シークレット
歪んでるのかな、私達。
自分達さえ良ければいい、そんなご都合主義?
でも、もう戻れないよ。
もう、戻れないの。
口には出さないけど、私達…愛し合ってるよね ―
出逢わなければ良かった。
そんな事を言える関係ならいいのに、私達は同期ってだけで。
長期任務で暫く魔導院を離れてる間に、何か変わればと思ったのに。
私にはもう何年も前から恋人が居る。
それでも想ってる相手は、目で追う相手は他に居て。
クラサメ ―
「ユラ、おかえり」
「…うん、ただいま」
久し振りに見たクラサメは、何も変わってない。
そして思い知らされた、私の気持ちだって何一つ変わっていないのだと。
目の前の男が愛しい、クラサメ・スサヤという男が ―
クラサメにだって、もう何年も前から恋人がいる。
いつ一緒になってもおかしくない、離れてても確かな絆がある、そんな二人。
いつからだろう?そんな二人を見て、胸が痛くなったのは。
私の方は、クラサメとは違う。
ずるずると引き摺ってしまった、長過ぎて切るタイミングも解らずに。
好きだと言えた昔とは違う、今問われたら間違いなく私は口を噤んでしまうだろう。
「…どうした?元気無いな、疲れているのか?」
「………っ、…」
私の顔を心配そうに覗き込むクラサメの瞳が、優しく細められる。
久し振りに近くでその綺麗なエメラルドを見て、肩に触れられておかしくなりそうだった。
きっと、顔を真赤にしている私を彼は不審に思うに違いない ―
「ユラ?」
「…ごめん、クラサメ」
触れられた肩が、異常なまでに熱を持った。
初めての恋じゃあるまいし、顔を赤くしている自分が滑稽で耐えられなかった。
顔を上げて、クラサメを振り切ろうとした…それがいけなかった。
― どうして?
私を見つめるエメラルドが、熱を帯びていて。
どくっと、私の心臓が悲鳴を上げ、目の前のクラサメがブレて滲んだ。
生理的な涙で視界を歪み、少し強く掴まれた肩に意識が向く。
嘘、だ。
何時の間にかマスクを外したクラサメに唇を重ねられた。
お互いの唇が熱を帯びて熱い、ただ重ねるだけのキスなのに。
こんなに気持ちの良いものだったっけ、満たされるものだった?
ゆっくりとクラサメから離れると、間髪入れずに手首を引かれて魔導院を後にした ―
初めて入ったクラサメの部屋。
ガチャッとドアに鍵が掛けられて、後ろから抱き締められる。
何か言おうとしたら、掌で口を塞がれた ―
あぁ、イケナイことしてるんだって事実と罪悪感を同時に認識した。
首筋にクラサメの吐息が掛かって、くすぐったさに肩を竦める。
でも、嫌じゃない抵抗さえ出来ないでいる私は、クラサメにされるがまま。
一糸纏わぬ姿にされ、ベッドに押し倒された。
何度も触れるだけのキスを繰り返してくるクラサメの服を、私が脱がす。
彼女の代わりでも、それでもいいと思ってしまう私は…愚かだ。
クラサメの上着を脱がし終えて、キスに応える。
私の胸に優しい仕草で触れ、強弱をつけて揉みながら快感を煽ってきた。
唇を離して胸の先端にぺろり、と舌を這わせるとくぷっと口に含む。
口内で舌を押し付けられ、声を漏らしながらクラサメの髪を緩く掴んだ。
私を見上げて来る視線とぶつかって、眉根を寄せて微笑む。
もう一方を指で挟まれきゅっと力を入れられると、あられも無い声を上げてしまう。
「あっ、クラサメ…!」
「ユラ、」
私の肌を撫でるクラサメの手付きは優しい。
でも、激しさもあって見事に私の快感を引き出してしまう。
脇腹を手でなぞって、胸の間から下腹部へとクラサメの唇がなぞっていく ―
「あっ、ん…!」
足の間にクラサメの指が這って、長い指が秘裂をなぞる。
そこはしっとりと濡れていて、簡単にクラサメの指を飲み込んだ。
中の壁を擦り上げる様に動く指、クラサメは私に覆い被さってきた。
「ひゃ、んぅ…クラ、サメ」
「ユラ、ユラ」
ぺろり、と唇に舌を這わせて啄ばむ様なキスを繰り返すクラサメ。
応える様に啄ばみ返し、薄ら開いたクラサメの唇に舌を差し入れる。
クラサメがびくっと震えたけど、応える様に舌を絡ませてきた ―
「ん、ふっ…ちゅ、」
互いに貪る様なキスを繰り返してる間、クラサメが指を引き抜いた。
両足を抱え上げられて、秘裂にクラサメの熱いモノが押し付けられる。
キスに夢中になっている間に、ずぶっとクラサメが私の中に挿ってきた ―
「…くぅ、ふ…ふぅ、ん!」
一気に奥まで突き入れられて、何も考えられなくなりそう。
罪悪感とかそんなのから解放されて、互いの熱を高め合うだけ。
ねぇ、好きだよ?言葉には出来ないけど、クラサメは?
