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近いようで遠い距離






クラサメ隊長と放課後の特別補習は、
休んだ三週間分が終わった今でもなぜだか続いていた。





二人っきりの執務室での特別補習の時間は大好きだった。





実習の時間にも復帰でき、またクラサメ隊長のかっこいい姿が見ることもできこの数週間に私は幸せで幸せでしょうがなかった。







そして放課後はまたクラサメ隊長の執務室へ向かう。






いつものように名前を言って中に入ると今日は先客が居た。
朱のマントを纏っている縦ロールの横髪がとっても可愛い女子候補生が居た。



私が執務室に入ってきたことに気がついたその女子生徒は私のことをじーっと見て声を発した。





「あれ〜?たいちょうにお客さん〜?」





隊長、と呼んでいるし、なにより朱のマントを纏っている。
0組の候補生だ。





「あ、はい。あ、私出直しますね」




そう言うと可愛い彼女は一緒に待ってようよ〜、と言ってくれる。


せっかくなので彼女の隣に腰を下ろす。





「私シンクっていうの〜。あなたは〜?」


「あ、私はユリアって言います」



「ユリアりんかぁ〜!敬語なんてやめようよぉ〜」





シンクは可愛くて優しくて、ほんわりしていて、

こんな可愛い候補生の隊長をしているのか…なんてちょっと落ち込んだ。
私なんか可愛くないし、なにより出会いはサボってる私を見つけて説教なんて出会い方だし。

迷惑ばかりかけているし…。






そんなことを考えているとクラサメ隊長がやってきた。



クラサメ隊長の姿を見た彼女は



「ユリアりんからどうぞ〜」



と、言ってくれたが、私は特別補習なのだ。
なのでなんて彼女に返そうか考えていると、クラサメ隊長が口を開いた。





「彼女にはこれから用事があるのだ。なのでお前からだ」





その言葉を聞いたシンクは少しびっくりした様子で、再提出の報告書の点検をクラサメ隊長に頼んでいた。



用事が済んだ彼女は帰る前に私の方にやってきた。





「ユリアりん、隊長のお気に入りなんだぁ〜!」






そんな言葉を発してきたので、私もクラサメ隊長も驚いた表情をする。
クラサメ隊長は、早く戻れ、なんて彼女を叱咤した。



つまらなそうに返事をしたシンクはもう一度私の方に向き直り




「またどこかであったら声かけてねぇ〜ばいば〜い」




なんて言って執務室を出て行った。







嵐が去ったかのように静かになる執務室。




クラサメ隊長は始めるぞ、と言っていつもの場所に座る。

部屋に響くのはクラサメ隊長の声と私のペンの音だけ。















陽も完全に暮れた頃、一通り終わった。




「あぁー!お腹がすいたー!!」


と、両手を伸ばして声をあげるとクラサメ隊長は





「ご飯でもご馳走しよう」


と、言う。



え?、と思った私はクラサメ隊長になんでですか?、と率直に聞いてみると、
なんとなくだ、と誤魔化されたような気がする。





それでも私は嬉しくって心が躍った。







ご飯は私だけが食べていて、クラサメ隊長は食べる私を見ているだけだった。

なんで食べないのかな?とも思ったが、噂でマスクは怪我を隠すためにしていると聞いたことがあったので、なにも言わないことにした。





「……美味しいか?」


「はいっ!勉強してお腹がすいた時に食べるご飯は最高です!」




本当は緊張して味なんかわかる状況じゃなかった。





「怪我は、どうなんだ?」


「たいした怪我じゃありません!もう傷も塞がりましたし」



「いや、そうではなくて…。傷跡のことだ」


「あ、傷跡は一年ぐらい経てば綺麗に消えるって言われましたから大丈夫です」



「一年、か……」



少し険しい表情になったクラサメ隊長。
そう言えば、私の責任って言っていたから、もしかして気にしてる?




