02−起動(おこ)しましょう。

  ロイドは、ルルーシュを愛していた。
  そして、ルルーシュもその想いに答えてくれた。
  2人は、恋人同士、という関係だった ――――― あの、『ゼロ・レクイエム』が完了する前までは。





02−起動(おこ)しましょう。






「ルルーシュ、様……」


  ロイドは、ルルーシュの死後、ルルーシュそっくりなサイバロイドを制作した。
  “ルルーシュ”を創るのだから、一切の妥協はせず、全てを完璧に。
  そして、完成したのはつい先日のこと。

  後は、起動(おこ)すだけ。

  ……それが、ロイドに激しい葛藤を生んだ。


――― これは、ルルーシュ様。でも、ルルーシュ様じゃない。

――― 姿形は勿論、声もルルーシュ様と同じ。でも、ルルーシュ様じゃない。

――― 思考も知識も嗜好も、ついでにドジな所も再現出来ていると思う。でも、ルルーシュ様じゃない。


  最後には、『コレは“ルルーシュ様”じゃない』に行き着いてしまうのだ。
  そして、ロイドは気づき、後悔する。


  どれだけルルーシュそっくりに創ったとしても、それはルルーシュではないのだ、と。

  自分は、“ルルーシュ”という存在の、高潔なる魂を愛していたのだ、と。


  ロイドの口元には、自嘲の笑みが浮かぶ。

――― 自分は、なんて愚かだったのだろう、と……。





  一晩二晩とH−CB01“お人形さん(ドール)”を側で見つめ続け、ロイドは決めた。

  『起動させず、破棄しよう』と……。


  その為には、セシルを呼ばなくてはならない。
  折角彼女にも手伝ってもらったのに、申し訳ないとも思う。

  よっこらせっと立ち上がると、身体の節々がバキバキ音をたてる。


「あ〜…微動だにしなかったもんねぇ…」


  苦笑しながら動こうとして、ふら付いてしまう。
  よく考えなくても、動いていなければ食事すらしていないのだ。
  ただでさえ徹夜の連続で、睡眠すら不足していたりもする。

  そして、事故は起きた ―――――。


ポチッ


「…あ。」
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