・愛していると言っておく(それが平和だから)

※わりと酷い(状況の?)平凡受け



 俺は生徒会長と付き合ってはいないし、好きでもないが愛していると言っておくことにしている。
 そうするとどうなるのかといえば、副会長とエッチができる。
 きっと俺は副会長が好きだ。
 愛していると思えば抱かれるのも幸せだからという錯覚かもしれない。
 錯覚だとしても愛していると思える人がいるのは幸せなことだと思う。
 
 
 
 歪んだ方程式が出来上がったのは俺が小学校の上級生になったころだ。
 みんな身体が大きく立派になっている最中でひとり成長が遅れがちな俺は目立ってしまった。
 見た目も勉強もクラス内で平均点でいつでもその他大勢の内の一人だった俺は発育不良という点で周囲から浮いた。
 悪目立ちしていいことなど何もない。
 
 現在の生徒会長は小学校のころから頭一つ飛びぬけたタイプでクラス内で一目置かれていた。尊敬されているとか人気者という意味でみんなが従っていたわけじゃない。
 一言でいえばヤバかった。
 悪い意味でのヤバさだ。
 みんな彼と深く関わり合いになりたくなかったのだ。
 恐れから誰もが彼の言いなりだった。
 
 俺を裸にしてクラスメイトに全身を見せるだけでは飽き足らず実験と称して尻の穴にいろんなものを入れられた。
 クラスメイトの目があるところで進む開発はもちろん上手くいくわけない。そのうち誰もが飽きて俺が裸でも笑うこともなく受け入れる。日常になると恥ずかしいことも恥ずかしくないこともよくわからなくなる。
 
 何かの弾みに勃起して彼から「俺のことが好きなのか」と聞かれて俺は否定したかったが、否定すれば逆に肯定させようとすると思って頷いた。好きだと言ってみたのだ。そうしたら「気持ち悪い」と想定内の返事が来た。別に構わない。
 
 彼のことは好きではない。
 裸にされて身体をいじりまわされている段階で俺はすでに気持ち悪い。
 気持ち悪いならそのうち触るのも嫌がるだろうと思ったが、変なスイッチが入った。
 
 
 彼は自分の周りにいた現在の生徒会役員たちに俺を犯すように指示した。
 いじめのバリエーションのひとつでしかないにしても最悪だ。
 
 一番最悪であるのは俺の意地と彼のプライドかもしれない。
 
 彼を好きであるという俺は彼にとって最高のオモチャになった。
 それは彼が高校の生徒会長になった今でも続いている悪しき風習だ。
 俺は彼を好きだという嘘をそのままにしている。
 好ましいと思うところが一欠けらもない腐った人間だが、意地になってしまっていた。
 
 彼がしている行動というのが俺が彼を嫌いになったという言葉を待っている気配がするのが腹立たしい。
 別段、彼を好きではなくても彼に「やっぱりお前はそんなもんだろ」と低評価を押しつけられるのは納得がいかない。
 すでに俺は彼から離れたところで見た目通りな平凡な生活を送れない。
 ゲイではないのに後ろをいじらなければ勃起しない身体になってしまった。
 一時期、病気なのかと疑って眠れぬ夜を過ごしたものだ。
 
 彼に前立腺を刺激されて不能でないことを証明してもらえたが、後ろをいじらないと勃起しないような男は今後女性とは付き合えないだろう。
 
 別にもういい。
 彼のことを好きだからという建前が出来ているので自分の体のことを肯定的に口先では言える。
 不思議なもので言葉にして発していると気持ちは軽くなっていく。
 
 生徒会長である彼の指示によって今の今までずっと生徒会役員たちに抱かれている俺だが、副会長を好きだということにしている。脳内設定というやつだ。理由としては一番副会長が嫌な奴だからだ。嫌な奴を好きだと思っていると不思議と抱かれる際の嫌悪感がない。
 
 長年の付き合いだからか副会長も二人っきりの時はそこまで横柄な態度でも嫌味でもない。
 普通に使用過多になっている俺の尻穴の心配をしてくれる。
 会長に逆らう気がないヘタレ野郎だが、好きだと思っていると触れあうのが幸せに思える。
 
 この幸せな錯覚空間も期間限定のものであっさりと壊れてしまう歪んだものだった。
 
 転入してきた生徒が俺の同室者になった。
 俺の部屋は別名生徒会のヤリ部屋として二部屋を俺の個人部屋、もう一つをセックス専用部屋としていた。
 その部屋で俺が誰かとスルこともあるし、生徒会の誰かが親衛隊を連れ込んでスルこともある。
 