「何度も言いますけど、この怪我はクラサメ隊長の責任なんかじゃないですよ!私の自己責任ですから!」




そう私が言うとクラサメ隊長は重い口を開く。



「いや、授業の前から会っていたのにキミの体調の変化に気がつくことができなかった。それに、実習の際にかばうことも出来ずに怪我をさせてしまったからな」




そんな彼の言葉を聞いて、不謹慎ながらに喜んでしまった。

ただの候補生である私のことを少しでも気にかけていてくれた。
それだけで満足だ。





「そんなこと気にしないでください!私の不注意です!」




そう言っても納得がいっていない様子のクラサメ隊長を見て私は言葉を付け足す。




「もうこの話はおしまいにしましょう!そんなに気にしてくださっているなら、かわりにクラサメ隊長の候補生時代のお話を聞かせてください!それでおしまいです





無理やり話しを終わらせた私に呆れ笑いをした彼だったが、なにかふっきれたようで、しょうがないから少しだけ話してやろう、と言ってくれた。




クラサメ隊長の昔話を聞きながらご飯を食べて、帰りは候補生が生活する女子寮の前まで送ってくれた。




「今日はありがとうございました!気をつけて帰ってくださいね」


「私の心配は必要ない」



そう言いながらも、感謝する、と言って帰っていく後ろ姿を見送る。














部屋に戻って今日あった出来事を思い返すと、頬の緩みが収まらない。



どうしてこんなに優しいのだろう。

クラサメ隊長のことを考えると胸が張り裂けそうになる。























次の日のクラサメ隊長の実習の授業。




クラサメ隊長は女子候補生に人気がある。

だから授業が終わると1組の女子候補生に囲まれている。
タイミングが悪いことに次は昼休み。

女子候補生たちにランチを誘われていた。




いつもならなにげなく見ているのに、今日はなんだかその光景が不愉快で、その光景に背を向け前にサボっていた時にクラサメ隊長に教えてもらった陽のあたる場所へと向かう。






遠くからは候補生たちの賑やかな声が聞こえてくるが、この場所は静かだ。





心地よい風が吹き、陽もあたるおちつく場所。
クラサメ隊長はあの候補生たちとランチかなーなんて考えながら芝生に横になる。



目を閉じると、クラサメ隊長の姿が映る。





あぁ、私は本当にクラサメ隊長が好きなんだって自覚する。











こんなに切ない気持ちにさせるのも、
こんなに嬉しい気持ちにさせるのも、
こんなに温かい気持ちにさせるのも、



………クラサメ隊長だけなんだ。


















































「お昼ご飯は食べないのか」











目を閉じていると、大好きな声が降ってくる。



慌てて目を開けるとそこにはクラサメ隊長の姿。







「あれ、ランチに行かなかったんですか…?」




「あぁ、ああいうのは苦手だからな」





そう言いながら彼は私の横に寝転がり、静かに目を閉じる。
陽の光を浴びて気持ち良さそうだ。







「クラサメ隊長…?」




クラサメ隊長は疲れているのか、そう呼んだ時には静かに寝息をたてていた。



手を伸ばせばすぐに触れることの出来る距離。




だけど私はただの候補生で、彼は隊長。

触れることなんて許されない。







彼は近いようで遠い存在。











触れることが許されないのなら、せめて今だけは、







この時間だけは彼を見つめることは赦してください。













私はそっと自分の纏っているマントを外し、彼の身体にかける。






























































―――近いようで遠い距離





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これは甘いと言うのだろうか…。

本当にゆったり展開すぎてごめんなさい!!


次話からは0組の子たちとも少しか絡めたい!
と思ったので今回シンクちゃんを登場させてみました!
なんでシンクかというと管理人が好きだから←

次話ではエースくんも絡めたい……。

エース→ヒロインちゃん→隊長
なんて関係どうだろうか………。

こんなこと言ってたら、
もしかしなくても自分で自分の首絞めてる?w

恋落ちシリーズは私も気にいってる作品で、
みなさまにも好評で嬉しいです!

頑張りますので、
このゆったり展開にどうぞお付き合いください!


2011/12/09


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