136:年上だったのか…
【1915年3月1日月曜日
・ロシアとドイツ同盟は順調に進む。それに日本と中国、英国も続く。
・東京女学生の間で写真撮影流行
・日本初の女性駅長誕生】
桑島さんに頼まれて買いに来た新聞の表紙には、数か国の大統領と思わしき男性達が握手をしている写真が一面を飾っていた。見出しの、【同盟順調】が、世界の平和さを表現しているようだった。
「……やっぱり、違うよね。これ…」
いくら私が歴史が苦手と言っても、さすがにあの歴史的出来事の年号を間違えるはずがない。1915年と言えば、もう始まっている年だ。それなのに…、新聞には真逆の事がかかれている。
ここで一つ、ある仮説が頭を過った。もしかして、この世界って…
「何も間違ってないだろうが」
「!」
急に声をかけられた事に驚き、飛び跳ねるように振り向けば、野菜が入った籠を背負った獪岳さんが、目を丸くして立っていた。
「そんなに驚く事かよ…」
私の過剰な反応に引き気味な獪岳さんは、私の新聞を見て「師匠がいつも読んでる新聞で間違いないだろうが」と言ったので、そっちの事かと胸を撫でおろしつつ、「そうだね」と苦笑いを返しておいた。
今日は、獪岳さんと一緒に町に買い出しに来ていた。獪岳さんは、善逸くんが絡まなければ、普通に接してくれるようになったので、会話を交えながらの買い出しは順調に進んでいった。
「善逸くんがさ、今日ごはん作ってくれるんだって」
「カスの作る飯は、味付けが濃いからな」
「獪岳さん薄味が好きだもんね。おじいちゃんみたい」
「ふざけんな。俺はまだ16だ」
「え、獪岳さんって16歳だったんだね」
「正確な日付は分かんねぇが」
「ふ〜ん……。じゃあこれから獪岳くんって呼ぶね」
「はぁ?なんだよ急に」
「私、年下はくんをつけて呼ぶ主義なの」
「年下って、…お前いくつなんだよ」
「私、19歳だよ。獪岳くんよりおねえさん」
「はぁ?!3つも上かよ?!」
獪岳くんは驚愕の表情を隠す事なく、私を何度も上から下へと見て、顔を引きづらせている。
そこまで驚くの失礼すぎない?と思いつつも、そう見えてもしょうがないかとも思う。
だって私の見た目は、あの頃……竈門家の皆と一緒に殺された時から全く変わってないから。顔つきも、髪の長さも、身長も、何もかも。復讐を忘れるなというかのように、全てがあの時のまま。
「桜お姉ちゃんって呼んでもいいよ?」
暗い気持ちを誤魔化すように、冗談を言えば、無言で嫌そうな顔をされた。
※大正コソコソ噂話※
獪岳は最初、本当に桜が大嫌いだったのですが、桜が意外に適切な距離を保ってきながら接してくれたのと、獪岳と師匠の修業を邪魔しない、むしろ、家事を率先して代わってくれたので、修業の時間を増やす事が出来た。など利点もあり態度が軟化。善逸が来てからは、善逸と比べたら桜の方が大分マシだったんだなと気付き、その内自らも会話するようになっていきました。現在の好感度は20くらい。でも名前は呼ばない。