黒子くんとメールする話 1




学校に行く途中で、チカチカと光る携帯に気付き、携帯を開いた。
新着Eメール一件。

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おはよう!
今日は残暑が一番
厳しい日らしいです。

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名前さん・・・ちゃんからだ。
この年で、ちゃん呼びはやっぱり恥ずかしい。

(ニュースでも、同じような事言ってましたね。)

今日はいつもより、水分も多めに持って来てある。
・・・彼女は大丈夫だろうか。
真っ白で、体力がない彼女には今日みたいな日はキツイだろう。





もぐもぐ、と朝ご飯のパンを食べながら、朝のニュースに目を通していたら、
学校で携帯が鳴らないよう起きたらすぐマナーモードにしてある携帯がチカチカと水色の光が光った。

(黒子くんからだ。)

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おはようござます。
ニュースで言ってましたよね。
お互い熱中症に気をつけましょうね。

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相変わらず、丁寧なメールだ。
黒子くんは今日も部活があるだろうなぁ。
九月とは言え、残暑の厳しい中の、体育館での練習はキツそうだ。

そんなことを思いながら、返信を打っていると

「ご飯中に携帯なんて、珍しいわね。」
「え、あー・・・すぐ、終わるよ。」
「ふふ、大丈夫よ。父さんはそいうの、少しうるさいけど。
母さんは気にしないわよ。ただ、いつもより嬉しそうな顔してるなぁって。」
「黒子くんって覚えてる?」
「黒子くん?・・・ん〜。」
「小学校が同じだった。テツヤくん。」
「あ〜!あの、薄い子ね!」
「薄いって・・・その子と、この前久しぶりに会って、メアド交換したんだ。」
「へぇー・・・どうだった?かっこよくなってた?」
「え?あ、うん。すごく男の子だなぁって感じだったよ。」
「そう。会ってみたいわね。」
「でも、線の細い感じは変ってないよ。」
「華奢な子だったものね。」





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そうだね!
テツヤくんは、特に
部活やってるから
無理しちゃダメだよ。

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(・・・無理ですか。
気を付けては・・・居るんですけど。)

信号待ちで、開いた内容のメールにそんなことを思いつつ、返信を打った。

ふと見上げた空は、眩しい太陽があって、
ああ、今日はとても暑い日になりそうだ。




「いってきまーす。」
「はい、いってらしゃい。」

ローファーを履いて、鞄も持って、いざ学校へ。
前より、人に対する姿勢に前向きになった所為か、
学校に行くのも苦痛だと思う事が少なくなってきた。

(元々、そこまで苦痛があったわけじゃないけど。)

時間を確認しようと、携帯を開くと新着Eメール一件。

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はい、気を付けます。

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(ふふ、シンプルな返事だな。)

返信はもういいだろう。
パチンと携帯を閉じて、玄関を出た。

外に出ると、サンサンと降り注ぐ太陽の光に、
私も気をつけよう、と思った。
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