手の平に乗せた想いは
今日は1組と合同での実戦演習の日であった。
実戦演習の内容はこうだ。
1組と2組の十数名は後方で待機。
前線には2組から選ばれた4人とユリア隊長で向かい、戦場となる場所の様子を調べる。
一応伝えられていた戦場の様子を頭に入れれば、少し難しい作戦となるなという程度のものであった。
異変を感じたのはある建物に入った瞬間であった。
「…ユリア隊長」
「うん、クラサメくんわかってるわ。皆も気を引き締めて。何かあったらすぐに私の後ろに下がりなさい」
いつも微笑んでいる隊長の顔から笑みはない。
凛とした表情で前を見つめている。
すると突然耳に付けていた作戦通信用のCOMMから耳障りな高い音が響く。
「通信障害…?……!皆、建物から出てっ!」
ユリア隊長はそう叫べば、外に出た候補生たちの前に立ち瞬時に長い刀身を出しウォールを唱える。
その瞬間、大きな爆発音が響き先程まで居た建物が大きな音を立てて崩れる。
瓦礫の粉塵で前が見えない中、隊長は斜め前にサンダガを放つ。
「魔導アーマーよ!」
その声にその場に居た候補生がびくりとしたのがわかった。
「いい?視界が開けたら私は魔導アーマーに攻撃を開始します、そうしたら貴方たちは後方に控える者たちにこの状況を伝えに行きなさい」
「た、隊長はっ?」
「私は大丈夫だから、だから貴方たちは逃げなさい」
少しずつ視界が開けてくれば、隊長は武器を構える。
「……今よ、行きなさいっ!」
その声と同時に魔導アーマーへ向かって行く隊長。
"雷光の鬼神"
そう呼ばれていた隊長は魔力の衰えも少なく、まさに鬼神のようだった。
しかし一人で三体居る魔導アーマーの相手をするには難しいようで、手こずっている。
隊長の背後に迫る魔導アーマーにブリザガを放てば、驚いた表情でこちらを振り返る。
「クラサメくん…?!どうして残っているの」
「命令を無視してすみません。しかし一応、四天王の生き残りです。ユリア隊長と共に戦います」
「クラサメくんの馬鹿!」
「生きて、帰りましょう」
強く頷く彼女の目が光っていたのは気のせいなのだろう。
しばらく戦い、一人一体ずつ魔導アーマーを倒したところで後方に控えていた候補生が現れ一気にこちらの優勢に変わる。
全ての戦いが終われば候補生たちは魔導院へ戻り、俺とユリア隊長はその場でどういう状況であったのかの報告をする。
報告が終わった時には辺りは暗くなりはじめていた。
「疲れた、わね」
「はい」
前を歩く少し汚れた彼女を見つめれば、微かに足を引きずりふらっと体勢が崩れる。
「隊長…っ!」
腕を掴めば、自分の胸に彼女の頭があたり良い香りが香る。
「ごめんね、大丈夫よ」
胸を押し、掴んだ手をほどくと強がって一人でふらふらしながら歩きはじめる彼女の腕を再び掴むと自分の肩に巻き付ける。
「かっこつけないで頼ったらどうですか?」
「一応私、隊長なんだからかっこぐらいつけさせてよね」
「でも今は大人しく頼ってください。隊長はかっこいいですから」
「ふふ、ありがとう」
素直に体重を俺にかけている隊長が可愛いくてしょうがなかった。
空いている手を差し出せば、目を反らしながら恥ずかしそうに掴んだ。
その小さくて細い手に想いを込めた。
"ユリア隊長のことが好きですよ"
――手の平に乗せた想いは
(貴女へ届きましたか)
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雷光の鬼神とか通り名を作ってみちゃいました。
名前の通り雷の魔法が得意な設定。
なので魔導アーマーや機械に関する作戦には重宝されてます。
隊長やりながらも作戦任務もこなす現役ばりばりな夢主ちゃん。
クラサメさんも現役引退とか言いながらあんだけ強いんだもん。
その育て親と言っても過言じゃない隊長だって強くても良いじゃないか!←
最強夢主大好きなんです。
次回予告をちょっくら。
この怪我がもとで検査入院をする夢主(弾が貫通しておらず、手術したから)。
お見舞いに行くクラサメだったが…?
――悔しいくらいに遠い人
((いつだって貴女は皆のモノ))
お楽しみに……!
2012/3/15
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[mokuji]
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