼ぶ声が聞こえた。二人で同時に振り向くと、こちらに向かって歩いてくる禰豆子ちゃんと竹籠を背負った竹雄くんが見えた。

「明日の炭、準備できたぜー」

竹雄くんはそう言って竹籠を地面に置いて、俺も!と、縁側に置いてあるおにぎりを食べ始めた。
今日も天使のように可愛らしい禰豆子ちゃんは、寝かしつけていたのか六太くんをおんぶしている。

「ありがとう、竹雄、禰豆子」
「いいよ。あとで一緒に薪割ってくれればさ」
「分かったよ。炭焼きが終った後でな」
「禰豆子ちゃんも休憩しなよ。おんぶ変わるよ?」

すやすやと寝息をたてる六太くんを、起こさないように優しく撫でる。母性本能が擽られるな〜と、ほわほわしていると、禰豆子ちゃんはそんな私を見てなんだか嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます。私は大丈夫です。けど、お母さんの洗濯とかのお手伝いしてもらえると助かります」
「任せて!」

残っていた最後の一口をペロリと平らげ、葵枝さんの元へとダッシュ!要請には迅速に対応します!

「炭治郎君おにぎりありがとう!また後でね!」
「桜さんすみません、母さんの手伝いお願いします。あと、今日の夜、犬の半妖と現代の女性が戦国時代を冒険する話の続き楽しみにしてますね」


目覚めてから今日までは傷に障るからと布団から一歩たりとも動かせてもらえなかった。私は早く恩返ししたいし、手伝いをして役に立ちたかったのだけれど、予想以上に頑固な炭治郎君に、だめです!と許可をもらえず。
ならばと、布団の上でも出来る未来の話や漫画、ゲーム、技術の話をイラストと共に語れば予想以上に食いついてくれて、毎日というより毎時間隙間があればせがまれるようになった。

(正直、必要とされているようですごく、すごく嬉しい)

皆の楽しそうな笑顔を思い浮かべてだらしなく緩んだ頬を、引き締めるように手で揉む。

「昨日の屈辱戦!トランプの大富豪もな〜!」
「私は、鬼の女の子が新撰組と恋愛する話の続きがいいです!」
「順番でねー!」

竹雄くんと禰豆子ちゃんにも返事をして、葵枝さんの元へと向かう。なんだか、なにかを忘れているような気もするけれど、今を頑張ろうと気合いを込めた。



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