130:情けない再会

「スズランあるといいな……。…ん?」

それは、私の全財産が入った巾着を手持無沙汰に触りながら、ジブ〇花屋さんに向かって歩いている途中のことだった。
ふと、進行方向から喧騒が微かに聞こえてきた。耳を澄ませながら歩くこと数十歩目で聞き取れたのは、男性の怒鳴り声と甲高い泣き叫び声。トラブルだろうか。喧嘩というより、一方的な恐喝のように聞こえる。

進むにつれ大きくなる恫喝的な声。私に向けられたものでないと分かっていても、凄みのある男性の怒鳴り声に心臓が縮み嫌な音を刻む。

確かめるように進んでいくと、四つ角を北に曲がった先に、音の発生源を発見した。まだ、距離があって顔までは分からないけれど、柄の悪そうな大柄の男性と細身の男性、中年の女性が、男の子…(…だろうか?)を踏みつけたり、怒鳴ったりしている。明らかな暴行現場だ。

周囲にはお店も何件かあり、人通りも少なくはないはずなのに、周りの人達は素通りしたり、遠巻きに見物しているだけ。

どんな事情があれ、大人が子供に暴力を振るっているのは見過ごせない。なぜ、誰も止めようとしないのかと怒りを感じながら、近くの警察に駆け込もうとした時、聞き覚えのある声に、身体がピタリと止まる。


「ひぃーーーー!!だから、俺は騙されたんだよおぉーー!」
「御託を並べてねェで、さっさと全額払えやぁ!」
「そんな金ないですすみませんーー!!」
「払えないなら、臓器でも売ればいいだろうがよぉ。なぁ?」
「ぎゃあぁーーーー!!!!いやあぁーーー!」


「……もしかして、この声…!!」

この独特の甲高い悲鳴に確信めいたものを感じながら、顔が見える距離まで急いで走って行くと、踏まれている男の子が首がもげそうな勢いでこちらを見上げた。

互いの瞳が、互いを捉えた瞬間、叫ぶ。

「ぜ」「桜ちゃん!!」

私の言葉を遮るように、私の名前を呼んだのは、鼻水と涙まみれの善逸くんだった。


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