始まりは突然に





授業が終わって昼休み。

私は急いでクリスタリウムまで走る。


クリスタリウムに着くと、課題で使う本を取ると足早に自習机が並んである場所まで急ぐ。



なぜそんなに急いでいるかというと……




















「(あ、今日も居た!)」



私の視線の先には朱のマントを纏う、金髪のサラサラの髪の毛の綺麗な顔立ちの眼鏡をかけている少年が一人。


彼を確認すると、私は彼の斜め前の席に腰を降ろす、



彼はいつも同じ席に座っている。
だから私もいつもこの席に座っている。


お昼休みのクリスタリウムは少し混んでいて、でもお昼休みにここに来る人間はだいたい決っている。

だからだいたい皆が座る席は決っているのだ。





本を開き課題を進める。

本を自分の前に持ち、読んでいるふりをしながら斜め前の金髪の少年を盗み見る。



彼との出会いは数週間前へとさかのぼる。









あれは今日と同じ昼休みの時間。



私が読みたい本は少し上の棚にあり、私の身長ではあとちょっとというところで届かなかった。


「んーっ、あとちょっと…」


つま先立ちをし、限界まで背伸びをしていたが届かない。

そんな格闘をしていた時、私の後ろから腕がすっと伸び、私が取ろうとしていた本を掴む。



「あ…っ」


慌てて後ろを振り返ると、朱のマントを纏う金髪の少年が私に本を差し出していた。



「これで、あってる?」


「……あ、はい!ありがとうございます」

「良かった、お礼なんていらないよ」



そう言うと爽やかな笑顔を私に向けて去って行った。





私は彼を一方的に知っていた。


いつもクリスタリウムで勉強している0組の人。

格好いいなぁー、なんて眺めていたからよく知っている。



この瞬間、私は彼に恋をした。





それからクリスタリウムへと通い、彼の斜め前の席へと座る毎日を続けていた。




勇気がなくてあれ以来話なんか出来ないけど、彼の姿を見れるだけでも私は幸せを感じていた。




そして次の日もクリスタリウムへと向かう。


しかしいつもとは違う。

金髪の彼が居ないのだ。




彼が来ることをいつもの席で祈りながら待っていたが、結局彼が来ることはなかった。


放課後、彼に会えなかったことをがっかりしながらテラスへ向かい、ベンチに座る。


大きい溜め息を一つ吐く。



「溜め息は幸せが逃げる、と聞く」


後ろから聞こえる爽やかな少年の声。

私はこの声を知っている。



慌てて振り返ると、そこにはいつもクリスタリウムに居る金髪の少年だった。

しかしいつもと違う点が一つ。

彼は眼鏡をかけていない。




「あれ?眼鏡、かけてないんだね」

「あぁ、眼鏡は本を読む時にしかかけないんだ」



隣り座っていい?、と聞く彼に私は頷く。

私が頷いたのを確認すると、彼はゆっくりと私の横に腰を降ろす。




「エース」

「え?」

「僕はエースって言うんだ。キミは?」


「私はユリアです」

「ユリア、か。ユリアはいつもクリスタリウムに来ているよな」


「あ、はいっ」


あなたに会いたくて行っています、なんて口が裂けても言えない。



「あの、」

「ん?」


「エースくんは、なんで今日クリスタリウムに来なかったんですか?」


「あぁ、今日は実戦演習の終了時間が伸びたおかげで昼休みには間に合わなかったんだ」

「そう、だったんですね」



なんだかちょっとホッとした私が居た。




「もしかして、僕のこと待っててくれた?」


その言葉に驚いて彼の顔を見ると、眩しいくらいの笑顔で私を見ていた。

胸がドキンとした。



「え、あ……、あの…」


返答に困った私を見て、彼は声を出して笑う。



「な、なんで笑うんですかー!」


「いや、ごめんごめん。あまりにもユリアの慌てっぷりが可愛いくって」

「か、可愛いって」


顔が熱い。すごく熱い。
絶対に真っ赤になっていると思った私は下を向いた。




「でも待っててくれたら嬉しいなぁ、って考えてたのは本当だよ」


先程とはうって変わって、真剣な声色。

ゆっくりと顔を上げると、そこには優しい顔をしているエースくん。



「エース、くん?」

「くん、はいらない」


「………エース?」



「ねぇ、これからは僕の隣りに座りなよ」



コクン、と頷く私を満足そうに見ると、彼はじゃぁ、また明日ね、とテラスをあとにする。


胸がドキドキして放心状態の私はテラスの心地よい風にあたり顔の熱を冷ます。























―――始まりは突然に



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エース夢でした!

エースもヒロインちゃんを気になってて、ずっと話す機会を探ってたら可愛い!

拍手コメントにてエース夢を増やして欲しいというリクエストを頂いたので、
書かせていただきました!

クラサメさんばっかり更新で申し訳ありませんんん!


2011/12/07


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