友達以上、恋人未満
「やっ、ん…あっ」
どうしてこんな関係になってしまったのかはもうわからない。
「…もう、だめ…っん、クラサメ…くんっ、…あぁぁぁぁぁっ」
彼のモノが私の最も深い場所を突けば快楽の渦に溺れ意識を飛ばす。
どうしてこんな関係になってしまったのだろう、なんて考えも消えてなくなる。
「……んっ」
まだ夜が明けておらず辺りは薄暗い中に目を覚まし気だるい身体を起こせば、身体に掛けていた布団が滑り落ち一糸纏わぬ姿の私は肌寒さを感じる。
「クラサメくん…」
そっと熱い情事の相手だった彼の名前を呼んでみてもあたり前に返事はない。
自分が眠っていたベッドの隣を触ってみても温もりがない、ということはいつものように情事が終わったらすぐに帰ったということだ。
これはいつものこと。
もう一度眠るにしてもこの一糸纏わぬ姿のままでは寒いため、寝間着を着るべくベッドから出れば、寝室にある机の椅子の上に目がいった。
そこには情事の前に私が着ていた服が綺麗に畳んであった。
その畳んである服の上にはメモが一枚置いてあり、メモを覗けばそこには見慣れたクラサメくんの字があった。
〈目が覚めたらすぐに服を着て温かくするように〉
わざわざそんな気遣いをするクラサメくんに自嘲染みた笑いが溢れる。
「…私のことなんかそんな風に優しく気遣わないでよ」
私とクラサメくんは付き合っているわけではない。
エミナやカヅサくんと同じで候補生時代の同期でよく一緒に居た。
彼と私は同じ1組で演習のペアであったことから、特に仲が良かった方だと自負している。
候補生時代には私にもクラサメくんにも恋人と呼ぶような相手も居た。
お互い何かあればよく相談しあっていた。
恋人にも言えない悩み事も聞いてもらっていた。
私とクラサメくんの関係を言葉に表すのならば、"友達以上、恋人未満"という言葉がぴったりだっただろう。
こんな関係を始めてしまったのは、軍隊に入ってすぐだったと思う。
その頃、私には恋人が居た。
そんなある日、クラサメくんに恋人の愚痴を言いながら二人で酒を煽った。
飲んだ量は計り知れず、その飲み屋で記憶を飛ばしたことを覚えている。
次に記憶が覚醒した時にはクラサメくんと情事の真っ最中だった。
抵抗しようと思えば出来た。
でも、抵抗しなかった。
私が想っていたは昔からクラサメくんだったから。
考え事をしていればいつの間にか眠っており、目を覚ませば朝の日差しがカーテンの隙間から差し込んでいた。
武官の制服に袖を通し、鏡の前で深呼吸を一つする。
朝の日差しを浴びながら仕事場へと向かうのだった。
昨日クラサメくんと会う前に仕上げた書類を軍令部に提出するべく軍令部に向かえば、前に見知った背中があった。
「クラサメくん、」
「あぁ、名前か」
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
おはようと返せばすぐに踵を返すクラサメくん。
こんな関係になる前まではこんなんじゃなかった。
ねぇ、クラサメくんは後悔してるのかな?
「名前くん?」
懐かしい声に振り返ればそこにはなかなか会うことがない親友の一人のカヅサくんが居て、久しぶりの再会に喜んだ。
「カヅサくん、久しぶりだね!」
「本当だよ!名前くんったらクラサメくんのことは構うのに僕のことは全然構ってくれないんだからさ」
ションボリとわざと落ち込んだような態度をとるカヅサくん。
クラサメくんとは複雑な関係なんだってば、とは言えず少し困る。
「名前くん、今から少し暇?」
「今から?うん、大丈夫だよ」
「よし、じゃぁ今から僕を構うべく僕の研究室に来てコーヒーでも飲みながら少しお話でもしないかい?」
「ふふ、良いよ」
カヅサくんの研究室に向かえばそこは異様な雰囲気で、何処に座れば良いのか困っていれば研究用のベッドに座るように促される。
「で、クラサメくんとはどうなの?」
「どう、って?」
「付き合ってるんだろう?」
「付き合ってなんかいないけど…」
「…………えぇぇぇぇぇぇ!」
少しの間を空けて大袈裟かのように驚いてみせるカヅサくんに苦笑いを溢す。
「だって君たち、候補生の時はいつも一緒だっただろう?」
「いや、まぁ、そうだけど」
「軍隊に入ってからすぐに名前くんが付き合っていた恋人と別れたから、てっきりクラサメくんとくっつくために別れたんだと思っていたよ」
「……うーん、まぁ、色々と別れた理由は違うんだよね。それに最近はクラサメくん冷たいし、ね」
「クラサメくんが名前くんに冷たいだなんてありえないな!もうそれは天地がひっくり返ったとしても。だってクラサメくんは……!」
「…クラサメくんは?」
そう途中でやめた話の続きを訊ねれば口を紡ぐカヅサくん。
