僕の知らない君、君の知らない僕。
「クラサメくんってさ、顔は良いけどぶっちゃけ彼女は出来ないでしょ?」
そんな彼女の唐突な質問に口に入れたばかりのカレーを噴き出しそうになり、おもいっきり咳き込む。
慌てて食べちゃ駄目よー、なんて平然と言いながら水を差し出す問題発言をした彼女。
その水を一気に飲み干し、カレーを胃に流し込む。
「あ、ちなみにそのコップはさっき私が飲んでたやつだから間接キスね」
カッと顔が熱くなるのを感じたクラサメは慌てて手の甲で口元を隠す。
「クラサメくんったら、ウブなんだから」
「ユリアさん…っ!」
「ごめん、ごめん」
謝りながらも笑いを堪えることが出来ていない彼女を一睨みする。
「笑ってるほうがかっこいいよ、クラサメくん」
「…笑うことが少ない俺への嫌みですか?」
「んー、願望?」
彼女は俺と違ってよく笑う。
彼女は1組の候補生で先輩。
来年には候補生は卒業で軍隊に入隊することが決まっていると聞いた。
朱雀四天王を除けば、彼女は院内一の有名人だ。
才色兼備、この言葉はまさに彼女のために作られたような言葉で、彼女は女子にも男子にも年齢を問わずに人気があった。
「で、私の質問に答えなさい。クラサメくん」
「遠慮しときます」
「だめ、先輩命令」
「………………」
この質問をどう切り抜けようかと悩んでいると、背後から彼女と俺を呼ぶ声がする。
「あら、エミナじゃないの」
「ユリアさん、またクラサメくんをからかってるんですか?」
「からかってないわよ、ただアプローチしてるのよ」
「人に突然彼女出来ないでしょ、とか言いながらどこがアプローチですか」
「ん?そりゃぁ、出来ないって言ったらお姉さんが彼女になってあげようかと思って」
きゃー、なんてわざとらしく声をあげるエミナにニヤニヤしているユリアを見て軽く溜息をついた。
「ユリアさんには相手が居るじゃないですか。冗談も休み休みにしてください」
そう少し冷たく言うとまぁね、と寂しそうな表情で返す。
すると遠くから彼女を呼ぶ男の声がする。
「あ、」
なかなか席を立とうとしない彼女に行かなくていいのかと尋ねると、またね、と手を振りながら男のもとへと歩いていく。
美男美女カップルだとも有名な彼女たちの背中を横目で追うのだった。
放課後になり、あまり人が通らない廊下を進む。
そこの奥には使われていない空き教室があり、カップルの溜まり場となっている教室がある。
いつもなら声が聞こえても知らないふりをして進むのだが、そこを立ち去ろうとした時にふと少し荒い息遣いの男性の声が聞こえた。
その声はたしかに「ユリア…っ」と、呼んでいた。
頭では近づきたくないと言っているのに身体が言うことを聞かなくて、気づけば教室の目の前に気配を消して立っていた。
おそるおそる中を覗けば、情事中の二人の候補生。
マントの色は1組を示してした。
ふと髪の毛の間から覗いた顔はユリアだった。
それは今までに見たことのない色っぽい女性の表情をする彼女で、クラサメは足早にその場を後にした。
なんだかモヤモヤした気持ちが落ちつかない。
「…クラサメくん?」
名前を呼ばれ振り向けば、つい一週間前に告白されて付き合うことになった彼女という存在の朱雀四天王の一人である4組の候補生の女の子が立っていた。
クラサメは彼女の腕を引っ張り近くの空き教室に連れ込むと、机の上に押し倒して組み敷き、少し乱暴なキスをする。
彼女はそれを嬉しそうにしながらなすがままにされていく。
「ん…っ、クラサメくんっ」
彼はその候補生の彼女の口を左手で抑える。
「声は、出すな」
頬を赤らめながら微笑む女子候補生を見て気がついた。
……あぁ、そうか。
目を細めて笑う表情がなんとなく彼女に似ているのか。
僕の知らない君、君の知らない僕。 (それは望んではいけないモノだから)
(それは手に入らないモノだから) ------------------------
微微裏ですねw
素敵なお題サイト様からお題を拝借いたしました!
このお題シリーズは1話完結をモットーに全5話で構成されます。
年上夢主×クラサメさん
ということで、白昼夢では珍しいちょっと色っぽい内容にしたいなーとか無謀なことを思っていますのでお付き合い頂けると幸いです!
お題:僕の知らないキミ
Replica!の梶浦ミナセさまより
2012/1/26
[ 37/44 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]