私のこと、
激しくなる律動に、応えるように締め付けて。
縋り付いて、声を上げて、抱き締めるけど…私達の関係は変わらないね。
「あぁっ、もう…だめっ!!」
「ユラ、―」
私の中を抉る様な突き上げに、一緒に果てて意識を飛ばす瞬間。
彼は、掠れる様な声で私に言ってくれた様な気がした。
“―好きだ”
私の願望が幻聴になったのだと、自嘲して涙と共に流して、記憶ごと ―
あれから、何度かクラサメと身体の関係を持った。
何も言わずに身体だけを求め合って、済んだら帰る。
やっぱり、幻聴だったんだ…好きなのは私だけだよね ―
「!」
リフレで一息入れていると、懐かしい人が入って来た。
クラサメの彼女で、長期任務ばかりを任される諜報に長けた人。
院内に居るなんて珍しい、そう思った ―
ドクンドクン、と胸が高鳴る。
罪悪感で息が出来なくなる、そんな感じ。
「…ユラちゃん?」
「あ、こんにちは。戻られてたんですね」
「えぇ、一瞬だけね」
「一瞬?」
「ふふ、クラサメに逆プロポーズしに帰って来ただけだから」
彼女の言葉に、私は全身が凍り付いた。
逆、プロポーズ?そうだ、二人は付き合って長い。
クラサメより2つ年上の彼女は、結婚もしたいのだろう ―
終わりだ。
いい加減目を覚ませ、私。
浮気の結果がこんなものだって、想像つく。
ただ、クラサメの傍に居れて気紛れに身体を重ねて。
見えなくなっていただけ。
短い間だったけど、罪深い行為でしかなかったけど。
私はそれでも幸せだったよ。
「おめでとう、ございます」
「いやぁね!まだ気が早いわよ、」
私はちゃんと笑えていただろうか?
彼女の笑顔には、そう言いながらも自信が備わっていた。
私では、どう足掻いたって敵わないクラサメとの関係 ―
長い年月を共にした、彼女が迎えるクラサメとのゴールは約束されているんだ。
――――――――――――――
それから、出来る限りクラサメを避けた。
朝から晩まで魔導院を離れる調査の任務や、偵察の任務をやった。
顔を見れば泣きそうで“結婚することになった”なんて言われたくない ―
しかし、報告書は出さなければならない。
人気の無くなった魔導院の廊下を歩いていると、呼び止められた。
「ユラ!」
「え、」
振り返れば、そこに佇んでいたのは私の彼氏。
あぁ、帰って来てたんだ…そう言えば、今日だったのか。
記憶を巡らせなければ出てこないなんて、私は彼女失格だろう。
「久し振り、ただいま」
「うん、久し振りだね。おかえりなさい」
何を話していいのか解らない。
腐れ縁がここまで続いたから、罪悪感さえないのか。
はたまた、もうこの間に愛などとっくに存在しないのか。
私は、心に違う男を抱きながら…この人の彼女だなんて ―
「ユラ、俺達…別れようか」
「…………」
「ごめん、お前がずっと違う奴を見てるの気付いてた」
「―え、」
「気付いてて、縛り付けてた。雁字搦めにして、何も出来無くしたのは俺だ」
“最低だよな”
消え入りそうな声で自分を責める彼氏に、私は唇を噛んだ。
最低なのは、どっちだ。
腐れ縁だからと、切るタイミングを見失って蔑ろにしたのは私。
そんな関係を続けながらも、クラサメと関係を持った私に彼を責める権利なんてない。
「でもっ、…私も貴方を裏切っ―」
「俺もだ。結婚することにした、軍を辞めて実家を継ぐよ」
「…………」
「自分を責めないでくれ。もう、お互いに首を絞める関係は終わらせよう、」
彼は最後、私をその腕の中に閉じ込めた。
泣いていた気がした、お互いに。
“ごめんなさい、ありがとう”
そう告げて、どうか幸せになって欲しいと心からそう思った。
――――――――――――――
クラサメを避けることも、彼氏と別れてから止めた。
それでも、0組の指揮隊長とただの武官が顔を合わせるなんて早々無い。
自分に合っている気がして、調査と偵察の任務は進んで受けている所為かも知れない。
報告書を出し、寮に向って歩いていると目の前に佇み空を見上げるクラサメが居た。
どくん、と私の胸が高鳴ったけど前よりはブレーキが掛かった気がする。
こっちに気付いたクラサメが、私と向き合う様に立つ ―
「私を、避けていたな」
「あら、開口一番がそれですか?」
「…何故だ?」
「辛くなったからに決まってるでしょ、あんな不毛な関係」
真剣な表情のクラサメに、私は自嘲を漏らす。
夜風が肌に冷たく、私は少し目を細めるとクラサメは言った。