「えーっと、あー…。!…僕、軍令部長から頼まれてた仕事を忘れていたよ。名前くん、すまないが話の続きは今度にしてくれないかい?」
「え、あ…、うん」
追い出されるようにカヅサくんの研究室から出て、しょうがないので自分も仕事に戻ろうと執務室が並ぶ廊下を歩いていれば突然影から腕を強く引かれ、真っ暗な誰も来ることがない場所に引き込まれる。
怖くなり、大きな声を出そうとすれば口を塞がれる。
その瞬間、私のよく知っている爽やかな少し甘い香水の香りがした。
「(……クラサメくん?)」
大きな声は出さないと言う意味を込めて何度か頷きながら彼の手を優しく掴めば、口を抑えていた手が放される。
しかしそれと同時に壁とクラサメくんに挟まれた私は両手を抑えられ、身動きが取れなくなる。
「カヅサの研究室で二人っきりで何をしていた…?」
氷剣の死神、その名にぴったりのような低い声で訊ねられれば少し怖くなり声が出てこなくなってしまった。
「まさか、カヅサと身体を合わせていたのか?」
こんな怖いクラサメくんは初めてで、いつの間にか涙が溢れてしまった。
否定したいのに相変わらず声が出てくれなくて、それはクラサメくんに勘違いさせるのは簡単だった。
「……私のこと以外、考えられないようにしてやる」
ぼそりと呟けば、私の首筋に顔を埋めればチクリと痛みがさす。
私の手を抑えていない方の手はどんどんと下がっていき、胸を乱暴に揉みしだいていった。
「……あっ、ん」
こんな乱暴な行為はいくらクラサメくんとでも嫌だ。
そんな気持ちでいっぱいになり、細やかな抵抗を試みるが男の力に敵うわけがなく、むしろ抵抗したことによってまだ濡れてはいない割れ目に指を差し込まれる。
「……クラサメくん…っ、お願い、やめ…てっ」
溢れる涙を拭うことも出来ずに震える声でそう懇願すれば、はっとしたように顔を上げるクラサメくん。
その顔は普段では想像も出来ないほどに悲しみで歪んでおり、今にも泣きそうな顔をしていた。
「………すまない」
冷静さを取り戻したであろうクラサメくんは私の手を解放した。
泣きそうな顔をしているクラサメくんを放って置くことなんか出来ず、彼の顔を両手で優しく包み込めば困惑の表情をする。
「怒らないのか…?」
「うん、だって、私クラサメくんのことが好きだから」
そう告げて優しく微笑めばクラサメくんは先程とはうってかわって優しく私を抱き締めた。
「すまない。…カヅサと名前は昔から仲が良かったから、そういう関係になったのかと思ったら身体が勝手に動いてしまった」
「それって……」
嫉妬した、と言っているのと同じではないだろうか。
まさか、ね。
「私は名前のことが昔から好きだった」
「………う、そ」
「初めて私たちが関係を持った日のことを覚えているか?名前に恋人話しをされ、耐えられず。酒に酔った君につけこみ抱いた」
「でも私は抵抗出来たのに抵抗しなかった。だからそれは同意のもとだよ…?」
「………名前」
「私は、もうこんな関係やめたい」
こんな友達以上、恋人未満で身体の関係だけを持つ関係なんていらない。
「あぁ、そうだな。もうこんな関係はやめにしよう、だから…」
「だから?」
「言うのが随分遅くなってしまったが、私の恋人になって欲しい」
コクリと頷けば彼は私の頬を優しく撫で顎を上に傾ける。
そうして今まで身体を合わせていてもキスは一度もしたことがなかった私たちは初めてのキスをする。
それは今までの謝罪のキスであって、これからの始まりのキスでもあるのだろう。
――
友達以上、恋人未満(そんな関係は卒業しよう)
(これからは友達以上、恋人以上で)------------------------
零戦の管理人ロゼさまに捧ぐ相互リンク記念夢でした!
まず最初に謝っておきますぅぅ!
ロゼちゃん、あんな素晴らしい夢を頂いたのにこんなんしか捧げられなくてごめんなさい!
萌え禿げるような素晴らしい設定を1mmも活かせなかった私は逝かせられるべきだと思(ry
リクエストは友達以上、恋人未満の関係なのだけど身体の関係はあって、でも主ちゃんはスサヤんを大好きだけどスサヤんも主ちゃんを好きだけど冷たい。
切甘で、とのことだったのですがなんじゃこりゃー!!
ただ長いだけで駄目だこりゃ。
いつも楽しい絡みをしてくれる大好きで尊敬もしているロゼちゃんにこんなへっぽこを…!
返品可能です!
だからゆらの顔面に投げつけてやってください(何を
これからも仲良くしてね…!
2012/2/29
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[mokuji]
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