 転入生がやってきたことで実質ヤリ部屋の廃止だ。
 俺はそう思っていた。だが、会計は違っていた。
 転入生が来ても大丈夫なように責任を持って室内の環境を新品に感じられるようにピカピカにしたというのに襲い掛かってくる会計。飢えたケモノは綺麗に清掃された部屋を精液でカピカピにする気だった。
 
 何かの手違いなのか早めの日取りでやってきた転入生は俺が襲われて逃げようとしている姿を見て会計を撃退した。
 レイプ犯とその被害者に見えたらしい。間違っていないが長年その状態が続いていたので瞬間的に俺は反応できなかった。そんな俺の態度に合意なのかと聞かれたが、合意であったためしがないので否定した。そのため少しややこしいことになったが、それはまた別の話だ。
 
 問題は転入生によって学園の空気が変化して俺に対しての風向きが変わったことだ。
 俺が好きで生徒会役員たちのオモチャになっていると思っていた生徒たちの意識が転入生と行動を共にすると何故か気持ちが入れ替わりだす。俺自身を見る人間が増えたせいか、生徒会役員たちに好き勝手されているのはおかしいと感じてくれる友人が出来た。
 
 転入生には感謝しかない。
 
 ある意味、生徒会長である彼からの卒業のような俺の状況は想像通りに彼のプライドを傷つけた。
 俺のことを好きだったくせに転入生に尻尾を振っている駄犬というのが彼の意見。
 変わり身が早いとは俺自身も思うが転入生は熱量のある奴で周囲を動かす力が強い。
 俺は状況を考えて会長に別れを告げることを決めた。
 元々好きな人じゃない。
 ただ、面倒になると思ったのと見下げられるのが癪に触っただけだ。
 低く見られても仕方がないと思っても実際に侮蔑にさらされて平気なはずがない。
 
 いじめ方で言えば副会長が一番ひどかったが、その分だけ一番甘かった気もする。
 
 なので、転入生の存在で失われたヤリ部屋だが、副会長とだけは俺とエッチを継続している。
 他は部屋がないことを言い訳にかわしていたが副会長は自分の部屋に連れ込むという大技に出た。
 生徒会役員として一人部屋を持ち、広めのベッドと風呂場を持つ副会長は以前から俺を自分の部屋に連れ込んでいた。
 
 転入生が同室になってしばらくしてから俺は会長に別れを告げた。
 その場には副会長もいたので今後はなにも手出しはしてこないものだと思っていたが、なぜか殴りつけられ会長と副会長両方に犯された。
 俺は自分を哀れむ間もなく失神する。
 
 目覚めた時には会長は会長ではなくなっていた。
 リコールが成立したようで転入生が会長と化していた。
 
 スピーディーな交代劇の裏にあるのは副会長だ。
 副会長が会長が如何に仕事をしないクズかを記録につけていたという。
 どうかしていると思っていると会長になった転入生に自分のことが好きかと聞かれた。
 転入生に対して恋愛感情を含まない好意はあったので頷くと何故かいたらしい副会長に殴られて転入生の前で犯された。
 
 友情めいたものを持っていた相手に見せたくない姿だが転入生はなぜか自分のことが好きなら副会長とエッチするように言い出した。
 
 転入生は副会長に一目ぼれをしてフラれたらしい。
 好きな相手を誰かに盗られるのは嫌なので盗られる心配のない俺ならいいという。
 平凡は浮気相手で性欲処理に使うだけで本命にはならないので安心ということだろうか。
 
 吐き気がする気持ちがあったが、副会長に心の中で言うならともかく口に出して好きだというのは気持ちが悪かった。
 転入生を好きだという方がまだ気が楽なので俺は意地を張って現状維持を選択してしまう。
 
 
 
 俺は生徒会長になった転入生と付き合ってはいないし、好きでもないが愛していると言っておくことにした。
 そうするとどうなるのかといえば、副会長とエッチができる。
 
 俺の身体は副会長の名前の入れ墨を入れられたり、ボディピアスをよくわからないタイミングでつけられたりしてすでに俺のものではない。
 副会長にカスタマイズされている副会長のものなのだ。
 俺はそういったことを受け入れてしまっている。
 いくらでも逃げ出せるタイミングがあったのに逃げなかった。
 
 それを踏まえて考えるときっと俺は副会長が好きだ。

 愛していると思えば抱かれるのも好き勝手されるのも幸せだからという錯覚かもしれない。
 錯覚だとしても愛していると思える人がいるのは幸せなことだと思う。
 
 
 
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2017/10/23
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