04 私を呼ぶ愛しい声が聞こえた
「あ、きら…」
「久しぶりだね。10年ぶりくらい?」
暗闇の中、徐々に露になっていく大きな姿。
身長は私よりずっと高くて、
整えられた髪はあの頃と同じようにツンツンしている。
「…変わってないね」
「それって良い意味?悪い意味?」
「良い意味…かな。雑誌で見る彰は、あの頃よりもずっとすごい人になっていたと思っていたから」
「週刊バスケットボールとか?」
「うん。月間マガジンとか、スポーツ速報とか」
変わってない。
10年前の彼がそのまま大人びた姿で目の前にいて。
「でもやっぱり、10年も経ってるから大人っぽくなったね」
「それも良い意味?老けたって意味じゃないよね?」
答えがわかっているくせに、意地悪く尋ねる彼の顔は―ーやっぱり大人っぽくなっていて、
「違うよ。かっこよくなったなって」
私の心臓をドキドキと鳴らすくらい、
色っぽく、大人っぽい、男の人に変わっているなって意味。
「名前さんも相変わらず綺麗だね」
「何言ってんのよ」
「本当だよ。あの頃よりももっと、綺麗になった」
「お世辞言ってもーー」
「ーーお世辞じゃないよ。10年前も今も、名前さんが一番綺麗」
彼は、掴んでいた手を離した代わりに、その右手でそっと私の顔にかかった前髪を耳にかけた。
その仕草一つ、
たった数センチ縮まった距離で、
10年前の彼との思い出がフラッシュバックした――
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