03 神との再会

  C.C.は、世界中を旅していた。
  自分の共犯者であるルルーシュが人知れず導いた、“優しい世界”を。
  その旅先でCの世界へと通じる扉を偶然見つけ、気まぐれを起こしてCの世界へと入ってみた。

――― そして。


「……ルルーシュ?」

「あぁ。…久しぶりだな」


  神であるルルーシュと、久々の再会をした。





神との再会






  神であるルルーシュは、皇帝時の格好をしていた。
  …実は、あの皇帝服はルルーシュ自らデザインして、無意識に神の時の格好を再現したものだったのだが。

  Cの世界で再会しても、生前(人間の時)と変わらないC.C.の態度に、彼は苦笑した。


「…まだ、思い出さないみたいだな」

「? 何をだ?」


  訝しむC.C.に、ルルーシュは“力”を振るう。


「さぁ、   、思い出せ。…私は誰だ?」

「!!!?? ……あ、…ご主人様…ですか…?」

「…………正直に言うと複雑だな。仕方がない。“ルルーシュ”の時と同じように対してくれないか? …なにやら、違和感が…」

「…ご主人様が思い出させたクセに…。…まぁいい、それこそ今更だ。……なぁ、ルルーシュ?」

「…あぁ。そうだな…」


  ルルーシュは、相変わらず不遜な態度な少女に苦笑する。
  だが、ずっとこんな態度だった少女に、今更殊勝な態度 ―― 一時期、記憶喪失だったときはまた違ったが、あれはあれで戸惑っていたので保留にしておく ―― を取られても…と思うのだから、仕方がない。


「それにしても…私が訪れても、現れないという選択肢もあっただろう? どうして私に姿を見せた?」

「…まぁな。最初にお前と会ったときは、お前が全てに対して疑心暗鬼になっていたからだったが…。
  今回は、お前との約束があったからな」

「…約束?」

「あぁ。約束しただろう? …ずっと、側にいる、と……」










  それからまた時が経ち。
  一人旅をするC.C.の姿があった。

  藁の荷車に乗せてもらい、新鮮な藁の上に置いたチーズ君を枕に横たわりながら、C.C.は語りかける。


「…『“ギアス”と言う名の王の力は人を孤独にする』…クス、少しだけ違っていたか。…なぁ、ルルーシュ?」


  周りには、荷車の御者しかいない。
  …だが、C.C.のすぐ側に光が集い、それは美しくも麗しい少年の姿をとった。
  艶やかな黒髪、憂いを秘めながらも鮮やかなアメジストの瞳、透き通るような白皙の美貌の少年の姿に。
  彼は、荷車の端に腰掛けて長閑な風景を、見惚れるような穏やかな微笑みを浮かべて眺めながら、C.C.の言葉に応えた。


『…そうだな。私…いや、“俺”には最後まで、自分に心から従ってくれる存在や、未来を託せる友人がいたからな』


  慈愛に満ちた眼差しのその先に、僅かに嫉妬を抱きつつも、こうして会話出来るようになってから抱いていた疑問を投げかける。


「…お前は、私以外の人間の前に姿を現さないのか?」

『どうするかな…はっきり言って今のこの状態の私は、ただの投影で触れ合うことも出来ない上に、あんな別れ方(=死に方)したしな…』

「世界中に姿を見せるなら兎も角、一部の人間には泣いて喜ばれそうだがな」


  からかうように言うC.C.。
  こうして姿を見せるのは、今の所自分にだけだが、他の奴にも逢いたいだろうなと思う。
  …己の知らぬ間に、会いに行くことも出来るだろうし…と。
  そう考えて、ズキリと痛む胸にC.C.は僅かに顔をしかめたが、相手から返って来た言葉に、喜びから顔が綻びそうになったのを、無表情で誤魔化す。


『…お前が判断して、私を呼べばいいさ。私はいつでもお前を…この世界を見守っているのだから……』


  くすり、と笑ってC.C.に視線を向けるルルーシュに、C.C.は「そうか…」とだけ返した ―――――。



...End



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