忘れようとすればするほど色褪せない
「ねぇ、ずっと一緒に居られるかな?」
「あぁ」
「クラサメ」
「ん?」
「好きよ」
「あぁ、俺もユリアのことが好きだ」
強く強く手を握り合う。
絶対に離さない、そう伝えあうかのように強く。
ピピピピピ、と鳴るアラームが聞こえてきて懐かしい夢を見ていたことに気がつく。
部屋にある机の上を覗けば、エミナとカヅサがクラサメの隣りを奪いあうようにして並んで、クラサメは私の肩を抱いている写真が飾られていた。
その隣りにはクラサメと幸せそうに肩を並べる私との二人っきりの写真が飾られている。
私はいつまで経っても先に進めていない。
進まなきゃ。
ベッドから起き上がり、机の写真を引き出しの中に伏せてしまう。
ベッドの上にある鏡に自分がうつれば、首元に輝くネックレスをなぞる。
クラサメと初めてお揃いで買ったネックレス。
これはまだ外せなかった。
「おはよう、ユリア」
「カヅサ、おはよう」
「はい」
右手の手の平を私のほうへ差し出すカヅサ。
「良いだろう?手ぐらい」
「うん」
カヅサと付き合うことになってから三ヵ月が経った。
でも手を繋ぐ以外の行為はしていない。
カヅサは約束通り、私がクラサメを忘れるのを待ってくれているんだ。
いつも私を待ってくれてる。
忘れなきゃ、忘れなきゃ。
そう思えば思うほどクラサメのことを考えてしまう自分が居て悔しかった。
「ねぇ、カヅサ」
「なんだい?」
「私、クラサメを忘れるよ」
「それはどういう意味だい」
「私はカヅサを好きになる。んー、元々カヅサのことは好きだけど幼馴染みとしてじゃなくて男性として好きになる」
「それは僕にとっては嬉しい告白だね。…だけど、本当に良いの?ユリアが言ってることは僕とこれからは恋人同士になるってことでしょ」
「うん、私カヅサのこと好きだもん」
「幼馴染みとして、ね」
「ちゃんと恋人として好きになるから、だから良いよ」
「…じゃぁ、キスもして良いってことかい?」
キス、もちろん恋人同士だ。
それ以上のことだってする。
初めては全てクラサメだったから。
クラサメ以外を知らないから。
「カヅサで私の思い出を塗り替えてよ」
「本気かい?」
「うん」
「…わかったよ」
カヅサは私の頬を片手で包み込む。
大きくて温かい手。
クラサメの手は少し冷たかった。
そして頬を軽く撫でるのが彼のキスの仕方だった。
ほら、クラサメとは違う。
こうやって塗り替えていけば忘れられるはず。
静かに目を閉じ、唇の感触を待てどもなかなか触れてこない唇。
その代わりに頭を優しく撫でられる。
どうして、と思いながら目を開けば困ったように笑うカヅサの姿。
「そんなに焦らなくて良いよ。ずっと待ってたからね。ほら、ご飯食べに行こう」
「カヅサ…っ」
「ん、なんだい?」
「……ごめんね」
「ほら、早く行くよ」
差し伸ばされた手を握り締める。
これで良いんだ。
私は少しずつカヅサを好きになれる。
私はきっともう笑えるよ。
食堂に行き二人並んでご飯を食べているとエミナの声が聞こえて、振り返る。
「あれぇ、久しぶり!二人で食べてるの?」
彼女の後ろには忘れもしない彼の姿があった。
「あ、」
小さく呟けば気を遣ったエミナが別の席を探すが、私たちの前しか席が空いていなかった。
「ここ、来たら?」
私がそう言えばカヅサがちらりと横目でこちらを見る。
「大丈夫だから」
カヅサにしか聞こえない声でそう呟けばカヅサはテーブルの下で軽く手を握り締めてくれた。
「ほら、エミナくんもクラサメくんも座りなよ」
「え、あぁ、うん!クラサメくん、座ろ?」
「あぁ」
斜め前に座るクラサメ。
三年経っても変わらない。
クラサメだ。
「それにしても四人が揃うなんて久しぶりだネ!」
「そうだねぇ」
気まずい空気を払拭しようとエミナとカヅサが話はじめる。
「……グラン」
突然、大好きだった静かな低音に名前を呼ばれ心臓が飛び跳ねる。
「な、なに?クラサメ…くん」
「足の怪我は大丈夫なのか」
「うん、もう平気」
「そうか」
素早くご飯を食べたクラサメは席を立った。
「エミナ、私は先に戻る」
「えっ、クラサメくん?」
目、合わせてくれなかった。
それにグランって。
本当に私たちは終わったんだね。
