※脇役平凡受けですが、エロい目、もとい、えらい目にあっているのは勇者です。
現地のことを知る案内人として半ば無理矢理に魔王討伐の勇者パーティーに参加させられた。
たしかに俺の故郷あたりの土地を中心にして魔王が人間界を侵略し始めたが、半魔界化してしまった土地に以前の面影はない。
俺が田舎から学校に通うために王都にやってきて数年後に魔王の人間界への干渉が始まった。
上京してよかったと思う一方で自分の生まれ故郷のことを思うと心苦しい。
そんな中で、異世界から勇者がやってきて魔王を倒してくれると言う。
ものすごい善人もこの世にいるのだと感動していたら、異世界から来ているので常識がない。
悪人じゃないが、文化や風習の違いからくるズレた言動が悲しくなるほど周囲と溝を作っていた。
学生の身分とはいえ、王子殿下の従者の補佐をしていたので、なんとなくの通訳係をしてしまった。
地元の子供が言いたいことが上手く言えずにいたことを思い出してのフォローは、かゆいところに手が届きすぎたらしい。
勇者からは好かれ、年齢が近いこともあり、勇者の付き人あつかいになった。
そして、魔王討伐のための超人たちのパーティーにも案内人の名目で参加することになる。
他人に優しくするものじゃないと心のどこかで思ったが、縁もゆかりもない世界を救おうとする勇者に俺ぐらいは親切にするべきなんだろう。
大人たちは勇者が失敗したらまた別の勇者を召喚すればいいと人間を使い捨てる気満々だ。
酷いと思いながら勇者が自分の置かれた状況を把握していない言動が多すぎて、うんざりもする。庇ってやってるのがバカバカしくなるのだ。
勇者のパーティーメンバーが一人倒れ、二人倒れと減っていく中、勇者はさすがに強かった。
傷一つ負わずに先へ先へと進んでいく。
ちなみに俺も唯一得意としている隠密の魔法によって誰からも攻撃を受けていない。
洞窟の中でも、俺は息を殺してやりすごす。
魔界と繋がるとされている俺の故郷の鍾乳洞。たったひとつの観光資源が、まさかの魔界からの入り口になっていた。
神聖な場所だったが、俺が上京した後に誰も手入れをしなかったのだろうか。魔の気配などありえない清らかな空気をまとう場だったのでショックだ。
「……っ、あ、あ、あぁ、あぁぁぁ」
声を押し殺そうとして失敗している勇者。
植物のつるが勇者に絡みつき、重そうな防具を外して、服の中に侵入していた。
宙づりにされた勇者は何の抵抗も出来ない。植物ではなく海洋生物のような触手が現れたと思ったら、勇者の股間やお尻回りを重点的にこすりだす。服の上からの刺激などあってないようなものかと思ったが、謎の分泌液により部分的に衣服は溶けた。
勇者の股間を愛撫するように無数の触手が伸びていくのが俺にはよく見えた。
下から勇者の破廉恥ショーを呆然と眺めてしまう。
助けなければという気持ちは圧倒的な暴力の前に浮かばない。
質量として俺の勃起時の性器を超えるほどの触手が勇者の中に飲みこまれていく。
足を大きく開いて触手に串刺しにされているような勇者を哀れむべきだが、本人は嬉しそうによだれを流して喘いでいる。
白目をむいて自分から腰をくねらせ始める勇者を前にすると助けなければならないという義務感も芽生えない。
元々、俺は非戦闘員なので、勇者の痴態を見つめる以外にするべきことがない。
短い時間で何度も絶頂を繰り返す勇者は俺のことなど完全に忘れて、触手の与える快楽に夢中になっている。自分から触手を迎え入れるように体勢を変えたりと積極的だ。もしかしなくても、勇者は触手と交わるためにこの世界に来たのだろうか。そう思ってしまうほどに抵抗感が見られない。怖がったり嫌がったりせずに「きもちいい」を連発だ。
触手から何か液体が分泌されているのか勇者の腹が次第に大きく膨れていく。
俺はいつまで見ていないといけないのかと思いつつ、触手と勇者の交わりを見ていたが、ついに状況が動いた。
「あかちゃん、うまれりゅ」
呂律が回らない勇者が力むようなところを見せると触手は勇者を地面におろして退散する。
勇者の尻の穴のしわがなくなる、そんなところをまじまじと見せつけられつつ何かが排泄された。
普通に考えたら触手に植え付けられたものなのかもしれないが、タマゴに見える。
人間に見えていた異世界から来た勇者は俺たちの知る人間とは身体の作りが違っていたのか、触手のせいか、魔界効果か。
とにかくタマゴが出た後のぽっかりと開いたままの勇者のお尻の穴はだいぶ卑猥で視線をそらすしかない。
そんなことをしていたせいか、俺は重要な場面を見逃すことになる。
世界が暗転したのだ。
俺が目をつぶったのではない。
勇者とタマゴから視線をそらした瞬間に世界が暗くなった。
意識を失ったのは何秒もないはずだ。
俺の視線の先で勇者が触手にもう一回とねだって空中に持ち上げられていた。
気が狂っていると思ったが、心臓が痛くてそれどころじゃない。
出産の余韻で恍惚とした勇者と目があった。
「魔王は好きな相手の心臓を食らって伴侶にするんだってさ」
勇者はそう言って宙づりの中、笑った。
魔王討伐と言いながら、魔王はこの世界でまだ確認されていなかった。
魔界化が広がっているので、魔王が人間界にやってきていると予想を立てられていただけで、魔王を確認した人間は居ない。
口元を赤くした子供が「こちらに来るのに手続きが必要だった」と笑う。子供の近くにはタマゴの殻がある。裸の子供はどこかで見たことがある顔をしていた。
「毎日毎日、余を崇める奇特な人間だと思っていたが……まさか、余と契りを交わすために人間界を売るとは」
まるで身に覚えのない話をされる。
勇者の言葉が本当なら目の前の子供は魔王だ。
魔王が人間界に受肉した。
「余と会いたい一心でここまでするとはな。見上げた心意気だ」
褒められているが、勘違いだ。
心臓が痛すぎて反論できない。
「余を受け入れろ。愛していると、ひとこと口にするといい」
思わず「あいしてる」と心にもないことを言うと痛みは消えた。
俺は魔王を受け入れてしまったらしい。
「貴様の心臓は余だ。自身を生かす心臓を嫌うものなど居らぬであろう。受け入れ、敬え。さすれば、共に在り続けよう」
勇者が喘ぎつつ「よかったな。不老不死だぞ」と言い出した。
触手に犯されすぎて頭がおかしくなったんだろう。
俺は現実逃避するように気絶した。
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2018/04/15