「すまなかった、私は―」
「もういいよ!気にしてないから」
「ユラ、」
「ほら、あるじゃん?一時の気の迷いってさ、」
「ユラ」
「もう結婚するんだし、こんな悪さは2度と駄目、だぞ…なんてっ」
あぁ、もう…泣くつもりなんてなかったのに。
無遠慮に頬を濡らす滴が恨めしい、こちらに来るクラサメに“来ないで”と言った。
彼は一瞬、躊躇う様な仕草をしたが足を止めてくれた。
声が震えてしまって、どうしようもなく情けない。
「私の話を聞け。ユラ」
「…………」
「すまない、私が泣かせたな。
覚えているか?君を部屋に連れ込んだあの日の事を…もう、あの時には自制が効かなかった」
「…………」
「ずっと、私はユラの事を想っていた。
叶わないと思いながら、私の中には君が居た…あの日、君があんな目で私を見るから勝手に自惚れた」
“君も私を想ってくれているのではないかと”
掠れる声でクラサメが呟き、自分の失態を責める様に目をきつく閉じた。
そんなクラサメに、私はもうドクドクと胸が鳴り出した ―
嘘だ、こんなの。
都合の良い夢、クラサメが私のことを?
「そしてユラを思うままに抱いた。その後も、忘れられなくて何度か…抱いたな」
思い出す様に話すクラサメは、私に視線を送っては優しい表情をする。
また、頬が熱を帯びていくのが解る…誤魔化しても、私はクラサメが好きだから。
「また、そんな顔をする。今度、君を捕まえたら絶対に放してなどやらないぞ」
「…はは、冗談…」
「冗談?冗談などではない、ユラ」
「結婚するくせに…!長年、付き合った彼女に結婚迫られて、断る馬鹿はいなっ―」
気付けばマスクを取り、少し怒った様な顔のクラサメが目の前に居てキスで言葉を遮られた。
ゆっくり唇が離れると、腰を引き寄せられてクラサメにと身体が密着する。
「では、断った私は馬鹿ということか。こっ酷く振られたよ」
「………っ!!そりゃ、そ…でしょ」
驚いて何も言えない私は、動けもせずにクラサメにされるがまま。
振られたくせに、私が腕の中に居ることが嬉しいのか頬を撫でる手が甘やかす様に優しい。
「ユラ、君の気持ちを聞かせてくれないか?」
「…そんなの、決まってる」
クラサメの頬を両手で包み、ちゅと唇にキスをして微笑む ―
「ずっと…大好きだった、クラサメ」
クラサメは一度、目を見開いてエメラルドを揺らす。
そして嬉しそうに微笑みながら、私をぎゅっと抱き締めて“私もだ”と唇にキスを返してくれる。
「君の彼氏に殴られる覚悟なら出来ている」
「何それ、私達…少し前に終わってるよ?」
笑いながら言うと、クラサメはやっぱり少し驚いて“そうか”と言った。
ゆっくりと身体を離して、私の右手をクラサメの左手が掴んだ。
指と指が絡み合って、恋人繋ぎをした ―
「では、私と付き合ってくれるか?」
「…わ、私で良ければ」
「願ってもないな。ならば、これから気持ちを確かめ合うか」
「……クラサメの、すけべ」
年甲斐も無く、頬を真赤に染めると目尻にキスをおくられる。
悔しくて腕を引いてだいぶ背の高いクラサメの頬にちゅっとキスをした。
あの日の罪を、乗り越えられる2人だから
secret―この想いは今、重なる ―
end.
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零戦/ロゼさまへのお礼の言葉
ロゼちゃーーーん(はぁと)
すんばらしい相互記念夢を頂いてしまいました…!
もう穴という穴から血が出て貧血d(ry
某バンドさまの曲のイメージで、ということでお互いに恋人が居るんだけど好きでっていう夢をリクエストさせていただきました。
この某バンドさまがゆらは大好きです←
もう、ロゼちゃんったら希望の遥か上のものをくださいました!
本当にうはうはです!!!
実はゆらがこの夢サイトを設立する前から大好きで大好きでひっそりと通わせていただいていたサイトさまでした。
最初は我がサイトも明かすつもりはなかったのですが、図々しいゆらさんは相互リンクをさせていただいてしまいました…!
いつも楽しい変態…じゃなくてピュアなお話で盛り上がらせてくださってありがとうございます!
これからも仲良くして欲しいです!
ロゼちゃん大好き!!
白昼夢/Yuraより
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