たった一言がこんなにも難しい
あれから数ヶ月経った。
クラサメは昔のようにとまではいかないが、話をしてくれるようになったし、わかりずらいが笑ってくれるようになった。
「やっぱりユリアさんの影響力は絶大かー」
オムライスを頬張りながら喋るエミナ。
「私なんてなんにもしてないよ」
「いいえ!私たちが何年かけてもダメだったことを数日でなんとかしちゃうなんて」
「なに言ってるの、エミナたちが居たからクラサメくん、ちゃんと立っていられたんだよ」
そんな会話をしていると、突然エミナが尋ねる。
「そういえば、ユリアさん候補生の時に付き合っていた彼氏さんって…」
「あぁ、彼も軍隊に居るわよ」
「あの、その…」
「なによ?」
「まだ付き合ってるんですか」
「あぁ、彼とはね…………」
「やっほー、クラサメくん」
そんな声と同時に開かれた扉の方向を見てみれば、ヒラヒラと手を振るエミナの姿。
「なんだ、エミナか」
「ユリアさんじゃなくて私で悪かったわね」
「…誰もユリアさんが良かっただとは言っていない」
「顔には書いてるわよ」
「ありえないな」
そう言いながらフッと笑う。
「本当にクラサメくん、ユリアさんが来てから笑うようになったわね」
「そうだな」
「認めるんだ」
「あぁ」
「ねぇ、ユリアさん候補生時代から付き合っていた彼氏さんにプロポーズされたんだって」
脈略もなくそう告げるエミナ。
一瞬言葉が理解出来なかった。
「それで、私にどうしろと」
「いいの?このままで」
「なにがだ」
「クラサメくん、ユリアさんのことが好きなんでしょ?」
その質問に答えることが出来なかった。
なんとか話をそらしてエミナを出ていかせると、心がザワついてうるさかった。
いつの間にか足は彼女のもとへと向かっていた。
「あら、クラサメくんじゃない」
クラサメの姿を確認した瞬間に優しく微笑むユリア。
自分はなにをしに来たのか。
それすらもわからないが、ひとまず彼女と二人っきりになれる場所を探して二人っきりになる。
「…プロポーズ、受けるんですか?」
「え、なんでクラサメくんがその話を知ってるの?」
「あ、いや……」
「……エミナかぁ、やられた」
目を細め困ったような表情をする。
「で、質問に答えてください」
「んー、クラサメくんには内緒」
誤魔化そうとする彼女に胸がズキンと痛む。
昔から彼女に憧れていた。
一目見た瞬間に目を奪われて、心を奪われていた。
でも彼女は他人のモノで、手の届かない人で、諦めていた。
好きだ、その簡単な一言が昔から告げられなかった。
「答えてください」
真剣に彼女に告げてみれば、彼女は大きく深呼吸をして口を開いた。
「……正直、迷ってるんだ」
「え?」
「プロポーズ断ろうか、お受けしようか。最低だよね、私」
自傷気味に笑う彼女を見て思う。
今伝えなきゃ一生後悔する。
「断ってください」
「……クラサメくん…?」
「私はユリアさんのことが昔から憧れていました。いや、好意を持っていました」
「それって……」
たった一言が言えない。
でも言わなければ伝わらない。
「ユリアさんが好きです」
沈黙が痛くて下を向いた。
やっぱり忘れてください、と言おうと顔を上げるととそこには涙を流している彼女が居た。
おもわず彼女を抱き締めた。
頭よりも先に身体が動くとはこういうことを言うんだ。
泣きながら軍服を握りしめる彼女を見ていとおしいと思った。
「クラサメくん、私」
「なんですか?」
「私も好き、クラサメくんのことが…っ、昔から……」
もう言葉はいらなかった。
クラサメはマスクを外して彼女の涙を口で掬うとそのまま彼女唇に口付けをする。
軽く口付けをした瞬間、今までの想いが溢れ出して歯止めが効かなくなっていた。
どちらからともわからない内に互いの口内を舌で愛撫する。
そのまま彼女を組み敷き、首筋に所有印を残す。
「ねぇ、クラサメくん」
「なんですか」
「ユリア、って呼んでくれない?」
「ユリア、愛してる」
たった一言がこんなにも難しい(ずっと言えなかった一言)
(やっと、言えた)------------------------
お題シリーズ無事完結!
彼氏さん涙目展開でした←
ズルズルと付き合っていてしまっていたけども、彼氏さんは昔から夢主ちゃんの気づこうとしていなかった気持ちに気づいていました。
要は、夢主ちゃんに自分の気持ちと向き合ってもらうためにプロポーズしたとかいう裏設定。
シリアスなんだか切ないんだか微裏なんだかよくわからないものになってしまいごめんなさい!
またそのうちお題シリーズやらせていただきます!
エースくんやら准将でもやる予定!
2012/2/1
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[mokuji]
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