この手をのばしたら(夏油)



 熱い。身体が熱を帯びて仕方がない。


 それは自分の落ち度が招いた事故のようなものだった。任務で呪霊から受けた傷から呪いを受け、どうやらその呪いは女性を発情させるものだったらしい。祓ったのに呪いの影響は消えず寝られない私は、彼ならなんとかしてくれるのではないかと宿泊所にただひとり残っていた傑の部屋の前に立っていた。



「どうした」
「あの、その...」
「なんとなくの事情はわかったよ。とりあえず部屋に入って」



 彼の後について部屋に入れば「いったいどんな変態呪霊に狙われたんだい」とふっと鼻で笑う傑に、熱を帯びる身体をぎゅと抱きしめて「弱くてごめん」と自分に向けて言葉を吐く。「少し触るよ」と傑は私の耳たぶ、首筋、鎖骨に触れた。耐えきれず甘い吐息を漏らせば「君は感じやすいタイプなのかな」と目を細めてくつくつと笑う。



「こっちは冗談言っている場合じゃないの」
「そうだね、すまない」
「呪い、なんとかなる?」
「元凶は既に祓われているようだし、これ以上はどうしようもないな」
「そっか。傑がどうしようもないなら仕方ない、戻るよ」
「辛いのかい」
「...なんか、自分の身体じゃないみたいで、寝れなくて」



 こんなに自分の身体が疼くのは初めてだった。自分自身で慰めようにも経験がなく、ただひたすら耐えるしかない。


 私が視線を泳がせていると、ふいに手首を掴まれて顔を上げる。とん、と肩を押されベッドに背中から倒れ込んだ。何が起こっているのか分からず瞬きを繰り返す私を見下ろして、ふっと笑えば、傑は私の足を開かせて下着に手を差し入れ、熱を帯びたそこに骨張った指を這わせる。




「ちょ、すぐ、る」
「濡れているね」
「っ、あ、」
「君に貸しをつくれる機会なんてそうないからね。有り難く頂戴するよ」





 傑は濡れた指をぺろりと舐めとって目を細めれば、挿れるよ、と耳元で囁く。身体の内側から突き上げられる感覚に言葉が詰まった。ぐ、と奥に挿入されたそれに息ができないまま傑の腕を掴む。「大丈夫かい」と傑は私の額に唇を落とし、まるで愛おしむかのように指先で頬を撫でた。




「悟がいなくて残念だったね」
「なん、で、五条?」
「君は悟のことが好きなんだとばかり」
「っ、あっ、」




 まるで奥を抉られるように深く突き上げられ、私のナカで傑のものが質量を増していくのがわかる。足の先まで痙攣させながら達した私に、傑は「好きでもない男で達してしまったのかい」と反応をまるで伺うかのようにゆるゆると動きを止めた。傑と寝たことを五条が知ったらどう思うだろう。きっと軽蔑するだろうな。そもそも、こんな呪いを受けてしまった私の実力不足を責めるだろうが。




「ほら、いま目の前にいるのは私だよ」




 傑は私の片足を持ち上げて、より深くねじ込むかのように挿入をした。肌のぶつかる音が部屋に響き、傑は苦しそうに眉根を寄せて湿った吐息を漏らす。私は再び迫り上げてくる快感に溺れて、たったふたり、夜に溶けていった。









(2022.11.11)
君を繋ぐには
たった2文字で良かったのに
たとえば僕がこの手をのばしたら

この殻を破ってもに続きます(お相手:五条)




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