135:大騒ぎの日常

「やっぱり無理ぃいいいい!人間すぐには変われないってぇえええ!!もうこれ以上修業したら、死ぬと思うので!!死ぬと思うので!!!」
「これ!善逸!これしきの事で逃げるでない!まだ始まったばかりじゃ!!木から降りてくるんじゃ!」
「おいカス!!師匠の手を煩わせるんじゃねぇ!!ふざけんじゃねぇぞ!!」
「ちょっと!獪岳さん!それ投げたら駄目なやつ!!善逸くんに本当に当たったらどうするの?!」
「当ててるんだよ!!俺と師匠の邪魔をするカスは死ね!」
「ぎゃぁああ!!痛いぃぃ!!」
「善逸くん大丈夫?!とりあえず降りてきて手当しよう?!」
「善逸降りてきて修業の続きじゃ!!」
「師匠、あのカスなんてほっときましょう!おい、カス降りてこい!!そしてここを出ていけ!!」


善逸くんが弟子入りしてから早一月以上。3人だった頃と比べて確実に騒がしくなった日々を過ごしています。……えぇ。竈門家の時とは違った意味で、本当に騒がしい日々を……。


「桜ちゃんの手料理毎日食べれるなんて、ふへへ、幸せだな。なんだか俺達夫婦みたいだね」
「おいカス、食事くらい黙ってくえよ!うるせぇんだよ!」
「獪岳さんいいじゃない。食事を楽しみながら仲良く会話しようよ?ほら、獪岳さんもお話しよ」
「えへへ。桜ちゃん、これ美味しいね」
「ザコ、お前が好きなようにさせ過ぎなんだよ!こいつがつけあがるだろ?!」
「獪岳、良いではないか。食事は楽しんでなんぼのもんじゃ」
「ちっ!カスが!」
「ぎゃっ!桜ちゃん、獪岳が恐いよぉ〜」
「善逸くんさすがにそんなにくっついたら、ご飯食べれないから」
「いい加減にしろカス!」


善逸くんは良く言えばムードメーカ、悪く言ってしまうとトラブルメーカーのような起爆剤として私達の生活を激変させた。


「もう無理!!もう無理っ!!もう帰るぅ!!!」
「善逸、これ!!どこ行くんじゃ!!」
「師匠!!」
「獪岳すまんの!桜と修業しててくれ。こりゃぁああ善逸!!」
「ちっ!……毎回邪魔しやがって」
「まぁまぁ。善逸くんも夜中一人で修業して頑張ってるみたいだし」
「一人で修業しても、今ここで逃げてたら意味ないだろうが」
「人には頑張れるペースがあるからさ。ほら、私と手合わせしない?左腕力いっぱい使うから。ね?」


善逸くんが騒ぎ出すと、桑島さんが善逸くんに付きっきりになり、それに獪岳さんがブチ切れ、私が獪岳さんを宥める。……といった構図が、毎回の定番となっている。

大騒ぎの理由は、ほぼ善逸くんと獪岳さんの二人なんだけど、この二人は相性がとにかく良くない。水と油というか、足して割るとちょうどいいというか、正反対の性質を持つからこそ、タイミングが良ければ仲良くなれたりもするタイプだとは思うのだけれど、今の所その兆しはなく。
私と桑島さんで何度か、仲良し大作戦を決行してみたけれど、結果は著しくない。
けれど、絶対に仲が悪いのかと言えばそうでもなくて……。


「獪岳あのさ」
「………」
「獪岳!」
「勝手に呼び捨てにしてんじゃねぇよカスが!」
「ひぃ!!」
「……で、なんだよ」
「桜ちゃんのおにぎり持ってきたから休憩しない?もう半日食べてないだろ?」
「ちっ。…よこせ」
「………」
「………」
「……獪岳は凄いよな」
「は?」
「ひぃ!いちいち睨むなよぉ〜!」
「はぁ。…お前は本当にうるさいな」


善逸くんは、獪岳さんを嫌いだと言いつつ、直向きで努力家な所をとても尊敬している。


「うわーーん!!!もうこれ足折れてるって!折れてるって!」
「折れてるわけないだろっ?!さっさと歩けやカス!日が暮れるだろうが!」
「むりむりむり!痛すぎて歩けないよ!!ぐずっ!爺ちゃん、桜ちゃんたすけてぇ!!ずび!」
「…………」
「痛い、痛い〜!!ずび」
「………っはぁーー!おい!カス!!!」
「ぐずん。うん?」
「っち!つかまれ!!!」
「……おんぶしてくれんの?」
「はやく帰らないと、師匠が待ってるからな!今回限りだ!!はやくしろカス!」
「……ありがとう獪岳!!」
「うるせぇ!!耳元で叫ぶな!殺すぞ!」


獪岳さんも、本当に嫌いな相手なら、完全無視するタイプだから(最初私に向けていたように)、なんだかんだで相手にしてあげている善逸くんの事は完全に嫌いではないと思うんだよね。きっと獪岳さんは、善逸くんの素直に表現出来るとこ、憎くはおもっていない………はず。  


竈門家のようなあたたかく優しい毎日ではないけれど、桑島さん、獪岳さん、善逸くんと過ごす慌ただしい問題だらけの毎日も、これはこれで楽しかったりする。きっとそれは私だけじゃなくて、皆もそう思っている。………といいな…。









※大正コソコソ噂話※
獪岳は、桑島さんの事を師匠(せんせい)、桜の事をザコ、善逸のことをカスと呼んでいます。


戻ル


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -