126:好感度-50からのスタート

「ふっざけんな…!駄目に決まってるだろうが!」


私の言葉にすぐさま反応したのは、桑島さんではなく、獪岳さんだった。
獪岳さんは手元にあった桃を一つ手に取り、壁に投げつけながら声を荒げる。

「師匠はな、俺の稽古で忙しいんだ。お前みたいなバカに構ってる暇はねぇんだよ!」
「…なっ」
「ちっ嫌な予感がしてたんだよ。ここに居て正解だった。…師匠、治療は終えたなら、この女はすぐに追い出しましょう」
「待って、私…!」
「治療してやったんだ!さっさと帰れ!」
「帰りません!私、本気なんです!話を」
「バカは俺と師匠の邪魔にしかならねぇんだよ!」

獪岳さんは立ち上がり、私の二の腕を掴んで無理矢理立たせ、出口へと強引に引きずった。
あまりの力強さに骨が軋み、痛みに顔が歪む。咄嗟に左手で引き剥がそうとした瞬間、怒鳴り声が響く。

「やめんか獪岳!」

桑島さんの一喝に、獪岳さんの動きが止まり手の力が緩む。

「獪岳おまえは強い。僅かな時間で呼吸を取得出来たのは、類まれなる才能と直向きな努力の賜物。けれど、強いだけでは何も成せない。もっと他者に心を配る事を覚えろ」
「……ですが師匠」
「桜の腕を放すんじゃ」
「…はい」

桑島さんの言う事は絶対なのか、獪岳さんはしぶしぶといった様子で私から手を放し、不満気な様子を隠す事なく外へと出て行った。


「すまんの桜。弟子の不始末は、師範である儂の責任じゃ」
「いえ、桑島さんが謝ることでは…」
「……獪岳はこれから学ぶことが多くあるが、儂の大切な弟子なんじゃ。…どうか許してやってはくれんか」

私を真っ直ぐに見つめる慈悲深い眼差しが、桑島さんの人柄を表しているようだった。特別怒っている訳ではなかったのだけれど、桑島さんの獪岳さんへの愛情につられたのか、いつの間にか頷いていた。




「それで、弟子の件じゃが」
「…はっ!そうです!お願いします!キツい修業」
「よいぞ」
「も頑張りますからどうか……って、…え?」
「弟子として迎えよう」
「…え」

それに、可愛い女子は大歓迎じゃ。そう言って、おちゃらけた雰囲気を見せた桑島さん。

「………そんな簡単に許可していいんですか?」

あまりにもあっさりと許可され、驚きや感謝より、呆然とした気持ちが勝り、ぽかんと薄い反応を返してしまう。
よくある展開の「この試験をクリアしたら弟子入りを許可しよう!」とか「断崖絶壁に生える幻の薬草を取ってこい」とか「儂に一撃でも入れたら認めよう」とか、そんな難題があると思ったのだけれど…。

「どんな物事の始まりも、皆平等に与えられるべきだと儂は考えておる。その後どうするかはその者次第じゃが」
「桑島さん……」
「それと、女子に頼み事をされたら叶えてやるのが男というものじゃ」
「…ありがとう、ございます」
「ただし…。強制ではないのじゃが、一つ頼まれてくれんか?」

桑島さんは、なに簡単な事じゃと言った後に、あるお願いを口にした。それを聞いた私は、「私に出来る範囲なら」と了承したものの、これから始まる修行よりも難易度が高そうに思えてならなかった。









※大正コソコソ噂話※
実弥ルートの場合は実弥→夢へのは好感度-200、南ルートの煉獄さんは25、鬼化ルートの童磨は90スタートになります(数値は100がMAXで、友人の初期値が30くらいです)。


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