いわゆる夜の営み
(そろそろ寝るか…。)

ベットに座りながらそう思っていると、彼女が後ろから抱きついて来た。

「仁亮さん・・・寝るんですか?」
「名前は寝ないのか?」

わざと耳元で囁く声はどこか色っぽく聞こえる。

「・・・明日はお休みですよね?」
「そりゃあ、お盆だからな。しばらくは休みだろう。」

彼女は確認する中に期待が含んである声で、俺に問う。
その問いに普段通りに、返すと、

「・・・もう、・・・おやすみなさい。」

不満そうな顔をした彼女は、どこか不貞腐れたようにベットに潜りこんだ。

「名前・・・?」
「・・・何ですか。」
「どうした?何かあったか?」

頭まで布団を被っている彼女の声は、籠っていた。

「・・・仁亮さんはずるいです。それは、さすがにずるいです。」

布団の下から聞こえる声は、完全に拗ねていた。

「名前。」
「何ですか。」
「言葉にしないと、分からないコトもある。ましてや、俺とお前は世代が違うだろ?
お前の考えることは俺には分からない。」

あやすように、布団の上から頭だと思われる部分を撫でる。

「・・・分かりました。」

彼女はそう言うと、被っていた布団から顔を出して、起き上った。

「仁亮さん・・・」
「どうした?」

布団を被っていた所為で、少しぼさぼさになった髪を手で整えながら、彼女は口を小さく動かす。

「あ、あの・・・」

彼女は落ち着きがないように、もぞもぞと身体を動かす。

「ああ。」
「・・・その、・・・今日、すごく、したいんです。」
「・・・なにを?」
「えっ!?」

聞き返せば、彼女は唖然とする。
そして、顔を歪めると、・・・目をぎゅうと瞑って、ぽろぽろと泣き始めた。

「あ、」
「・・・ま、仁亮さん、・・・ひ、ひどいっ。」
「・・・っふ、悪かった。泣くな。」
「笑い・・・な、がら、・・・謝れても・・・ゆ、ゆるしませんっ!」

彼女の頭を胸につけて、頭を撫でれば「もう、仁亮さんのそいうところ〜」とブツブツ文句を言いながらも、すり寄って来た。
その行動に、ははと小さく笑うと、「まだ笑ってるしっ」と、いつもより砕けた口調で俺を見上げる。

「名前。」
「…何ですか。」
「…お前は本当に可愛らしいな。」
「え、…あ、ありがとうございます。」

照れたように、もごもごさせる口に唇を寄せる。
彼女は驚いて、目を見開く。

(…何回もしているのに、初々しい反応は変らんな。)

そのまま髪を解くように、撫でて、角度を重ねていけば、それに応えるように俺の首に腕を回す。
ゆっくりと彼女をベットへ倒していく。

パサっと乾いた音がして、彼女の黒い綺麗な髪が白いシーツの上に広がる。

「…仁亮さん。」

濡れた目で俺を見つめて、はやくと呟いて、俺の頭を胸に押し付けるように抱く。

「随分積極的だな。」

その手を頭から外して、首元から下へ口を寄せていく。

「だ、だって…分かってくる癖に、焦らすんだもん。」

唇と尖らせて、不満を漏らす彼女が可愛いく思え、その唇に軽くキスをする。

「明日は休みだ。時間をかけて、やるものいいだろう。」
「…そうだけど。」
「うん?まだ何かあるのか?」

パジャマのボタンを外しながら見上げると、彼女はまだ唇を尖らせていた。

「はやく、仁亮さんに触って欲しかったの。」

その言葉に年甲斐もなく、心臓が跳ねて、彼女の肌蹴た胸元に顔を埋めた。

「仁亮さん、どうしたの?」
「…いや、何でもない。」
「…そう?…あ、ふふ。」

彼女が急にご機嫌のように笑いだす。
俺の髪を優しく撫で、そのまま耳元へ手が到達する。

「仁亮さん、耳真っ赤。可愛い。」

耳をやわやわと触り、クスクスと彼女は笑う。
俺は少し悔しく思い、彼女の胸元をひと舐めする。

「ひゃあっ…ま、仁亮さん、いきなりするのは嫌ですっ!」
「…男に可愛い何か言うからだ。」
「褒めてるのに。」
「男からしたら、褒め言葉にならないんだよ。」

フロントホックを外し、顔を抱いた彼女の膨らみに手を添える。

「もうっ…仁亮さん、仁亮さん。」
「ん、なに?」
「今夜は、いっぱい愛して下さいね。」

彼女は俺の頬に両手を添え、ちゅうと可愛らしいリップ音を立てて微笑んだ。

「…言われるまでもないな。」

そう言って、俺は手を動かした。

彼女の甘く妖艶な声が夜の部屋に響いた。
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