もっともっと好きになる






今日は待ちに待った戦闘実習の時間。

今日は朝起きると風邪をひいたみたいで身体が少しダルかったが、大好きな実習の授業の日だ。


少し体調が悪いぐらいでは休みたくはない。




理由?
そんなの簡単だ。


戦闘実習の授業は私の組である1組の隊長の代わりに0組の隊長であるクラサメ隊長が授業を受け持つことになったからだ。




そして今私はクラサメ隊長の執務室の前に居て、授業で使うものを運ぶ手伝いをしに来ている。



ノックするのはなんだか緊張して、少し手が震えるがそっとノックをして扉を開ける。





「クラサメ隊長、1組のユリア・グランです」


「あぁ、ご苦労」



悪いが、そこにある物を持って行ってくれ、とだけ言われ会話が出来なくて少しがっかりしながら執務室を後にしようとすると、

彼はそっと椅子から立ち上がり、私のそばに来る。




「授業、しっかり出ているようだな」


顔がマスクで隠れていて表情はあまりわからないけど、今きっと彼は優しい表情をしているに違いない。



「もちろん、です」

「そうか」


「クラサメ隊長に、」

「ん?」


「クラサメ隊長がサボるなって言われたから、だからサボらずに授業出てるんです」

「………………」



「授業、やっぱり面倒くさいけど役に立つこともあったし、クラサメ隊長の言う通りでしたよ」




そう私が言うと彼はとても優しい声色で、その調子で頑張れ、と言った。




執務室を出ると自分でも顔が真っ赤になっているのがわかった。














実習の時間はクラサメ隊長が見本として魔法や剣術を見せてくれる。


クラサメ隊長の動きは軽やかで無駄な動きが一切ない。

見惚れる、って言うのはこういうことを言うんだ。




クラサメ隊長のことを見ている内に私の番になり、私はクラスメイトと模擬戦闘を行う。

クラスメイトとの模擬戦闘は主に回避練習ということで、攻撃する側と回避する側に分かれて順番に練習を行う。


クラスメイト同士ということで攻撃する側は回避が出来る程度に攻撃を行うのだ。



今回まずは私が回避側だ。




いつもなら私は上手く回避して、相手の攻撃を受けることはない。


私が身体の異変を感じたのは三撃目を回避した時だった。

いつもよりなんだか身体が重かった。


四撃目がきた時には身体が動かなくて、目が霞んだ。




近くに居たクラスメイトの女の子が危ない、って叫んだところまではわかる。


攻撃が当たる、と思い慌てて重い身体を引きずるように回避をしたが間に合わない。

次の瞬間、右腕に強い衝撃がはしる。





私が覚えているのはそこまで。


























目を覚ました時には、闘技場ではなくて医務室のベッドの上だった。


あぁ、私怪我したんだ
と、理解をするのは早かった。

なぜなら右腕がとても痛かったから。


なんだか身体もダルくて熱い。





そんなことを思っていると医務長とクラサメ隊長の話す声が聞こえて、クラサメ隊長が居るなんて喜んでいる自分が居た。





私が目を覚ましたことに気がついたクラサメ隊長は少し怖い表情をして私のもとに駆けつけた。



「大丈夫、か?」

「…んっ、ちょっとまだ痛いけど大丈夫です」


「どうして熱があったのに実習の授業なんかに参加したのだ」




そうクラサメ隊長に言われて、初めて自分に熱があったことを知った。

だからあんなに身体がダルかったのか…。




「私、熱、あったんですね」


「………………」



私がそう言うと複雑な表情をするクラサメ隊長。




「……自分で気づいていなかったのか?」


「え、あぁ…、はい。すみません」



彼は大きな溜め息を一つ吐くと、複雑な表情から優しい表情に変わった。





「体調管理も候補生の仕事の一つだ。しっかり自分の体調管理をすることだ」


こんな時でも説教をする彼。
ちゃんと私を叱ってくれる。



「……ごめんなさい」


しょんぼりしながら謝ると、彼はまた一つ溜め息を吐き、私の額に手を置く。




「熱は少し治まったようだな。怪我は全治三週間だ。三週間は入院が必要のようだ。安静にしているように」


「は、い」




「あと、怪我をしたのには私の責任もある。入院で遅れた分の授業は私が教える。退院したら私の執務室にくるようにな」




それだけ言うと彼は足早に医務室を去ってしまった。


怒られたことをしょんぼりしていると、その様子を見ていた医務長が私の方へやって来た。







「ねぇ、あなたどうやってここへ来たか覚えてる?」


「え…?」

「その様子だと、覚えてないみたいね」




なら良いことを教えてあげる、と言った彼女は私の耳元で小さな声で囁いた。



「怪我をしたあなたをここへ抱えて運んで来たのはクラサメ士官よ。それも応急処置をしていたにも関わらずとても慌てていたみたいよ」


「……うそ?」

「ふふっ、あんなに慌てたクラサメ士官を見たのは初めてだったわ。…じゃぁ、お大事に」




それを聞いた私は嬉しくて嬉しくて、胸がいっぱいになった。







ねぇ、どうして貴方はそんなに優しいの?






















―――もっともっと好きになる



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シリーズ化してしまいました!
もはや連載並みにゆったりとした展開の進みかたですよねw

でも連載とは違い、1話1話でも楽しめる1話完結をモットーとしています!!

シリーズ化したからには頑張って展開を進めます!

そして前話で課題取りにこいって言わせたのになんにも関係なくなってしまったー!!
楽しみにしていた方ごめんなさい!!!


よろしければ、この1組ヒロインちゃんとクラサメ隊長のお二人に最後までお付き合いください!




2011/12/03


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