部活が終わって、今日もバニラシェイクを飲みに行こうとマジバへと向う途中で、
とぼとぼと疲れたように、肩を下げながら、歩く女の子に目が止まった。
暗い所為で、いつもより髪の色が濃く見える。
でも、確信があった。
呼びかけると、ゆっくり振り返った。
僕に気付くと、嬉しそうに笑った。
でも、やっぱり、疲れた顔をしていた。
彼女と話していて、バニラシェイクを飲みに行くと伝えると、
何かを思いついたような顔をして、私も行くと言うので、一緒に行くことになった。
(何を考えてるんだろうか。・・・この前のアイスのお礼かもしれない。
苗字さんはよく、ギブアンドテイクが大切だ!と小学生の頃よく言っていた。)
じーっと、観察される様に見つめられて、つい抱きしめたいのかと言ってしまった。
これも、小学生の頃にあったことで。
*
じーっと、背中に視線が刺さる。
「あと、少しですからね。」
「うん!」
図書委員の仕事で、本を戻していると、彼女はよく本を抱えながら後についてきた。
僕の仕事を手伝いながら、終わるのを待っているのだ。
本を持って、本棚に戻していると、いつものように抱きつかれそうになって、
避けると、えっ・・・と固まってしまった。
本を持っているから、危ないと説明すると、「じゃあ、私も手伝う!」と言ってきた。
でも、僕より背が低い彼女が本を戻せる範囲は僕より少ない。
その結果、彼女の方が仕事量が少ないのだ。
彼女は本棚に足をかけて、戻そうとしたけど、危ないので、止めた。
(けっこう大雑把な所あるんだよな・・・。)
彼女は自分の分が終わると、僕の分を抱えて、サポートをする
僕が当番の日だと、このスタイルが定番になっていった。
「これで、終わりだね!」
「そうですね。」
ラスト一冊を本棚に戻すと、後ろから抱きつかれた。
勢いはなく、寄りかかるように。
「へっへへ〜。テツヤくん、お疲れ様。」
「はい、苗字さんもお疲れ様です。」
ぐりぐりと肩に押し付けてくる頭を撫でてあげると、満足そうに目を細めた。
するすると指通りのよい髪は、撫でているこっちも気分が良い。
「テツヤくんに抱きつくと、落ち着く・・・?っていうのかな。安心するから好き。」
「そうですか。」
「テツヤくん、お母さんみたい。」
「え、お母さんですか・・・。」
(それは、あんまり嬉しくない・・・かも。)
その言葉がどこか残念で、でも安心すると言われたのは嬉しかった。
prev back next