03−呼びましょう。

  それは、事故と言える出来事だった。
  数日(どころではない日数)、寝食せずにいたロイドが、ふらついてしまった事。
  その手にはH−CB01“お人形さん(ドール)”の起動スイッチがあった事。
  そして、ふらついた拍子にそのボタンを押してしまったこと。

  全ては偶然と偶然が重なり、奇跡が起こる ―――――。





03−呼びましょう。






「……………」


  ロイドの目の前で、H−CB01“お人形さん(ドール)”の目が開かれていく。
  ルルーシュと同じアメジストの瞳が、ぼんやりと辺りを映す。


「“お人形さん(ドール)”……」


  ロイドにとって、“お人形さん(ドール)”はルルーシュであって“ルルーシュ”ではない者。
  姿形がそっくりなだけで、中身はただの人造人間なのに…。

――― なのに、何故、それが“ルルーシュ”に見えるのだろう……。


「…ロイド……?」


  H−CB01“お人形さん(ドール)”…いや、“ルルーシュ”が、ロイドをその目に映し、微笑みを浮かべる。

  その微笑みは、あまりにも儚くて……ルルーシュの遺体が浮かべていた微笑みを彷彿させた。


「る、ルルーシュ、様……」


  知らず知らずに涙が浮かんだ。

  コレは“ルルーシュ”とは違うと、頭では理解している筈なのに……心が、この存在は“ルルーシュ”だと叫ぶ。
  身体が勝手に動き(でも、それは心が望んだから)、ルルーシュを抱き締める。
  自然と涙が浮かび、頬を伝う。


「ルルーシュ様……!!」


  ルルーシュがロイドを抱き締め返してくれたのに気づき、更に抱き締める力が強まった。





  ルルーシュは、己を抱き締めたまま、静かに涙を流すロイドを抱き締めたまま、苦笑を浮かべる。
  そして、見える範囲で辺りを見回し、この場所がロイドの研究室だと気付く。

  ロイドが抱き締めてくれる感触に、戻ってきたのだ、と。

  ロイドの元へ還って来たのだとまた笑みを浮かべた ―――――。



...End




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