127:お手紙大作戦

翌日の早朝。修業を本格的に始める前に身の周りの物を揃えておいでと桑島さんにお金の入った小袋を渡された。手渡された小袋は両手からはみ出ており、ずしりと重い。恥を忍んで返せるお金が無いと言えば、桑島さんは金の心配するなと快活に笑った。なんでも鬼殺隊トップのお館様から、お金は好きなだけもらえるのだとか。さらにお館様は鬼殺隊全員の給料も払っているらしい。その謎の財源力に首を傾げながらも、お金は有難く頂戴する事にした。これまでの極貧生活で遠慮してたら餓死すると学んだ私は、少しだけ図太…逞しくなったのかもしれない。

これは最初の修業でもあると、「帰りまでが遠足です」と同じノリで言われた、町までの買い物も無事に終え、昼過ぎには家へと戻ることができた。







「只今戻りました」

家の近くの木陰に座る二つの姿に気づき声をかけると、その内の一つが立ち上がる。

「無事に終えたか?」
「はい!桑島さんのくださった地図のおかげです!ありがとうございます。あ、頼まれていた品物もちゃんと購入出来ました」

大きめの肩掛けの鞄から、頼まれていた薬と糸、それに今日の新聞を取り出し見せる。

「助かった。居間の机に置いといてくれ」
「机ですね、わかりました。…………、あの桑島さん」

忙しい桑島さんにお願いするのは申し訳ないと思いながらも、鞄からもう一つの物を取り出して、顔色を伺いながら話を続けた。

「…手紙買ってきたので、あの昨日の件……お願いしても、いいでしょうか…?」
「あぁ、もちろんじゃ。新聞と一緒に置いといてくれ」
「っありがとございます!!」

腕に手紙を抱えながら、感謝の気持ちを込めて頭を深々と下げた。
目蓋の裏に自然と写し出された二人との再会場面に、期待する思いを止める事は出来なかった。

(炭治郎君、禰豆子ちゃん……きっとすぐ会えるよ)







私は昨日、桑島さんに我儘なお願いをしていた。

私のもう一つの目標である、炭治郎君と禰豆子ちゃんとの再会。ここに来るまでの間、二人を探しながら旅をしてきた。町の人への聞き込みはもちろん警察に助力を求めたり貼り紙をしたり色々と努力してきたけれど、結果として何一つ情報を得る事は出来なかった。

連絡手段が未発達な時代で、日本中を探す難しさ。私が最南端にいて、二人が最北端にいる可能性だってあるし、お互いが場所を転々としてうまい具合にすれ違っていたりしたら、一生会えない可能性も出てくる。お互いが探し合っている状態だったらまた違っただろうけど、私はこの半年で一人探し続ける事の限界を感じていた。

鬼の事もあるし、下手に動かず、いっその事拠点を決めてから、探したほうが効率がいいんじゃないかと思った事も弟子入りの理由の一つでもあったりもする。

この事を桑島さんに話しつつ、「二人を探しにいく時間も欲しい」とお願いすれば、快諾してもらえたどころか、「二人が鬼に襲われたなら、鬼殺隊に関わっているかもしれない」と、桑島さんの伝手で、トップである親方様や知り合いの鬼殺隊、元水柱の育手の人に手紙で情報を集めてもらえる事となった。

「二人を知る者もしくは見つけた者がいれば、必ず儂の元に情報が来るようにしよう」と約束してくれた桑島さんに、感激のあまり抱きついてしまった程。

まだ修業は始まっていないけれど、全てが順調に進んでいるように思えてならなかった。………一つの事を覗いて。

「あ、の。獪岳さん。私が今日の夕ご飯作らせてもらうのですが、何か食べたいものとか」

頭を上げて、今度は木陰で休憩する獪岳さんを見て話しかければ、ギン!と睨み返されたあと、無視されてしまう。挨拶と会話は無視、視界に入れば睨む獪岳さんの態度に思わず苦笑いがもれる。

(特別嫌われるような事はしてないと思うんだけど…)

私だって普通なら、ここまで嫌悪にされれば適切な距離を保つのだけれど、昨日桑島さんに「めげずに獪岳に話しかけてやってほしい」と頼まれているので、それも出来ず。まぁお互い苦痛になりすぎない程度に、ほどほどにしていこうかなと気楽に考える事にした。

「とりあえず、あるもので作っておきますね」
「夕飯楽しみにしておるぞ」
「ふふ、任せてください」








稽古を再会した二人に背を向け、家に入って荷物を片付け、桑島さんに買ってきたものを机に置いた時、なんとなく気になって新聞を手に取ってながめてみる。竈門家では新聞紙は貰い物で、使い道は野菜を保存する際に巻き付ける物、もしくは折り紙にして遊ぶ物だったので、じっくりと見た新聞はなんだか新鮮な感じがした。


【 1914年9月2日水曜日
・日本発、エスカレーター、エレベーター、スプリンクラーの設備が施された呉服店、東京の新名所となり大盛況。
・ドイツとロシア同盟成立。経済を回復を狙う二か国。
・大正博覧会で販売された土産用ミルクキャラメルの爆発的人気 】


(え、このキャラメルって大正時代からあったんだ!すごい!……ん、あれ?…あれ?この記事、おかしくない…?)

私の記憶違いかな?歴史の授業苦手だったしと疑問に思いながらも下を読み進めていくと、ある文章が目に止まる。

【・御鐘餅家の三毛猫が昨日から行方不明。情報求
 ・譜量家の伊江出さん16歳 2日前から家に戻らず 情報求 】

それは行方不明者の情報を呼びかける数行の記事だった。

(……新聞って手もありかもしれない)








※大正コソコソ噂話※
師匠との時間を取られちゃうよ。俺が優先されるべきなのに(´;ω;`)考え方嫌いだなぁ(#^ω^)なんかムカツク<(`^´)>らしい。今のとこ。


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