「もう、クラサメくんったら。…ってそういえば、最近二人っきりで居ることが多いみたいじゃないの」
突然そうエミナに振られて反応に困っているとカヅサが返事をする。
「なんか、最近カヅサとユリアが付き合ってるんじゃないかなんて噂になってるわヨ」
「んー、そうなのかい?」
「………………」
「あれ、ユリアもカヅサも否定しないの?」
「あながち噂じゃないかもしれないよ、エミナくん」
カヅサのその言葉に目を丸くするエミナ。
「カヅサ、あんたねぇ言って良い冗談と駄目な冗談があるでしょ」
「いや、冗談じゃなくて」
「ちょっと、ユリアはそれで良いの?」
エミナも私がクラサメを忘れられないことを知っている。
だからこんな風に中途半端な気持ちでカヅサとこういう関係になっている私のことを怒っているのだろう。
「エミナ、私クラサメ…くんの事は忘れるの。ずっと支えてくれてたカヅサのことちゃんと好きになるって決めたの」
「ユリア……」
休憩時間の終わりを告げる鐘が気まずい空気の私たちの間に鳴り響く。
「じゃぁ、私は仕事に戻るから。またね、エミナ」
エミナの真直ぐな瞳から逃げたくて、急いで執務室に向かった。
ボーッとしながら執務をしていればいつの間にか時計の針は終業時間を指していて、帰る準備をする。
執務室から出れば、そこにはカヅサが立っていて少しテラスにでも寄ろうと誘われる。
テラスにつく前にカヅサは温かい飲み物を二つ購入し、一つを私に差し出す。
お礼を言い受け取り、テラスに二人並んで座る。
「ねぇ、ユリア」
「なに?」
「僕はユリアが好きだよ、キミがクラサメくんと付き合う前からずっとね」
「カヅサ……」
「ユリアがクラサメくんを忘れるって決めたなら、キスしても良いかい?」
私はもう決めたのだ。
過去は振り返らない。
だから了承の意を込めて静かに頷き瞳を閉じた。
すると頬に手を添えられ、唇に柔らかい感触が広がる。
泣きそうになったのは気のせいに決まってる。
カヅサと別れ、自室に一人で向かうと自室の前には神妙な顔をしたエミナが立っていた。
「エミナ…?」
「あ、お帰りなさい。ちょっと良いかしら」
「うん、部屋に入って」
部屋にエミナを招き入れ、なにか飲み物を淹れようとすれば、なにもいらないから座ってと言われ彼女の向かえ側に腰をかける。
「単刀直入に聞くわヨ。カヅサと付き合ってるって本当なの?」
「………うん」
「クラサメくんのことはもう良いの?」
「もう良いんだよ、私たちは終わったの」
「本当にユリアの中で終わったの、ね?」
「………うん」
小さな溜め息を吐くエミナ。
ゆっくりと立ち上がり、私を真直ぐ見つめる。
「そっか。じゃぁ、私ももうユリアに遠慮しないネ」
「……え?」
「私、クラサメくんのことが好きだから、もうユリアがカヅサと前に進んでるなら良いデショ?」
なにも言うことが出来なかった。
クラサメのことを好きと言えるエミナが羨ましかった。
「…もう、私とクラサメくんは終わったから」
声を絞り出してそう答えればエミナはそういうことだから、と部屋をあとにした。
これで良いんだよね…?
その問いに答えてくれる人は誰も居なかった。
―――
忘れようとすればするほど色褪せない(いっその事、全て消して)
(キミの温もりも)
(キミへの想いも)------------------------
イケカヅサになりました?
変態カヅサには隠れてもらいましたよー!
結果似非カヅサにww
切ない文章が書きたい。
なのに書けない…!
私も人を感動させることが出来るような文章が書けるようになりたいなー。
実はゆらさん、夢サイト運営歴は長かったりします。てへ
なのに文章力が全くないって私、成長しないのか。
ひどいですネ/(^q^)\
てか、これクラサメ夢って嘘だろw的なほどにカヅサ夢ww
表記カヅサ夢にしたほうが良いですかね?w
いや、最後はちゃんとクラサメ夢にします…!
次で最後ですよ!
うっし、がんばるぞ!
2012/2/21
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[mokuji]
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